「M1」チップを搭載したMacBook Air(以下、M1 Air)を購入してから3カ月ほど経ちます。これまで使っていたノート型MacはMacBook Pro 2014(2.5GHzクアッドコア Core i7/16GBメモリー)だったので、実に7年ぶりにノート型Macを買い替えました。最近のノート型Macは昔と比べて長いこと使えますし、モバイル用途にはiPhoneもiPadもあるので買い替える理由が見つからず、ここまで来てしまったわけです。

ただ、“新しもの好き”のAppleユーザーとしては、四方八方、いやほぼ全方位的に褒めちぎられているM1 Macの話を聞いたら買わなければいけない!と思い、M1 Airのエントリーモデルを手にしました。お値段は104,800円(税別)です。

MacBook Pro 15インチからM1 Airへ買い替え。同じM1搭載の13インチProと比べても大きな差はありませんし、ゴールドが選べるのはM1 Airだけの特権です


とにかく速い! バッテリーもよく持つ

実際に使ってみて驚かされたのが、やはりそのスピードです。M1 Airのエントリーモデルでさえ、「この1年で発売された98%のWindows搭載ノートPCよりも高速」とAppleが言うように、とにかく速い! 従来のIntel製CPUを搭載したMac向けのアプリは「Rosetta 2」によってバイナリ変換されて動きますが、それでもネイティブアプリの70〜80%程度の速度で動作するといい、手持ちの旧MacBook Proと比べても圧倒的に高速。Adobe Photoshopなどの動作が、Rosseta 2でも現行のMacBook Pro 16インチと比べて大差ない!と聞いたときは「本当?」と疑いましたが、あながち嘘ではなさそうです。

加えて、Intel CPUのAirと比べて2倍以上のバッテリーの持ち、高負荷な作業をしてもファンの音がしない静音性など、さまざまなメディアで語られている長所は実に素晴らしく、Windows陣営が追いつけるのか心配になるほど。“異次元のパソコン”が誕生しちゃった感すら覚えました。

ただ、ここでの目的はあえて「M1 Macのダメなとこ・イマイチなとこ」を書くこと。初代モデルということで、予期せぬ不具合やトラブルを気にして購入を迷っていたり、デメリットな事実を見逃していたりする人もいるでしょうから、あくまで個人的な感想にはなりますが、8つほど順に気になる点をピックアップしてみました。これから購入を考えている方の参考になれば幸いです。

いろいろなアクセサリーを追加購入せざるを得ず、費用がかさむ

M1 AirやM1 MacBook Pro 13インチ(以下、M1 Pro 13")のインターフェイスはUSB-Cのみです。従来使っていたMacがUSB-C非搭載の場合は、身の回りの周辺機器もUSB-Cには対応していない場合が多いでしょう。ハードディスク、USBメモリ、液晶ディスプレイ、外付けのキーボードやマウスなどなど。

こうしたUSB-C非対応の周辺機器をM1 AirやM1 Pro 13"で使うなら、変換アダプタの購入がマストになります。私の場合、Apple純正のThunderbolt 3(USB-C)- Thunderbolt 2アダプタ(4,800円)、USB-C - USBアダプタ(1,800円)、USB-C - SDカードリーダー(4,500円)を購入し、「M1 Air本体の10分の1程度」の追加出費が必要となりました。Apple純正の変換アダプターは性懲りもなく高すぎますので、私と同じような環境の方はご注意ください。

また、M1 AirもM1 Pro 13"もUSB-Cポートは2つしかありません。電源ケーブルをつないだら残り1ポートしかないので、今後さらにUSB-Cハブも購入予定です。

Time Machineバックアップから「移行アシスタント」を使って環境移行しましたが、外付けストレージのインターフェイスはThunderbolt 2。それをUSB-Cに変換するのに、さっそく4,800円もする高価な変換アダプターが必要でした


USB-Cポートは2つ、しかも左にのみ!

M1 Airは従来と同様ですが、M1 Pro 13"の場合はUSB-Cポートが2つ減っています。ポートの少なさはUSBハブを購入すれば何とかなりますが、USB-Cポートが左側にしかないのは使いづらくて仕方ありません。私の仕事場は、デスクの右方向から電源を取るしかないのですが、左側にしかUSB-Cポートがないのでケーブルが届かず、延長コードを使わざるを得ないのです。

本体右側にUSB-Cポートがあれば、延長コードを使わなくても電源コンセントからダイレクトに電源ケーブルをつなげられるのですが……


Windowsはまだ動かない!

M1 MacはBootCamp非対応で、かつ従来のIntel Mac向けの仮想化ソフトを使ってIntelのx86アーキテクチャ向けに作られたWindowsを走らせることはできません。いち早くM1 Macへの対応を表明した米Parallelsは、2020年12月17日に「Parallels Desktop」のテクニカル・プレビュー版を公開しましたが、ここで動作するのは64ビットARM版のWindows 10のみ。マイクロソフトは、ARM版WindowsをM1 Macで動かしていいというライセンスを与えていないことから、「Windows on M1 Mac」の先行きはまだまだ不透明。MacでWindowsを動かすことがマストな人は、しばらく“待ち”の状態が続きそうです。

仮想化ソフトで知られる米Parallelsは、開発者向けに「Parallels Desktop 16」のテクニカルプレビューを公開。製品化のスケジュールはまだ見えていません


iPhone/iPadアプリが動く!に過度の期待は禁物

M1 Macでは、iPhoneやiPadアプリを動かすことができます。iPhoneやiPadにはあってMac版がないアプリはたくさんありますから、購入後さっそく何本かをインストールしたのですが、しばらくして一切使わなくなりました(笑)。

人によっては、iPhoneで毎日遊ぶゲームアプリをMacでも楽しんだりしているようですが、私にはそこまで「Macでも動かしたい」アプリはありません。結局、仕事の合間にiPhoneでチェックすれば事足りてしまうので……。iPhone/iPad向けアプリをMac App Storeで公開するかどうかはデベロッパーが決めるのですが、非公開のアプリがまだたくさん存在するのも活用が進まない理由です。

Mac App StoreからiPhone/iPadアプリは入手できますが、「macOSでは検証されていません」バッジが付いたアプリがほとんど。バッジがなくても正常に動作しないものも多く、いちいち試すのも面倒です


故障したらApple Storeに頼るしかない!?

M1 Macでは、普段何かしらの問題が起きたときのトラブルシューティングの方法が大きく変わりました。たとえば、電源を投入する際に[command]キー+[R]キーのようなキーコンビネーションが廃止され、代わりに電源ボタンを長押しして「スタートアップマネージャ」を起動し、ここからOSの再インストールやTime Machineからの復元などを行うようになっています。もちろん、これは新しいやり方を覚えればいいだけなので、大きな問題ではありません。

Intel Macからスタートアップマネージャの起動方法が変わりました


復旧に必要なイメージをAppleのサーバーからダウンロードする「インターネットリカバリ」もM1 Macでは利用できません


ただ、個人的に残念なのは、NVRAM(不揮発RAM)やPRAM、SMC(システム管理コントローラ)のリセットといったメンテナンス手法が廃止されたこと。起動プロセスをログ画面で表示する「Verboseモード」やコマンドラインを表示する「シングルユーザモード」もキーコンビネーションでは呼び出せません。

Macに何か問題が起きたとき、ユーザー側で比較的安全かつ簡単に対処できる方法だったわけですが、今後はどうしたらいいんでしょう? M1 Macではそんな問題は起きないので、存在する意味がないんでしょうか? 何か問題が起きたとき、毎回Apple Storeへ持っていくのは避けたいところです……。

外付けストレージがやや遅め

いろいろな人が指摘している問題ですが、M1 Macでは外付けストレージを接続した際の読み書きのスピードがIntel Macよりも遅くなる傾向にあります。使用するSSDとの相性もあるのかもしれませんが、ネットではIntel Macの半分のスピードも出ないという人も……。大容量のファイルを読み書きする使い方の多い人は注意したいところです。ちなみに、私の環境ではIntel Macと比べてあまり変わりませんでした。

eGPU非対応、外部ディスプレイ出力も1枚まで

M1 Macではグラフィックスプロセッサを外付けしてグラフィックス性能をアップする、いわゆる「eGPU」には対応していません。そのため、ビデオ編集や3Dグラフィックスの処理などを高めたい人は、eGPUに対応する16インチMacBook Pro、あるいはiMacを選ぶのが現実的でしょう。

また、Appleの仕様ではM1 AirやM1 Pro 13"では1台の外部ディスプレイ(最大6K解像度、60Hz)のみ、M1 Mac miniでは最大2台のみの外部ディスプレイしか接続できないとされています。実際には、DisplayLink社のチップを搭載したアダプターを使って「USBディスプレイ」で接続すれば最大5〜6台出力できますが、USB経由で仮想的にディスプレイを増やしているため、使用に制限が出てしまうのがネックです。

AirとProの違いが小さすぎる!

これまでずっとMacBook Proを使ってきたため、今回も当初はM1 Pro 13"を購入しようとしていました。しかし、搭載しているM1はM1 Airと同じなのでパフォーマンスに差はなく、その他の面でも差はほとんどありません。強いていえば「冷却ファン搭載」と「TouchBar搭載」はM1 Pro 13"だけのメリットですが、それだけでプラス3万円はいかがなものか。そのほか、トラックパッドが若干広かったり、Retinaディスプレイの輝度が100ニト高かったり、マイクとスピーカが若干良いという違いはあるものの、Intel Macのときと比べてあまりにもProを選ぶメリットが低く、どちらかといえば消去法的にM1 Airを選んだわけです。

もし、次世代のモデルで差別化が進むのであればそれを待ったり、よりパフォーマンスに重きを置いて生まれ変わるであろうM1 Pro 16インチを待ったほうがよかったかもしれません。

One More thing…

M1 AirもM1 Pro 13"も中身は大きく変わったのに、外観のデザイン変更は今回一切ありません。個人的には、これが一番残念な点でした。ただ、Appleはこのタイミングで変えることもできたが、あえてしなかったのかもしれません。中も外も変わるとユーザーの混乱も招いてしまいますし、トラブルも生じやすくなるからです。

ただ、それは裏を返せば、M1のノウハウを蓄積した次世代モデル以降では、筐体デザインの変更もあり得るということ。M1 Airで内蔵ファンが取り除かれたように、今後はさらなるAppleシリコンの進化によってロジックボードを含めた内部のパーツが占める割合は減り、筐体全体のデザインの自由度が高まるのは間違いありません。3年後、4年後だったら納得できますが、来年あたりにいきなり登場したら今回のモデルは待てばよかった!と後悔しそうです。

ですから、もしMacをすぐに買い替える必要はなく、中も外もNEWなモデルを望むなら、これまでに挙げた8つのポイントも考慮して、今回のM1 Macには飛びつかないのも賢明な判断でしょう。

もちろん、手持ちのMacが故障したのですぐに買い替えたい!といった場合もあるでしょうが、そんなときは、あえてIntel Macを検討してみるのも十分ありだと思います。M1 Macの登場やテレワーク需要に押されて、中古のIntel MacBookシリーズが非常に安くなっているからです。2017年モデルのAirは5万円台、2018年モデルでも7万円台で購入できます。もしかしたら今は、中古Intel Macのほうが買いなのかもしれません。

中古Macを専門に発売する「秋葉館」などで調べてみると、Intel Macの価格が大きく下がっています。Airの2016年モデルだと、3万円台後半で買えるものも!


Appleの整備済み商品も従来より安くなっています