【1990年代を沸かせた和製スポーツ】スープラにGTO、フェアレディZ 後編
エンジンの足を引っ張る重たいボディtext:Chris Chilton(クリス・チルトン)photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
1998年式の後期型3000GT(GTO)を所有するジョーンズは、社外製マフラーを組み、素晴らしい音響を引き出している。早朝のスタートでも隣人と揉めないような、大人な設定だ。
走り出すと、三菱は自身の体格と格闘しているようだ。センターデフを介して通常55%のトルクを後輪へ伝える四輪駆動システムを含む、数多くの装備のおかげで、車重は1810kgもある。エンジンのパワーを、重たい車体が消費する。
三菱3000GT(GTO/1990年〜1999年)初期の3000GTはギア比が長く、3速で190km/hまで引っ張れた反面、軽くないボディの足を引っ張った。0-97km/h加速は5.8秒と悪くないものの、中間加速では本気のホットハッチに先を越されるほど。
モデル中期で、最高出力は286psから304psへと増強され、MTは5速から6速へとスイッチ。クルージング時のレシオがロング化され、中間のレシオをショート化。特に4速での加速で、尖さが追加された。6速MTは、考えて段数を選ぶ必要がある。
エアバッグが内蔵され、膨らんだステアリングホイールをコーナー目がけて切ると、手のひらに応えるような感触が伝わる。グリップ力は高い。一般道で必要とする以上に。トラクションも豊かで、タイトなコーナーへ突っ込む自信が湧いてくる。
50km/hを超えると、リアタイヤは最大で1.5度、フロントタイヤと同じ方向に切られる。身勝手になろうとするテールを、抑え込むセッティングだ。
ひとしきり楽しんで、三菱3000GTからトヨタ・スープラへ乗り換える。同じコーナーを走らせると、より積極的に旋回していくのがわかる。
軽量に仕上げられたA80型スープラ
A80型スープラは、ボンネットとフロント・クロスメンバーにアルミニウム使用し、燃料タンクは樹脂製。フロアカーペットの素材にもこだわり、先代より100kg近く軽量に仕上がっている。三菱3000GTと比べると、231kgも軽い。
前後の重量配分にも優れ、スープラは52:48。三菱3000GTは、57:43だ。純粋なFRだから、スポーツカーらしい走りを即時的に引き出せる。
トヨタ・スープラ(A80型/1992年〜2002年)トヨタ・スープラは、三菱3000GTとは異なるスタイルで走ろうと訴えてくる。A80スープラのステアリングを一度握れば、降りたくなくなってしまう。
日本仕様のスープラは、国内の自主規制に合わせて最高出力が280psに抑えられていたが、実際はもう少し高かった。欧州仕様に作られたスープラは、ターボとインジェクターが異なり、330psを獲得している。
今回取材させていただいたアダム・ハンターのスープラは、標準のまま。しかし、ダイノテストの結果では、今もパワーに衰えは見られないという。最高出力の差があるとはいえ、A80スープラは直線加速で2台を圧倒する。
低回転域でアクセルを踏み込む。2JZユニットに取り付けられた2基のターボのうち、最初は1基だけが過給。エンジンが4000rpmを超えた当たりで2基目のタービンが回り、フルパワーに到達する。
エンジンサウンドは轟音ではなく、大きなタービンのように不気味に響く。0-97km/h加速は5.1秒。160km/hまでは13秒ほど。249km/hでリミッターがかかるが、最高速度は289km/hにヒットする。
メカニズムのバランスが良いZ32
スープラも完璧ではない。ゲトラグ社製のトランスミッションは、変速タッチは軽いもののストロークが長い。ゲートをスライドさせると、不自然な引っ掛かりがある。
ステアリングも同様。直進状態からの切り始めは、軽すぎる。ダッシュボード上からトラクションコントロールをオフにし、派手なテールスライドをとっさに抑えるには、必要な軽さなのかもしれない。
日産300ZX(Z32型フェアレディZ)とトヨタ・スープラ(A80型)軽いボディは機敏だが、ドライバーへ伝わる情報量が足りない。もしクルマとの一体感を求めるなら、ポルシェ968やマツダRX-7の方が良いだろう。
Z32型のフェアレディZに乗り換える。ゲイリー・クロウザーがオーナーの、珍しいサハラゴールドで塗られた300ZXは1991年製。日産のV6ツインターボは、スープラほどではないものの、三菱3000GTと並ぶ280psを発生した。
当時のAUTOCARのテストでは、0-100km/h加速は5.6だった。今日でも充分に速い数字だ。やや着座位置の高いシートの背もたれへ、背中を押し付けてくれるほどに。
フェアレディZには、直線加速とサウンド以外の強みもある。ブレーキペダルの感触は確かで、姿勢制御にも優れる。トランスミッションのタッチも良好。今回の3台の中では、一番メカニズムのバランスが良い。
走りも最高だ。ステアリングホイールへは一貫して適度な重さが伝わり、コーナーを攻めていく自信を高めてくれる。それに続く、リアタイヤのグリップも心強い。
排気ガス規制の強化とともに姿を消した3台
当時の試乗では、3000GTと同様に、濡れた路面での振る舞いを指摘されていたが、Z32には繊細さがある。それほど心配する必要はない。ドライ路面なら完全なコントロール下に留められ、運転しやすい。
加えてZ32は、三菱3000GTより洗練された四輪操舵システムを装備する。高速域では前輪と同じ向きに、低速域では逆向きにリアタイヤが切られるが、フィーリングは自然だ。
日産300ZX(Z32型フェアレディZ)/三菱3000GT(GTO)/トヨタ・スープラ(A80型)3車3様のビッグクーペ。1990年代が終わるのと同時に、排気ガス規制は厳しくなり、英国からは姿を消してしまう。ほかの市場では、数年ほどは長く生き延びれていた。
Z32に続いて登場した350Zは、シンプルで手頃な2シーターとして代替わり。三菱3000GTは次世代の登場なく、2001年に終了。ラリーシーンでの活躍を後ろ盾に、ランサー・エボリューションが三菱のイメージリーダーになった。
ご存知の通り、スープラは20年近いブランクを開けて復活している。ボディを付け替えた、BMW Z4の兄弟として。
新車当時の価格差は小さかったものの、現在の評価は大きな差がある。一番手に届きやすいのは三菱3000GT。英国では5000ポンド(67万円)ほど出せば、手間もかかるが、充分走れるクルマが手に入る。ベストの状態でも1万ポンド(134万円)前後だ。
3000GTはデザインの主張も強い。当時の日本の先端技術を楽しめる好例だが、今回の2台やスカイラインGT-Rに近いコンセプトを持ちつつも、近年の評価に高まりはない。
Z32は掘り出し物のクラシックスポーツ
ジェームズ・ジョーンズが所有する三菱3000GTは、最高の状態を保っている。荷室も広く、ツアー・モード付きのアクティブ・ダンパーも備わる。高速巡航向きの長いギア比が与えられ、日常的な利用にも週末のロングドライブにもぴったりだ。
スポーツカーとして最高とは呼べなくても、素晴らしいグランドツアラーにはなる。リアシートは付いていても、大人4人は乗れない。それを理解すれば、輝きが増して見える。
日産300ZX(Z32型フェアレディZ/1989年〜2000年)近年、一番高い評価を与えられているのがトヨタ・スープラ。別次元といえるほど。より力強く、遊び心に溢れ、ドライバーにフォーカスされている。過熱気味な取り引きで、状態の良いMT車なら英国では3万ポンド(402万円)以上が付く。
この両方を避けているのが、フェアレディZ。新車時は沢山の称賛を集めたZ32だったが、モデルチェンジとともに忘れられたモデルでもある。キレ良いハンドリングに情感豊かなV6エンジンを搭載し、秀でたバランスの走りが楽しめる。
今回の3台なら、筆者はZ32を選ぶ。1991年のAUTOCARでは、次のように褒め称えた。「熱いドライビングを掻き立てられる、オールドスクールでパワフルな、傑出したスポーツカー」
英国で探せば、状態の良いツインターボのMT車が、1万5000ポンド(201万円)程度で見つかる。掘り出し物といえるクラシックスポーツは、最近数が減ってきている。Z32型の日産フェアレディZ、300ZXは、われわれに残された希望の1台だといえるだろう。
日産300ZX、三菱3000GT、トヨタ・スープラのスペック日産300ZX(Z32型フェアレディZ/1989年〜2000年)のスペック
価格:新車時 3万4500ポンド/現在 1万5000ポンド(201万円)前後
生産台数:16万4170台
全長:4525mm
全幅:1800mm
全高:1255mm
最高速度:249km/h
0-97km/h加速:5.6秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1579kg
パワートレイン:V型6気筒2960ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps/6400rpm
最大トルク:37.8kg-m/3600rpm
ギアボックス:5速マニュアル
三菱3000GT(GTO/1990年〜1999年)のスペック
価格:新車時 3万5500ポンド/現在 1万ポンド(134万円)前後
生産台数:8万6151台
全長:4560mm
全幅:1840mm
全高:1282mm
最高速度:246km/h
0-97km/h加速:5.8秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1810kg
パワートレイン:V型6気筒2972ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:286ps/6000rpm
最大トルク:41.4kg-m/3000rpm
ギアボックス:5速マニュアル/6速マニュアル
トヨタ・スープラ(A80型/1992年〜2002年)のスペック
日産300ZX(Z32型フェアレディZ)/三菱3000GT(GTO)/トヨタ・スープラ(A80型)価格:新車時 3万7500ポンド/現在 3万5000ポンド(469万円)前後
生産台数:4万5230台
全長:4515mm
全幅:1811mm
全高:1265mm
最高速度:251km/h
0-97km/h加速:5.1秒
燃費:6.6km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1549kg
パワートレイン:直列6気筒2997ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:330ps/5600rpm
最大トルク:44.8kg-m/4800rpm
ギアボックス:6速マニュアル
