ドラッグストアの食品、なぜ激安?

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 ドラッグストアの中には、菓子やカップ麺などの食品も販売している店もあり、コンビニやスーパーよりも安価なことが多いです。物価高の現在、少しでも安く菓子やカップ麺を買うために、あえてドラッグストアに行く人もいるのではないでしょうか。ドラッグストアの菓子やカップ麺が、コンビニやスーパーよりも安い理由を、経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

食品は来店増につながる

Q.ドラッグストアは医薬品や化粧品をメインに販売するお店です。なぜ、食品も販売しているのでしょうか。

大庭さん「医薬品や化粧品は、消費者が頻繁に購入するものではありません。そのため、ドラッグストアの売り場で、医薬品や化粧品だけしか扱わなかった場合、消費者の来店頻度が低くなるので、購入頻度が高い食品などを扱い、来店する機会を増やしているのです。

また、消費者の来店頻度が高いコンビニやスーパーが、医薬品や化粧品を取り扱った場合、日用品と一緒に“ついで買い”され、ドラッグストアの販売機会の損失も生じます。そのため、ドラッグストアも食品を中心とした日用品を取り扱い、消費者の来店頻度を高めることで、トータルでの売り上げの向上を図っているのです。

ちなみに、経済産業省による全国のドラッグストアを対象とした調査(2021年商業動態統計)では、食品の売り上げが全体の30.6%を占めるという結果が出ています」

Q.菓子やカップ麺などの食品は、コンビニやスーパーよりも安価なことが多いです。なぜ、安く売ることができるのでしょうか。

大庭さん「ドラッグストアのメイン商材である医薬品や化粧品は、利益率が高い商品です。医薬品は、販売に対する規制が多いことで新規参入しづらく、価格競争が発生しないため、高価格(定価)で販売することができ、高利益率になりやすいです。化粧品も、ブランド力が強く、値崩れしないため、同様に高利益率が確保できます。

そのため、ドラッグストアは食品や日用品の値段を下げて集客し、利益率の高い医薬品や化粧品を“ついで買い”してもらうことで利益を得ているのです。多店舗展開を行っているドラッグストアは、食品や日用品を大量に仕入れることで、仕入単価を下げることができ、そのことも安く売れる理由の一つです」

Q.酒類を販売しているドラッグストアもあります。主に医薬品を取り扱う店で、飲み過ぎると体に悪い酒類を販売することは、矛盾しているように思います。なぜ、同じ店で販売するのでしょうか。

大庭さん「ドラッグストアが酒類を販売している理由も、集客力を高めるためです。医薬品は『体によいもの』、酒類は『(飲み過ぎると)体に悪いもの』というように、性質が異なる商品に見えますが、特売などで大量に酒類を販売したり、飲酒をあおったりするような売り方をしているわけではないので、問題はないかと思います」

Q.将来的に、ドラッグストアは医薬品や化粧品以外の商品がさらに増え、コンビニやスーパーとの違いがなくなるのでしょうか。

大庭さん「将来的に、ドラッグストアにおける医薬品や化粧品以外の商品を販売する割合が今よりもさらに高くなり、コンビニやスーパーとの境がなくなっていく可能性が大きいと私は考えています。理由は、ネット販売が充実していること、そして、日本の人口が減少していることです。

現在、たいていの商品がネットで購入できるため、実店舗に足を運んでもらうには、消費者の利便性を高める必要があります。そのため、特定の分野の商品だけではなく、販売する商品の品ぞろえを充実させる必要があります。

また、人口が減少していくことは、店舗間での集客を巡る競争が激しくなることであり、それに対しても、販売する商品の品ぞろえを充実させることで、消費者の利便性を高めることが必要です」