NTTドコモの心臓部「ネットワークオペレーションセンター」を取材!

NTTドコモが都内にある同社の「ネットワークオペレーションセンター(以下、NOC)」にて報道関係者を対象とした見学会を8月29日に開催しました。

NOCとは、NTTドコモが管理・運営している通信インフラを監視・制御するための施設です。日本は地震や台風、集中豪雨といった自然災害が多く、その発生のたびに通信インフラの寸断や途絶が起こりますが、そういった緊急事態に迅速に対応することもNOCの仕事の1つです。

昨年も9月5日とこの時期に同見学会を実施し、NOCの設備を紹介していますが、今回もそんなNTTドコモの通信インフラにおける心臓部とも言えるNOCの役割や内部の様子などを写真とともにご紹介します。


通信の安全性は管理スタッフによる多大な尽力によって成り立っている


■NOCの役割とは
はじめに、そもそも「通信サービス」とは一体何でしょうか。NTTドコモの場合、広域無線通信網を構築し、携帯電話などでの通話やインターネット接続サービスを可能とすることが最も理解しやすい部分ですが、ただ「電話をかければ繋がる」といったような単純なものではありません。

通信設備同士の応答を監視し、通信帯域の逼迫や輻輳が起こらないように制御する必要があります。そういった「裏方」の仕事は普段スマートフォン(スマホ)などを使ってる私たちはほとんど意識したことがないと思います。

NOCでは前述のように災害時などの緊急対応もしますが、多くの業務はこういった普段の通信を24時間・365日リアルタイムで監視・保守するところにあります。無線基地局とその制御装置の監視、バックボーンを監視するノード業務、それぞれの設備の通信状況を監視するリンク業務、輻輳の監視やトラフィックの迂回、通信経路の確保などを行うネットワークコントロール業務など、その内容は多岐に渡ります。


電話は「無線基地局→交換局→サービス制御局→相手先の交換局→無線基地局」を経て相手と繋がる。これら1つ1つを監視・制御するのがNOCだ



それぞれの装置や業務は緊密に連携しトラブルへの対応と快適な通信の確保に努めている


NOCは東日本地域と西日本地域に各1箇所あり、東日本は「NTTドコモ品川ビル」に、西日本は「NTTドコモ大阪港ビル」にあります。

2箇所にNOCが分散しているのは防災対策であり、東日本大震災のような超巨大災害などによって一方のNOCが機能不全に陥っても、もう一方のNOCで全国をカバーできるように設計されています。

そのため、ビル自体にも万全の防災対策が施されており、地震や停電以外に河川の氾濫にも耐え得る機能(防潮板など)を備えています。


NTTドコモ大阪港ビル(左)、NTTドコモ品川ビル(右)



NTTドコモ品川ビルは372基もの耐震ダンパーによる制震構造となっている



当然ながら停電対策の発電設備も完備


■大規模災害発生!その時、NTTドコモは……
同社がここまでNOCに重点を置く理由の1つには頻繁に発生する自然災害にあります。NTTドコモ品川ビルが竣工されたのは2003年であり、1995年に起きた阪神淡路大震災がその設立の大きなきっかけになったのは言うまでもありません。NOCを分散し、どのような災害が起きても通信の安全を確保する。それが通信インフラを背負う企業としての責務と言えます。

具体的には災害が起きた際に災害対策本部を設置し、移動基地局や移動電源車を手配。大ゾーン基地局や中ゾーン基地局を起動し通信が途絶した地域をすみやかにカバーする体制が取られます。

しかし東日本大震災では想定を超える被害が発生し、迅速な対応が取れなかった経験もあり、その教訓を活かす取り組みが現在は行われています。


ここ1年だけでも甚大な被害を出す自然災害はこれだけ発生している



昨年の熊本地震では24時間で全エリアのサービスを復旧させた



東日本大震災の苦い経験は教訓として確実に生きている


被災地での情報収集や早期支援なども重要な役割の1つです。情報収集では地震による崩壊や土砂崩れなどで道路が寸断されているケースも多く、そういった場合にはドローンなどによる空撮が大きな成果を上げています。

早期支援では各市町村の避難所へ携帯電話の無料充電サービスを配置したりケータイ相談会などを実施しています。


災害発生時は状況に合わせた適切な対応によって復旧させていく。そのための情報収集も重要な業務だ



今年7月に九州北部を襲った集中豪雨被害の様子。その情報収集にドローンが初めて投入された



沿岸部での災害には船舶基地局の投入も想定している



船舶基地局は道路寸断などに影響されず沿岸部の広い地域をある程度自由にカバーできる



また船舶基地局に移動基地局車両を積載し被災地域へ運搬できるメリットもある



自治体向けに販売されている災害時用のマルチチャージャーキット



最大10台の携帯電話を同時に充電可能



充電コネクターは各社のコネクターに対応している


また現在は技術検証段階ですが、ドローンを緊急基地局とする案も進められています。ドローンは現在目視外での飛行が認められておらず、また飛行時間も数十分程度と短いために実用化まではまだ遠い印象ですが、2018年には無人地帯での目視外飛行を、そして2020年代には有人地帯での目視外飛行も可能とする法整備が進められており、その活用性は十分にあります。

飛行時間については有線による給電で補うことが可能なため、高い鉄塔などを設置せずとも避難所をカバーできるピンポイント的な臨時基地局として期待されています。


現在、NTTドコモが所有するドローン基地局の実験機はこの1台のみ



飛行高度にもよるが、底面に設置されたアンテナによって半径50mから100m程度をカバーできる


■オペレーションルームに潜入!
それではいよいよネットワークオペレーションセンターの中枢、オペレーションルームに潜入です。

壁のない巨大な空間には所狭しと監視用モニターが並べられ、壁面にも巨大なモニターがびっしりと並べられています。モニターに映し出されているのは基地局や中継設備から送られてくる情報で、赤や緑などの色によってその状況がひと目で分かるようになっています。


東日本NOCでは260名、西日本NOCでは120名のスタッフが対応にあたる



表示情報はすべて機密であるため詳細はお伝えできない


縦4列×横9列、合計36面の壁面モニターで表示されているのはトラフィック情報で、もう一方の壁面には縦2列×横9列、合計18面のモニターによって同社が提供している「イマドコサーチ」などのサービス状況が表示されます。

またこれらの情報とともに全国の災害情報なども確認できるようになっており、災害と各種異常発生の関連性なども瞬時に判断できる仕組みとなっています。


同社サービスの運用状況を監視するブース



障害情報と災害情報を同時に把握することが重要。料理番組などはテレビ(TV)局が流す臨時ニュースの表示や放送が正しく行われているかを確認するために表示している



取材時、奇しくも九州北西部で地震が発生していた。情報の正確性と即時性が災害復旧のカギを握っている


西日本NOCでは担当スタッフが少ないことからノード業務やリンク業務などそれぞれの業務によって担当を分け、効率的に作業が遂行できる体制を整えているとのこと。東日本NOCではスタッフが多いこともあり業務を分けずすべてを統括して管理し各業務の連携を重視した体制としているそうです。

前述のようにNOCが行う業務のほとんどは非災害時の一般的な障害対応であり、約46万にも及ぶ各種設備の監視です。現在はこのオペレーションルームの設備で対応できていますが、今後5Gが実用化されると1つの基地局でカバーできる範囲が狭くなることから監視・制御すべき基地局数が数倍に跳ね上がることも予想され、現在爆発的に成長しているIoT市場とその設備の増加も含め、NOC機能の強化も検討しているとのことです。

■高品質な通信インフラを支える技術を知ろう
日本の通信インフラの品質が世界でもトップクラスであることは有名であり、これだけ自然災害の多い国でありながらその高い品質を常に維持し続けていることは冷静に考えても驚異的だと言わざるを得ません。

大手移動体通信事業者(MNO)各社がエリアカバー率を競っていた時代すら懐かしさを感じる昨今ですが、今回の取材日よって通信品質とは「電波が届けば良い」というものではないことを改めて認識させてもらえました。

今年の夏には横浜でスマホゲーム「ポケモンGO」のイベントが開催され、予想を超える集客によって通信障害が起きるなど、災害とは違った障害発生とその対応の遅れが指摘されました。同社としても時代が生み出す新たなコンテンツやブームにもいち早く対応しなければいけない点に苦労が垣間見えます。

普段私たちはケータイやスマホが世界と繋がっていることが当たり前のように感じていますが、その裏ではこのような努力が日々続けられていることを知っておくことも大切かもしれません。


通信技術の進化は止まらない。NOCも進化していく




記事執筆:あるかでぃあ


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