かつての営業スタイルに加えて、外国人向けの白タクも

 タクシー事業は、法律上「一般乗用旅客自動車運送事業」と定められていて、いろいろ厳しい規定がある。

 この法律に反し、二種免許を取らずに国土交通大臣の許可もなく、自家用車の白地のナンバープレートのクルマで送迎サービスを提供し、対価を得るのは「道路運送法」の違反行為。国土交通大臣の許可なくタクシー事業を行うと、「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」という罰則になっている(罰せられるのはドライバーだけで、乗客にはペナルティはない)。

 国土交通大臣の許可を得たタクシーは営業用の緑地のナンバーをつけているのに対し、上記の違法なタクシーは、白ナンバーの乗用車を使っているので「白タク」と呼ばれている。この白タクは、運転免許(一種)とクルマさえあれば、手っ取り早く稼げる副業としてかなり昔から存在し、深夜・終電近くになると、各地の駅前で白タクが目撃されていた。そうしたトラディショナルな白タクに加え、近年増えているのは、外国人観光客向けの「白タク」。

 羽田や成田、関空などの主要な国際空港を舞台に、年間3000万人を突破(2018年)した訪日外国人を相手に、中国系の白タクが急増中。

 これらの白タクは、事前にインターネットの「配車アプリ」を使って予約し、ネット上で支払いも完了。現場で現金でのやり取りは基本的に行わない。すでにかなり大きな規模になっていて、都内だけでも2000〜3000人の登録ドライバーがいるらしい。

 非合法の白タクなので、サービスも悪くぼったくられる心配もあるが、これら「配車アプリ」を使った新しいタイプの白タクは、ドライバーごとにレビューがつくので、ドライバーは評価を下げないようにサービス精神は旺盛のようだ。

中国人ドライバーが中国人観光客を乗せる白タクが急増中

 またメインターゲットの中国人からすれば、日本の正規タクシーより、中国語が話せるドライバーで予約も簡単という意味で、重宝している面がある。もちろん、白タクは違法行為なのだが、金銭授受の現場を抑えることはできないし、「トモダチを迎えにきた」と言われてしまうと、警察も取り締まりようがない……。費用は、正規のタクシーより高額なケースが多いようだが、単独ではなく複数で来日した外国人だとひとりあたりの負担はそれほど大きくはない。

 中国では、大手旅行代理店のサイトからも、これらの白タクが予約できるようになっていて、需要はまだまだ増えそうだ。

 ただし、白タクはあくまで非合法のタクシーなので、事故を起こしたときの保証や保険は当てにできないし、料金体系が確立している正規のタクシーとは違うので、ぼられる可能性も否定できない。警察や中国総領事館も白タクを利用しないよう呼びかけていて、摘発も行っているようだがいたちごっこは続いている。

 一方、アメリカなどではウーバー(UBER)などのライドシェアサービスが広がっており、国内でも今年に入り政府から「自家用車を用いた有償での旅客運送は、現在の制度を利用しやすくするための見直しが必要」という声も出ている。これから東京オリンピックに向けて有償運送業務ができる制度が拡大され、白タクが条件付きで一部解禁される兆しはある。