食品「日本一」競う自治体…「メディアが殺到して大々的に取りあげられる、土日は店の駐車場は県外ナンバーばかり」

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 毎年公表される家計調査を舞台に、ラーメンやギョーザなど食品の購入額トップを巡る自治体間の競争が熱を帯びている。

 「日本一」の称号は地域ブランディングの有効な手段となるためだ。郷土の誇りをかけ、多くの自治体がPRの旗を振る。

購入額順位 地域ブランド戦略に活用

 2025年の家計調査が発表された2月6日朝。山形市役所の会議室に佐藤孝弘市長と地元のラーメン店主らが集まった。総務省のホームページで「中華そば(外食)」の年間支出額1位を確認すると歓声が上がり、4連覇達成を祝うくす玉が割られた。

 山形市の1世帯当たりの年間支出額は2万5102円と、2位の新潟市(1万9073円)に1・3倍の差をつけた。この25年間で1位は21回と他を圧倒する。「『ラーメンの聖地、山形市』のブランドを、もっともっと強いものにしていきたい」。佐藤市長は満面の笑みで意気込んだ。

 家計調査は同省が全国約9000世帯を対象に毎月実施する統計だ。政令指定都市や県庁所在地の「2人以上の世帯」を無作為に抽出し、収入や支出、貯蓄などを尋ねる。その統計は賃金水準の策定や経済政策の需要予測などに用いられるが、食品別に支出額の順位を把握できるため、自治体が地域のブランド戦略に活用している。

 先駆けとなったのは宇都宮市だ。市観光MICE推進課によると、1990年に当時の観光係長がギョーザの年間支出額日本一に着目し、ギョーザを市の名物に掲げる街おこしを企画したのが始まりだという。

激戦のギョーザ

 しばらくは宇都宮市の天下が続いたが、2000年代に入ると、浜松市や宮崎市といったライバルが登場し、盛り上がりが加速した。浜松市では愛好家による街おこし団体「浜松餃子(ギョーザ)学会」が06年に発足し、ギョーザ販売店マップを発行するなどして宇都宮市を猛追。11年の調査で初めて宇都宮市を破った。宮崎市も21年に初の日本一に輝くなど、現在は三つどもえの争いを繰り広げており、発表の度に市民が盛り上がる姿は、毎年の恒例行事になっている。

 日本一の称号は観光誘客の大きな武器になる。浜松餃子学会の広報担当、花枝一則さん(58)は「1位になった瞬間メディアが殺到して大々的に取りあげられるようになった。今や土日のギョーザ店の駐車場は県外ナンバーばかり」と喜ぶ。浜松市や商工団体で作る協議会は浜松餃子を提供する46店を地図にまとめて紹介。25年に初開催された「浜松出世城ぎょうざ祭り」は2日間で計約2万人が訪れた。

食文化広める原動力 地方創生にも

 山形市では21年に新潟市に首位を奪われたのを機に、ラーメン店主がPRに乗り出した。市も23〜25年に総額約5100万円で広報活動を展開し、市民のラーメンの年間支出額は22年の1万3196円から25年はほぼ倍増。市内約10万世帯で10億円超の経済効果を生み出した計算になる。

 争いは他の品目でも勃発している。東北勢が強い「納豆」は水戸市が16年以来の首位を目指し、「納豆の消費拡大に関する条例」を22年に制定、7月10日を「納豆の日」としてアピールを強化。25年は福島市(7658円)と344円差の2位だった。昨秋には「焼き鳥」1位の青森市の西秀記市長に、2位の福井市の西行茂市長が挑戦状を渡して話題となった。

 学校給食のメニューに取り入れたり、地元学生が新商品を開発したりと、競争の熱は地域の食文化を次世代に受け継ぎ、広める原動力にもなっている。

 ご当地グルメに詳しい長野県立大の田村秀教授(行政学)は「旅行や通販で経済効果が見込め、地元の人が見過ごしていた地域の個性に気づくきっかけにもなる。まちづくりや地方創生につながる」と意義を語る。