駅近でもなく、看板もない。でも、わざわざ行きたくなる恵比寿で噂の和食店

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2020年7月にオープンした、東京・恵比寿の居酒屋「創和堂」。素通りしてしまいそうなほどひっそりとした佇まいにもかかわらず、連日大盛況となっているこの隠れ家の人気の秘密に、フードパブリシストの高橋綾子さんが迫ります!

#toc_container{display:none!important;}オープン当日から連日大入りの話題店「創和堂」扉を開けるのを躊躇してしまいそうなほど、ひっそりとした佇まいまずは名物メニューから!ジューシーな極厚の「ハムカツ」一人飲みにおすすめな「わっぱ盛り合わせ」うまみに力強さを感じる「黒岩土鶏のつくね」ユニークでおいしい創作メニュー海老出汁と白味噌でつくる、濃厚な「グラタン」ちょっぴり秘密めいた、このお店の正体とは?

オープン当日から連日大入りの話題店「創和堂」

厳しい状況をものともせず、連日盛況な秘密とは?

2020年7月10日のオープン以来、連日賑わっている店があります。その名は「創和堂」。飲食店にとって厳しい状況のなか、駅近でもなく、看板もない、知る人ぞ知る店がなぜこんなにも人気なのか。その秘密に迫ります!

扉を開けるのを躊躇してしまいそうなほど、ひっそりとした佇まい

看板はなく夜の帳に紛れ込んでしまう黒レンガの外観

恵比寿駅から徒歩10分弱、喧騒から外れたところに「創和堂」はあります。看板もなく、扉の上にある小さな灯だけが目印。よく注意していないとうっかり通り過ぎてしまいそうな佇まいなのに、連日連夜予約なしでは入れないほど大盛況なのです。

扉の横にある“紋”だけが店の証

本当にここで合っているのか、確認する手立ては扉の横にある店の紋。と言っても、正面からはまったく見えない所にあるので誰でもわかる訳ではありません。

どうしてここまで隠してしまうのか? 店主である酒井英彰さんは「店はお客さまに作っていただく部分が非常に大きく、この店や、この店で働くスタッフを好きと言っていただける方々との時間を共有したいと思っております。通りがかりの単なる好奇心ではなく、『創和堂』での時間を楽しみに来店していただきたいからです」と、話します。

まずは名物メニューから!

九州の食材を主にした、魅力的なメニューがずらり

では「創和堂」がなぜ人気なのか、まずは料理から解明していきましょう。

こちらでは気になる料理を組み込むことができるおまかせコースもありますが、多くの客はアラカルトで食べたいものを食べたいだけ食べて楽しんでいます。

酒井さんの出身である福岡をはじめとする九州の食材を主にしたメニューは、つまみから〆のごはんまで全制覇したくなる魅力的なものばかり。

ジューシーな極厚の「ハムカツ」

店の顔とも言える「雲仙ハムカツ」500円。粒マスタードが合うんです!

誰もが何度食べても毎回頼んでしまうという「雲仙ハムカツ」。この雲仙ハムも長崎県島原半島の名産品です。ハムというよりソーセージにも似た味わいで、これだけ厚みがあるのに歯切れがよくとってもジューシー。衣はサクサクで一度でも食べたら間違いなくやみつきです!

一人飲みにおすすめな「わっぱ盛り合わせ」

おひとりさまに人気の「わっぱ盛り合わせ(おばん菜)」1,800円と佐賀県嬉野の茶葉を使った「和紅茶ハイ」650円

ちょこちょこつまみたいなら「わっぱ盛り合わせ」がオススメです。小鉢メニューの中からいくつかおまかせで盛り合わせていて、「おばん菜」と「酒肴」の2種類があります。写真は「おばん菜」で、本日は「秋野菜といくらのお浸し」「生ハムと柿、しめじの白和え」「落花生塩茹で」の3品。

お浸しにはいくらと金時草、そしてアミタケ、キクラゲ、シイタケが優しい味わいの出汁と和えてあり、生ハムと柿の白和え、ホクホクの茹でた落花生と、どれも組み合わせの妙がキラリと光る逸品です。

うまみに力強さを感じる「黒岩土鶏のつくね」

「黒岩土鶏のつくね」600円

こちらのつくねはちょっと変わり種。宮崎県の「黒岩土鶏」を丸鶏から捌いてレバー、モモ、胸肉を挽肉にし、鶏脂と雑穀とネギを混ぜて成形します。放し飼いで育った鶏は歯ごたえがしっかりしている上に、雑穀を加えているのでとにかく食感が楽しい! その後、じんわりと滲み出る肉のうまみを噛みしめるのです。

本日のグラスワインは800円〜

卵ももちろん「黒岩土鶏」のもの。弾けんばかりの黄身を箸で割ってつくねにつけてみると、育った環境をイメージさせるような力強さを感じます。

これに合わせるのは自然派の白ワイン。早くから和食とヴァン・ナチュールとのペアリングを提案してきた酒井さんだけに、食事に寄り添うワインが揃っています。

ユニークでおいしい創作メニュー

海老出汁と白味噌でつくる、濃厚な「グラタン」

「雲丹と海老出汁の味噌グラタン」1,000円

定番メニューのグラタンも、酒井さんの手にかかれば創造性にあふれる忘れがたい料理となります。

海老の香り高いベシャメルソースを纏ったタマネギとパプリカ。トッピングには、上質な雲丹。たった直径10cmほどの器の中に、ささやかな贅沢が詰まっています。

グラタンのソースになるタマネギとパプリカ

味の要となるベシャメルソース作りは、まず大きな鍋いっぱいのタマネギとパプリカを1/10くらいの嵩になるまでひたすら炒めます。1時間ほどかけてじっくりと火を入れることで香りと甘みが立つそうですが、大量のタマネギとパプリカを焦がさずに炒めるのは、プロの料理人でもなかなか骨が折れる作業です。

そこに海老で取った出汁と白味噌を入れることでさらなる香りと甘みが加わり、コクも出ます。チーズを使わずにこれだけ濃厚なグラタンになるのは、費やした時間と努力の賜物。器の中で和と洋が溶けあっていくような、身も心も骨抜きにされるひと皿です。

ちょっぴり秘密めいた、このお店の正体とは?

あっという間に大人気店を2つも作った酒井英彰さん

店舗のひっそりとした佇まいの理由や、抜群のおいしさを誇る料理について迫ってきましたが、このお店の正体とは?

実はこちら、渋谷で超がつくほど人気の「酒井商会」の姉妹店なのです。だから料理がおいしいのは折り紙付き。しかし、「酒井商会」も3年目に入ったばかりなのにもう2軒目?と思うところですが……。

「酒井商会をオープンして1年ほど経った頃、一緒に働いているスタッフが独立や次のステップに進むときに即戦力になれるよう、活躍できる場を作らなければと思ったんです」と、酒井さん。

扉を開けると異空間、というのも魅力です

ゼロからのスタートを経験させるため店名も酒井商会をイメージさせず、みんなで切磋琢磨しながら店作りをしているそう。

席数は酒井商会の2倍。同じようでありながら任されることは異なり、どちらも経験できる環境はスタッフにとって宝のようなもの。当然、スタッフの意欲が湧き、店が活気づくのです。良い空気感のなかでの居心地は最高! 毎日通うツワモノがいるというのも納得です。

窓際のカウンター席

外からは様子がわからず、ハッキリ言えば入りづらい店に違いない。ですが、扉を開けると、そこにはおいしくて楽しい時間を過ごせる空間があります。

入り口のすぐ左には、“サク飲み”や食事の後にゆっくり1杯飲めて、待ち合わせにも使えるバーカウンターがあり、一瞬、小さいお店なんだなと思わせておいて、先に進むとさらに扉が。そこを開けると、パァーッと大きなダイニングフロアが広がるというサプライズも!

何ヶ月先まで予約が取れないというわけではなく、時間によってはすんなり入れたりもするし、だれもかれもは受け付けないようで意外に門戸は広い。そんな隠れすぎない隠れ具合もまた訪れたくなる理由なのでしょう。

※価格はすべて税抜


<店舗情報>
◆創和堂
住所 : 東京都渋谷区広尾1-12-15 リバーサイドビル 1F
TEL : 080-8040-4822
営業時間 : 17:00〜24:00(L.O.22:30)
定休日 : 日曜日

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※本記事は取材日(2020年10月16日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・文:高橋綾子
撮影:外山温子