ソニーがバンジー買収で狙う戦略。ライブサービスゲーム新作10本以上、マルチプラットフォーム化推進
2月2日の業績説明会で、ソニーがゲーム会社 Bungie 買収の戦略的意義について説明しました。
ゲーム『Destiny』を獲得するだけでなく、マルチプラットフォームでサービスとして運営を続けるノウハウや技術を取り入れることで、「2025年度までに10タイトル以上のライブサービスゲームをローンチ」「プレイステーション以外のプラットフォームへの拡大」を進め、自社制作の PlayStation Studiosタイトル売上を2025年度までに倍増させる目標を明らかにしています。

バンジーは今年で創業31年の老舗ゲームスタジオ。初期は Mac OS向けの『Marathon』『Myth』などで名を揚げ、2001年には初代Xboxのためのゲームを求めていたマイクロソフトにより買収されています。
マイクロソフト傘下で発売した『Halo』シリーズはXboxのキラータイトルになり、マイクロソフトのゲーム事業の顔のひとつにまで成長しました。
2007年にマイクロソフトから再び独立したのち、2014年からマルチプラットフォームで展開しているのがオンライン専用のマルチプレイシューター『Destiny』および続編の『Destiny 2』です。
『Destiny』(シリーズ)の特徴は、発売後も継続的に追加コンテンツやストーリー展開などのアップデートを続け、「生きた」ゲームとして遊び続けられること。「買い切り+発売後に追加コンテンツがいくつか」の従来型ゲームと異なり、長期にわたり新しいコンテンツを提供しつづけ年単位で遊べる「ライブサービスゲーム」の代表的な作品のひとつです。
Destinyだけがライブサービスゲームというわけではなく、フォートナイトしかりAPEX Legendsしかり、人気オンラインゲームの多くはこの「オンラインで継続かつ大規模なアップデート」「ゲーム内購入のスキンやシーズンパスなど追加アイテムで継続的な収益化」を導入しています。
バンジーがマイクロソフトに遺したHaloも、最新作『Halo Infinite』は一人用キャンペーンが有料、マルチプレーヤーは基本無料の追加コンテンツ課金でシーズン展開を導入しました。
古くからあるMMO RPGや、継続的に新章や新キャラで売り『サ終』があるスマホゲームの多くも、広義ではライブサービスゲームです。

人気ゲームの多くがライブサービス化するなか、ソニーのプレイステーションでももちろん Destiny 2 をはじめライブサービスゲームが遊べます。しかしソニーの自社スタジオ PlayStation Studios は、伝統的にシングルプレーヤーでストーリー性の強い作品を得意としてきました。
看板である『アンチャーテッド』『ゴッド・オブ・ウォー』『The Last of Us』シリーズ、『ラチェット&クランク』、最近では『スパイダーマン』も『Horizon Zero Dawn』も、買い切り追加コンテンツはあっても年単位で継続的に展開する作品ではなく、ゲーム内のきせかえアイテムやシーズンパス等で継続的に収益化できる作品でもありません。
ソニーが業績説明会で述べたBungie買収の戦略的意義はちょうどこの部分を補うもの。Destinyと開発中のバンジー新作そのものを獲得するだけでなく、ライブサービスゲームを運営するノウハウを得ることにより、2025年度までに自社スタジオからライブサービスゲームを10作品以上、売上を現在から倍増という目標を掲げています。
ソニーとプレイステーションの将来にとってライブサービスゲーム推しと同じく重要なのは、マルチプラットフォーム化でプレイステーション以外への拡大を加速すること。
ソニーは2020年から、プレイステーション独占として自社開発・自社販売したタイトルの一部をPCでも展開してきました。第一弾はオープンワールドRPGの『Horizon Zero Dawn』。その後ゾンビものの『Days Gone』、つい先日には『ゴッド・オブ・ウォー』と続き、年内には『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』も発売を控えています。
PC版『ホライゾン ゼロ ドーン』は2020年8月7日発売、DLC同梱でグラフィック強化のコンプリート エディション
ソニー、PC版『Days Gone』は2021年5月18日発売。ウルトラワイド対応やFPS無制限などグラフィック強化
PC版『ゴッド・オブ・ウォー』開発者インタビュー 。北欧二部作がPCネイティブで開幕
『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』発売。「プレイする映画」最高峰がリマスター
いずれもシングルプレーヤーでストーリードリブンなゲームですが、ライブサービス化した新作を出さなくても、PCに移植すればプレーヤー層を拡大できます。
マルチプラットフォーム化は、ライブサービスゲームの強化にとっても重要な点。シーズンパスやスキン等を含む追加コンテンツによる継続的な収益化にはまずゲームに触れる母数を増やすこと、定着させることが重要であるために、「基本無料・マルチプラットフォームのマルチプレーヤー」はライブサービスゲームの定石となっており、Destiny 2も2019年から基本無料で遊べるようになっています。
「ライブサービスゲームのトレンドを導入する」と言えば何か新しい戦略のようでもありますが、オンラインゲームの黎明期から「人気IPを使った『〜オンライン』を鳴り物入りで開始、本編が人気でもオンラインは過疎で秒速サ終」は無数にありました。そうならないためのバンジー買収と考えれば、サービス終了に怯えずハードウェアを乗り換えてもずっと遊べるPlayStation Studiosゲームに期待できそうです。
余談ながら、PlayStation Studiosでソニー傘下の開発スタジオ全体を統括する責任者 Hermen Hulst氏は、『Horizon Zero Dawn』の Guerrilla Gamesで長年トップを務めた人物。ゲリラゲームズといえば、ホライゾンの前はPS2時代から延々と、SF FPSゲームの『Killzone』シリーズを開発してきたスタジオです。
『Killzone』は技術・演出に優れ根強いファンもいるシリーズですが、セールス的には大ヒットを続けたわけではなく、プレイステーションの人気ゲームとして真っ先に名前が挙がるでもない作品として、かたやXboxの顔にまで成長した『Halo』と何かと比較されてきました。
Hermen Hulst氏はBungie買収にあたってのインタビューで、Bungieは自社ゲームで数多くのイノベーションを起こし完成させてきた、自分は『Killzone』シリーズを開発する立場から『Halo』シリーズにおけるBungieのゲームデザイン上の選択をつぶさに観察してきたと述べた上で、失敗も多いライブサービスゲームを成功させた『Destiny』は特別なゲームであると、Bungie買収への期待を語っています。
Hermen Hulst talks Bungie, what’s next for PlayStation Studios - PlayStation.Blog
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