気迫みなぎる、柏レイソルの今季初勝利だった。

 前節終了時点でまだ勝利がなく、4敗2分けの勝ち点2。泥沼の最下位(18位)に沈んでいた柏が、ようやく初めての勝ち点3を手にしたのは、J1第7節。ホームに鹿島アントラーズを迎えての一戦である。

 立ち上がりから鹿島のハイプレスに苦しみ、自陣に押し込まれる時間が続いた柏だったが、徐々にパスをつなげるようになった前半32分、FW細谷真大のゴールで先制。その後は、GK松本健太をはじめとする守備陣だけでなく、前線も含めたチーム全員が集中力をきらすことなく、鹿島の攻撃を防ぎ続け、虎の子の1点を守りきった。

 昨年8月(J1第24節京都サンガ戦)以来となる勝利に、チームを指揮するネルシーニョ監督も、選手への賛辞を惜しまなかった。

「ピッチに立った選手たちが最後までハードワークしてくれて、何としてでも勝たなければいけないというところで、すばらしい結果を残してくれた」

 最後は気持ち――。言い尽くされた言葉かもしれないが、その重要性を改めて思い起こさせるような、チーム全体の執念が感じられる勝利だったことは間違いない。

 なかでも、出色の働きが目についたのは、ボランチのMF戸嶋祥郎だ。


今季初勝利を飾った柏レイソル。なかでも、際立った活躍を見せた戸嶋祥郎

 チームトップの走行距離12km超を記録した運動量は言うまでもないが、それ以上に際立っていたのは、ボールを持った時の積極的な姿勢。中盤の底に位置する戸嶋が、常に前方向を意識したプレーを選択していたことが、チーム全体を相手ゴール方向へと向かわせた。

「選手が今日の試合の重要性を感じ、結果を残さなければいけないと、非常に試合の入りが硬かった」

 試合後、ネルシーニョ監督がそう振り返っていたように、立ち上がりの柏は慎重にプレーしようとするあまり、縦にボールを入れられる場面でも横パスやバックパスに逃げ、挙句にミスが起こるなど、効果的な攻撃につなげられないケースが目についた。

 だが、そんな悪い流れを変えたのが、小柄な背番号28だった。

 自陣深くまで押し込まれた場面でも、セカンドボールを拾った戸嶋は、簡単にクリアで逃げることなくボールをキープして時間を作り、細谷の動き出しを待ってロングボールを送る。また、中盤でパスを受けた時には、自ら前方へとボールを持ち出し、敵陣へと進入していく。そんなシーンが少なくなかった。

 止まって次の受け手を探せば、相手のプレスバックの餌食になることもあっただろう。だが、戸嶋は決して足を止めず、ボールを運ぶことで相手のプレッシャーをかわし、次の選択肢を探っていた。

 必ずしも攻撃がスムーズに進んでいなかった柏にあって、このちょっとしたプレーが大きな意味を持っていた。

 細谷の決勝点にしても、鹿島のクリアを戸嶋が拾ったところから、わずか2本のパスでゴールが完結。戸嶋のプレー選択が、いかに有効だったかの証明である。

 こういう気の利いた選手がいるチームは強い――。個人的に選ばせてもらうなら、この試合のマン・オブ・ザ・マッチは、文句なしで戸嶋だ。

 そんなダイナモの活躍もあって、ようやく手にした今季初勝利。順位もひとつ上がり、最下位脱出に成功した。

 とはいえ、まだ1勝しただけの柏を取り巻く状況は、依然として厳しい。

 思えば、昨季の柏はスタートダッシュに成功しながら、時間の経過とともに勢いを失っていった。前述したようにJ1第24節を最後に勝利がなく、シーズンのラスト10試合は5敗5分け。7位という最終順位にはそぐわない、あまりに寂しい幕引きだった。

 その間、戦い方も試行錯誤の繰り返し。シーズン序盤に威力を発揮したハイプレスは影を潜め、引いて守ってカウンターを狙うような戦い方も目についた。

 だからこそ、今季は新たな挑戦に着手したはずだった。

 MF山田康太、MF仙頭啓矢、MF高嶺朋樹、DF片山瑛一、DF立田悠悟ら、いわゆる"ボールを動かせる"選手が移籍加入。そこでは、相手ありきの受け身のサッカーではなく、自分たちで主導権を握ったサッカーが展開されるのではないかと期待された。

 事実、4−3−3で挑んだ開幕戦(対ガンバ大阪)の先発メンバーは、11人のうち5人が新戦力。2−2の引き分けに終わったものの、新生レイソルの誕生を予感させる試合は、決して悪い内容ではなかった。

 ところが、開幕から2戦連続で引き分けると、続く第3節からは4連敗。しかも、そのうちの2試合で3失点の大敗を喫したとあって、方向転換を余儀なくされたというのが現状だろう。

 鹿島戦で見せた4−4−2は、現実的、かつオーソドックスなもの。攻撃は2トップの個人能力に頼りつつ、まずは守備のバランスを崩さないことを優先させた戦いだった。1点を守りきっての今季初勝利は、その判断が功を奏したとは言えるだろう。

 しかしながら、これでは結局、昨季の繰り返しになりかねない。

 若手の台頭があり、将来への収穫があった昨季は、その一方で、戦術的にはジリ貧状態。長期的強化という視点に立った時、このままではいけないと判断し、舵をきったのが今季ではなかったか。

 だとすれば、応急処置で手にした1勝を喜んでばかりもいられない。

 見ている者にも、絶対に勝ちたいという気持ちが伝わってくる試合は見応えがあった。そこで手にした今季初勝利が、称賛に値するものだったことは間違いない。

 だがしかし、その本当の価値を判断するのは、もう少し先まで待つ必要がありそうだ。