【自動車用語をわかりやすく解説】馬力とは?から「PH・HP・kW」の表記の違い、人間は何馬力までをお伝えします。

馬力とは?

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馬力とは、「ある重さの物体を、どれだけの時間で、どれだけの距離を動かしたか」という「仕事率」を表す単位です。自動車では「最高出力」を表す際に使用されます。

エンジンで発生させたエネルギーにより、自動車ができるだけ短い時間で長い距離を移動できるかというスペックに関わるため、馬力と自動車は密接な関係にあります。

■トルクと馬力の違い

馬力の他に自動車などにパワー数値を示す単位に「トルク」があります。馬力は「高い」「低い」と形容しますが、トルクは「太い」「細い」で形容される違いがあります。

ごく簡単に人間に例えて言えば、馬力は「足が速い」か「足が遅い」かの数値で、短距離走なら速く走れば走る人ほど「高出力」「高馬力」となります。対してトルクは「力がある」か「力がないか」で、重い物を持って走ることができればできるほど「トルクが太い」人となります。

このように、馬力は自動車の速度に大きく関わっています。スポーツカーが「高出力」「高馬力」をウリにしているのはそのためです。一般的にスポーツカーは高馬力(高出力)、トラックは低馬力かつ高トルクとなっています。

スポーツカーがトラックと同じ重さの荷物を積んだ場合、停止状態から進み始めるためのトルクが不足してしまい、トラックよりもスタートに苦労するでしょう。反対に、トラックをスポーツカー並みに軽量化しても、馬力が低いため最高速度はスポーツカーに届きません。

■「馬力」の由来

「馬力」は、産業革命時代のイギリスの発明家 ジェームズ・ワットが考案した言葉です。


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従来の蒸気機関に大きな改良を加え、全世界の産業革命に寄与したワットですが、当初は自身の開発した蒸気機関のパワーをどうやって宣伝するかについて悩んでいました。

そこで当時の紡績、織機、交通などの動力を担っていた”馬”に目をつけ、馬一頭の力で蒸気機関のパワー、すなわち仕事率を表現できるのではないかと考えます。ワットは馬に荷物を引かせ、1馬力を「75kgの物を1秒で1m動かす力」と定義しました。

後述しますが、イギリス馬力が「HP」となっているのは「Horse Power」の頭文字を取っているためです。

馬力の単位は主に4つが使われている

馬力といえば「マッスルカー」
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馬力を表す単位は、国ごとに使用される単位系の違いや言葉の違いによって複数存在します。もっとも馴染み深いのは「PS」「PH」「kW」の3種類であり、それそれの計測単位が違うことで馬力の数値も異なります。

単位記号 定義 主な言語圏 HP ヤードポンド法に基づく馬力 英語 PS メートル法に基づく馬力 日本語・ドイツ語 kW 馬力計算の元となる
仕事率の国際単位 全国

「PS」はメートル法を用いて求められるため、メートル法の発祥国であるフランスにちなみ仏馬力とも呼ばれます。「PS」とはフランス語ではなくドイツ語で「馬の力」を意味する「Pferde stärke」の略称です。

「HP」はイギリス語で同じく「馬の力」を意味する「Horse Power」の略称です。イギリスが定めたヤード・ポンド法で求められるため「英馬力」とも呼ばれ、おもにイギリスとアメリカで用いられています。1HPは、仏馬力に換算すると1.01387PSです。

現在の主流は国際単位系の「kW」です。1999年以降は国際単位の使用が義務付けられたことで、自動車の諸元表などで馬力を表す際は「kW」が用いられ「PS」や「HP」などの馬力単位は併記されるようになりました。1kWは1.36PSです。

■HP・PS・kW換算式

国によって馬力の単位が異なるため、スペックを比べる際には単位を揃える必要があります。以下はHP・PS・kWの換算式です。

1PS = 0.7355kW 1HP = 0.7457kW 1kW = 1.360PS = 1.341HP

馬力を計算する方法は?

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馬力は以下の式で求められます。

仏馬力(PS)=トルク(kgf・m)×回転数(rpm)×定数(0.00136)

最高出力173kW(235PS)/7,000rpm、最大トルク250N・m(25.5kgf・m)/3,700rpmのトヨタ GR86を例に、最大トルク発生回転数時の馬力を算出すると、25.5kgf・m×3,700rpm×0.00136=131.7PSとなります。

仕事率である馬力は、大きなトルクを発生するほど、回転速度が速くなるほど大きくなります。また、エンジントルクは回転数などによって変動してするため、それに応じて馬力も変動します。

諸元表の最高出力とは、あくまでスロットル全開時の最高出力発生回転数のトルク値から算出された仕事率であり、最大トルク発生回転数が高く、許容最高回転数が高いエンジンほど馬力が高くなる傾向にあります。

1馬力とはどれくらいの力?

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前述の通り、1馬力は「約75kgの物体を1m動かす力」です。75kgというと、中肉中背の成人男性やトレーニングジムに置いてあるバーベルがイメージしやすいですが、それらを1mの高さまで持ち上げるとなると結構な力が必要です。

他にも「体重73kgの人間が100mを10秒で走る力」が1馬力に相当します。ちなみに、男子100mの日本記録を19年ぶりに更新した桐生祥秀選手の体重は70kg前後です。

100mという限られた距離でなら人間も1馬力を発揮することは可能かもしれませんが、1馬力を維持したまま何kmも走り続けるのは陸上選手でも不可能です。

人間は何馬力?

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ここまで、馬力の定義や由来、単位の違いなどを解説してきました。たった1馬力でも、人間が発揮するには大きな力であることも理解して頂けたと思います。

平均して人間が発揮できる瞬間的な馬力は0.5、持続して発揮できる馬力が0.1と言われています。軽自動車でも継続して50馬力程度は発揮できるということを考えると、自動車の馬力の大きさがわかりますね。

車の最大馬力世界ランキング

■第5位【1,622ps】ブガッティ シロン スーパースポーツ300+

ブガッティ ヴェイロンの後継にあたるシロンは、8.0L W型16気筒に4基のターボチャージャーを組み合わせてた1,500PSもの馬力で、0-100km/h加速は2.5秒・最高速度は420km/hを叩き出すモンスターマシンです。

最高速記録のために手が加えられたシロン スーパースポーツ300+は、空力特性に優れた外観と1,600PSの馬力が与えられ、490.484km/hの市販車世界最高速度を記録しました。

■第4位【1,600PS】ケーニグセグ ジェスコ アブソリュート

スウェーデンの自動車メーカーであるケーニグセグ ジェスコ アブソリュートの最高出力は1,600PS。搭載エンジンは自社開発の5.0L V型8気筒ツインターボエンジンで通常は1,280PSに留まるものの、ノッキングしにくいE85バイオエタノール使用時はブーストアップにより1,600PSまで最高出力が引き上げられます。最高速度は482km/hを記録しています。

■第3位【1,750PS】SSC トゥアタラ

アメリカのSSC(シェルビー・スーパー・カーズ)によって製作されたトゥアタラは、自社開発6.9L V型8気筒ツインターボで1,750PSを発揮します。トランスミッションは7速セミATもしくは7速MTが組み合わされ、0-100km/h加速は2.5秒。最高速は500km/hをオーバーし、ブガッティ シロン スーパースポーツ300+の世界最高速度記録を塗り替えました。

■第2位【1,817PS】ヘネシー ヴェノムF5

6.6L V型8気筒ツインターボを搭載する米ヘネシーパフォーマンス社のヴェノムF5は、車名でもある「F5」と名付けられた走行モードに切り替えることで最高出力1,817PS・最大トルク165kgf・mを発揮できるようになります。

最高速度は2022年のテスト段階で437km/hをマークしており、さらに2,000PSを発揮するテスト車両も存在していとの噂があります。

■第1位【1,825PS】キーティングTKR

イギリスのハイパーカーメーカーであるキーティングが2009年に発表したTKRは、チューニングされたシボレー コルベットの7.0L V型8気筒エンジンにスーパーチャージャー2基を搭載して1,825PSを発揮し、418.59km/hで当時の最高速度を記録しました。

キーティングの車は1台ずつハンドメイドで生産されており、2,500PSオーバー仕様もオーダー可能とのことです。

ちなみに、自動車は通常50~300馬力程度ですが、新幹線は2万馬力以上、ジェット戦闘機は8万~20万馬力以上、ロケットのエンジンは320万馬力近く発揮するものも。

自動車の諸元表を見る際には、ぜひ馬力(最高出力)にも注目してみてください。