レスター・シティが来季残留を決めた。5月6日に行なわれたワトフォード戦を3-0で快勝し、勝ち点を43に伸ばした。この結果、レスターより1試合多く消化している降格圏の18位ハル・シティとの勝ち点差を9まで広げ、3試合を残して降格を回避した。2月上旬まで降格圏付近をさまよっていたことを思えば、まさかの「余裕を持っての残留決定」である。


相手ディフェンダーに阻まれて岡崎慎司はまたもゴールを奪えず 潮目が変わったのは、クラウディオ・ラニエリ監督の解任だ。クレイグ・シェイクスピア政権に移行してから、リーグ戦の成績は「7勝2敗1分」。破竹の勢いで勝ち点を重ね、暫定ながら順位を9位まで押し上げた。

 しかも、チャンピオンズリーグの「決勝トーナメント1回戦」と「準々決勝」を挟む厳しい日程だったにもかかわらず、驚異的なペースで勝ち点を積み上げた。試合後の岡崎慎司も、「怒濤の2〜3ヵ月だったな、という気がします。リーグ戦の最後まで(残留争いが)もつれる、と思っていたので」と心情を吐露した。

 日本代表FWは、さらに言葉を続ける。

「今までチームにいたコーチが、戦い方を元の形に戻してシンプルにした。結局、それが結果を残すことにつながった。(ラニエリ監督時代は)フラストレーションが溜まっていたわけじゃないけど、みんなが自信を持てなくなっていた部分があった。

(ラニエリ)監督も『どうしたらいいのか?』って悩んでいたところがあって、露骨に選手にも伝わっていた。それで、フロント(クラブ首脳陣)が『監督を代えなきゃ』と考えるようになったと思う。監督交代がひとつの起爆剤になった。降格していたら何も言えないが、結果として自分たちは降格しなかった。そこは胸を張っていいんじゃないか」

 しかし、質疑応答が岡崎自身に関する話になると、表情が曇り始めた。

 ワトフォード戦で2試合連続の先発出場を果たすも、得点はなく、シュートの数もゼロ。ゴール前に詰め、あとワンタッチできれば……という惜しいチャンスが2度あったが、いずれも相手選手に阻まれた。しかも、63分で途中交代。ピッチを去る際の悔しそうな表情が、消化不良の一戦であったことを物語っていた。

 今季の出場記録を紐解くと、リーグ戦の先発数は19試合。そのうちフル出場を果たしたのは、10月に行なわれたクリスタル・パレス戦の1試合しかない。残りの試合はすべて途中交代を命じられている。

 そこで、「1試合の平均出場時間」を計算してみた。先発19試合での平均出場時間は「約66分」。前半だけでの交代も少なくなかったラニエリ前監督時代は「約65分」で、シェイクスピア政権移行後は「約69分」と少しだけ伸びているものの、それでも60分台に突入すると交代になる確率が高まる。

 もはや見慣れた光景になりつつある65分前後の交代について、ワトフォード戦後の岡崎は次のように話す。

「(後半中盤の63分で交代だったが)『何回、このシーンを見てきたか』という……。プレーしていても、ボールを何度も追いかけるしかやることがないというか、『これでいいのか?』と思ってしまうことが多々ある。『このまま(ボールを)追いかけ回しても、45分が終わったらたぶん交代だろうな』とか考えてしまうので……。もちろん、(自分の)やることは変えないつもりですけど」

 レスターのストロングポイントは、岡崎を軸にしたプレッシングサッカーにある。前線から岡崎がプレスをかけ、敵のパスを乱したり、パスコースを限定したりすることで、後方部でボールを刈り獲ることができる。言わば、岡崎は戦術上のキーマンだ。

 しかし、チームに変化が必要になったり、リードされて追いかける展開になったりすると、真っ先に交代を命じられるのも岡崎だ。そこに葛藤がある。理由は、自分がストライカーであるとの強い自負。そして、戦術の要人でありながら、あっさりと交代させられることのやり切れなさだ。岡崎の頭には、さまざまな思いが交錯するという。

「やっぱり、もっと期待されたい。『お前は役割を終えたら、いいよ』みたいな感じになるのは嫌なので。そういう風に使われるのが一番嫌(苦笑)。そういう意味で、チームに自分の考えを話していきたいと思う。点を獲ったり調子がよかったら、『もっと(出場時間を)延ばしてほしい』と。やっぱり意志が、来シーズンは必要になってくる。それだったら、先発で使わないでサブに置いてもらったほうがいい。サブでもいいから『得点チャンスに決めてくれ』と言われたい。

 簡単に落として、守備をして。『なんか、このままで俺はいいのかな?』とか(思ってしまう)。FWってやっぱり、チャレンジしてナンボじゃないですか。『ミスしたら交代』という雰囲気になっていたら、やっぱり厳しいと思うんです。FWで大事なのは、自分がほしいところに何回も(パスが)くるかどうか。(パスが)通るか、通らないかというよりも、『あ、行ける』っていう感覚が必要になると思います」

 ストライカーというポジションは、試合のなかで消えていたとしても、勝敗を決める”一発”を決めさえすれば高く評価される。しかし、同じFWでも岡崎の立ち位置は大きく異なる。

 昨年9月のリバプール戦では、ミドルシュートを大きく外した直後に交代を命じられた。何度もチャレンジしてゴールの糸口を見つけていくFWとしては、こうした采配にやり切れなさを感じることだろう。また、岡崎の動き出しに合わせて味方から鋭いクロスが入ることもほとんどない。クロスの場合は、むしろ「自分から合わせにいってる」という。こうなると、ゴールを決める難易度はさらに上がる。

「結果が出れば僕もなんとでも言えるんですけど、結果が出ていないので。『得点感覚がなくなっているのでは?』みたいに言われてもしょうがないと思いますけど、自分のなかでは本当に、限界とまでは言わないけど、今できる最大の飛び込みを(ゴール前で)しているつもり。自分が自分に一番期待している。やっぱり、もっと期待されたい」

 選手交代時に岡崎が見せた納得のいかない表情──。守備だけをすればいいのか? だから後半途中で交代を命じられるのか?

 交代時にはスタンドからスタンディングオベーションが起きたが、その裏で岡崎は自問自答を繰り返している。

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