例年、乗車率が150%を超えることもあるお盆の新幹線帰省(時事通信フォト)

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 コロナ禍で突入したお盆休み。政府は「感染リスクも考えて、国民皆さんがそれぞれで判断してほしい」と、帰省による人の移動を特別制限しない方針だ。一方、東京都はオンライン帰省などを促しながら「この夏は、都外への帰省・旅行はお控えいただきたい」(小池都知事)と訴えた。では、それでも“リアル帰省”を強行する人が感染リスクを下げながら移動するにはどうしたらよいのか──。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が、新幹線などの混雑率から考察する。

【写真】通勤ラッシュは元通り

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 新型コロナは、新規感染者数が最大数の更新を繰り返しており、すでに第2波に入ったとの見方が強い。社会経済活動を再開しつつ、感染防止策を続けるという困難な局面を迎えている。「ウィズコロナ」の新しい生活様式では、どのようにこの2つを両立させるか、考えなくてはならない。

 たとえば、会社勤めの人は、日々の在宅勤務と出社のバランスをどのようにとるべきか、悩ましいことも多い。出社する人が増えて、通勤電車の混雑状況が感染拡大前の水準に戻りつつあるためだ。

 そんな中、お盆の時期がやって来た。東京都などの呼びかけもあり帰省・旅行を自粛する動きがある一方、ゴールデンウィーク中に帰省できなかった人が、故郷に帰るケースもあるとみられる。そこで気になるのが、新幹線など車内の混雑状況だ。

通勤電車の「混雑率」を下げるのは容易ではない

 ひと口に混雑状態といっても、通勤電車と、新幹線などの特急列車では、表し方が異なる。

 通勤電車の場合、輸送人員を輸送力で割り算した「混雑率」で表す。輸送人員は一定の時間帯に実際に乗車した人数で、輸送力はその時間帯に運行する電車の定員を合計した人数だ。

 通勤ラッシュ時の混雑率を下げるために、鉄道各社は電車1編成の車両数を増やしたり、2階建て車両を導入したりして輸送力を増やす取り組みを取ってきた。しかし、これは簡単にはできない。

 そこで、運転間隔を短くして、電車の本数を増やすことが基本的な対応とされてきた。

最高混雑率は「199%」の東西線

 混雑率が高ければ乗客が多いことになる。ただ、混雑率がどれほどの混雑状態を表すのか、一般の人には分かりづらい。そこで国土交通省は混雑率の目安を示している。

 100%は定員乗車で、座席につくか、つり革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる状態だ。150%は楽に新聞を広げて読める。180%は折りたたむなど無理をすれば新聞を読める。200%は体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める。250%は電車がゆれるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない状態とされている。

 では、実際の混雑率はどうか? 同省はラッシュ時の平均混雑率を毎年公表している。2018年度は、東京圏が163%、大阪圏が126%、名古屋圏が132%だった。主要区間の混雑率をみると、東京メトロ東西線の「木場駅→門前仲町駅」間で、午前7時50分〜8時50分の時間帯が199%と最も高かった。

 このほかにも、主要区間ごとに混雑率が公表されている。通勤時に電車に乗る人は、利用する路線の混雑率を確認しておくとよいかもしれない。

混雑の「見える化」が広がっているが…

 新型コロナの感染防止策の意味も含めて、鉄道各社は混雑状況の見える化に取り組んでいる。

 東京圏では、JR東日本がスマートフォンアプリで電車の混雑情報を提供するサービスを7月15日より開始している。これは、混雑状況を5つの段階で表示するものだ。山手線では車両ごとにほぼリアルタイムの情報、その他の東京圏のほぼすべての線区では、編成ごとに約5分前の情報を表示している。

 また、東急、小田急、京急などの大手私鉄でも、ホームページやアプリで駅や電車内の混雑率を公表するようになっている。こうした動きが、全国に広がっていくことを期待したい。今後は、電車に乗るときは、スマホのアプリで混雑していな編成や車両を調べることが、当たり前となっていくかもしれない。

 ただ、多くの乗客がアプリを見て、混雑していないと表示されている車両に移動するようなことが起これば、そこに新たな“密集”が生じてしまうかもしれない。アプリ情報の上手な活用方法については、さらに考える必要があるだろう。

新幹線で100%以上の混雑とはどんな状態か

 つぎに、帰省時の列車の混雑について考えてみよう。新幹線などの特急列車の場合、混雑状態は、座席数に対する乗車人数の割合である「乗車率」で表す。乗車率100%は座席が全部埋まる状態だ。立席特急券の販売がない全席指定席の車両では、乗車率が100%を超えることはない。

 お盆や年末の帰省時には、新幹線でも乗車率が150%を超えることがある。これは通路やデッキに人が溢れかえり、トイレにもなかなか行けない状態だ。昨年末には、東海道新幹線の博多行き「のぞみ」が東京駅を出る時点で、自由席の乗車率が180%に達するケースがあったという。

 今年のお盆は、学校の夏休みの時期が8月中旬に限定されているケースもあるため、例年よりも休みの時期が分散されにくいといわれる。東京都などの呼びかけはあるものの、緊急事態宣言の出ていたゴールデンウィーク中に帰省・旅行をできなかった人が、お盆休みに実行するケースもあるとみられるため、日時によっては混雑が増す可能性もある。

新幹線での3密対策はどうすればよいか

 それでは、帰省時の3密対策はどうしたらよいか? 新幹線を例に考えてみよう。

 まず、意外に思われるかもしれないが、新幹線は空調や換気装置により、常に外気を取り入れる設計になっているそうだ。計算上、6〜8分程度で車内の空気は入れ替わることとされている。「密閉」については、ひとまず安心できそうだ。

 また、車内清掃作業では、殺菌効果のあるアルカリイオン電解水が用いられている。肘掛けやテーブル、ドアノブ、洗面台等は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を染み込ませた布での拭き取り消毒が行われているという。このように、座席や備品に付着するウイルスへの対策はできている。あとは乗客が石鹸での手洗いや咳エチケットをしっかりと行えば、「密接」についても対応できるだろう。

 問題は、車内の混雑、つまり「密集」をどう避けるかだ。現在、新幹線などの特急は「エクスプレス予約」「スマートEX」「えきねっと」などのネット予約サービスが充実している。これを利用すれば、シートマップをみながら密を避けて座席を指定することが可能だ。

 ただ、予約時にはすいていたはずだが、実際に乗車してみたら密集だったということも考えられる。その場合、(車両全体の空席状況にもよるが)車内で車掌に言えば、空いている席に替えてもらうなど、柔軟な対応がとられる場合もある。

 また、鉄道各社では、予約状況から混雑が予想される場合には、列車を増発して車内の密を避ける取り組みをとることも検討されているそうだ。

新幹線に乗るまでの密集も懸念材料

 さらに、今年は、新幹線に乗るまでの在来線での密集についても考えておくべきだろう。混雑率180%の、無理をすれば新聞を読める状態では、どうみても密集は避けられそうもない。混雑率150%の楽に新聞を読める状態でも、密集の懸念は残るだろう。

 周囲の人との間でソーシャルディスタンスをとろうとすれば、せいぜい混雑率100%程度までの電車で移動したいところだ。そのためには、通勤電車と同様にスマホのアプリなどを使って、混雑していな編成や車両を調べることも1つの策となるだろう。

 新型コロナの感染が拡大する中で、通勤電車や帰省時の混雑に対応するには、スマホのアプリやネットサービスなどのデジタルツールと、実際の混雑状態に応じた人々のアナログ的な柔軟性を総動員することが求められる。

 ウィズコロナでの新しい生活様式の実践が、この帰省時で試されることになりそうだ。