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「おまわりさんに捕まるよ」
「刑務所に入れられてしまうよ」

道路に飛び出したり、友だちに意地悪をしたり……。小学校低学年や保育施設に通う子どもに対して、何度言い聞かせても効果がないと、ついこんな言葉を使ってしまう親も少なくないだろう。

もちろん、「いけないことなのだ」と危機感を持たせたいという思いから出る言葉なのかもしれない。だが、安易な“脅し文句”になってはいないだろうか。

未就学児を育てる会社員男性は、子どもに手を焼いた際、そうした言葉が頭をよぎることがあるという。しかし、「警察を怖がってしまって、トラブルに巻き込まれた際に子どもが助けを求められなくなると困る」と考え、口にしないよう意識しているそうだ。

少年事件を数多く見てきた専門家の目には、「警察に捕まる」といった叱り方はどのように映るのか。少年事件に詳しい元検察官の柴崎菊恵弁護士に聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●「閻魔さま」よりも現実味のある恐怖を植え付けていないか

小さな子どものしつけとして、「おまわりさんに捕まるよ」「牢屋に入れられるよ」「牢屋に入れられるとお父さん、お母さんに会えなくなっちゃうよ」といった発言をしたことがある親は少なくないと思います。

同じような文脈で、「嘘をつくと地獄の閻魔さまに舌を抜かれるよ」といった言葉が使われることもあります。

ただ、閻魔さまと違い、おまわりさんは子どもにとって身近な存在です。その分、より現実味のある“恐怖”として受け止めてしまう子どもも多いのではないでしょうか。

●本来は「親しみ」を込めた呼び名のはず

「おまわりさん」という言葉は、本来、警察官を親しみを込めて呼ぶ表現だとも言われています。

だからこそ、子どもがおまわりさんを「怖い存在」と思い込まないよう、保護者にはぜひ配慮してほしい。私はそう強く感じています。

●そもそも「低学年の子が牢屋に入る」はあり得ない

また、「おまわりさんに捕まるよ」「牢屋に入れられるよ」といった表現自体、幼い子どもに対しては不正確でもあります。

14歳未満の子どもは、仮に犯罪行為にあたることをしたとしても、刑事処罰を受けることはありません。少年法上の手続き(家裁送致や審判、保護処分など)の対象となることはありますが、刑法41条により刑事責任は問われないからです。

もちろん、警察官が事件を起こした子どもから話を聞くことはあります。

ただ、それは単に叱責するためではなく、「この子が事件を起こした背景に、家庭環境、生活環境、交友関係、性格など何らかの問題があるのではないだろうか」と考えながら、その子をより良い方向へ導こうとしている面もあるのではないかと思います。

●警察官の仕事は「逮捕」だけではない

改めて言うまでもありませんが、警察官の仕事は、人を逮捕することだけではありません。

警察法2条1項では、警察官の責務について「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持にあたること」と定めています。

実際、警視庁のサイトから、警察官の仕事として次のような活動が紹介されています。

・パトロールや巡回連絡といった防犯活動
・職務質問による犯罪検挙
・イベントでの警備
・災害時における被災者の避難誘導や救助活動
・殺人、強盗、詐欺、空き巣などの犯罪捜査
・防犯対策や少年の非行防止や健全育成などの地域活動
・いわゆる「トクリュウ」犯罪対策

これらはほんの一部にすぎず、その役割は非常に多岐にわたっています。

●「怖い存在」ではなく「守ってくれる存在」として

警察官は、私たちの身の回りの安全や地域の治安、そして子どもたちの未来を守るために働いています。

警察官の仕事を見てきた立場から、おまわりさんを子どもたちにとって「怖い存在」ではなく、「困った時に助けてくれる存在」として感じてもらえたらと思っています。

親子3人が死傷した栃木県上三川町の事件では、16歳の男子高校生4人が強盗殺人の容疑で逮捕されたと報道されていますが、人間関係などの原因から犯罪に巻き込まれたり、手を染めることにならないように、困った時に警察官に頼ってほしいです。

【取材協力弁護士】
柴崎 菊恵(しばさき・きくえ)弁護士
検事任官後、東京地方検察庁、千葉地方検察庁での執務を経て、2005年に弁護士登録(第一東京弁護士会)。顧問弁護士として学校法務、労働事件等を取り扱うほか、交通事故、刑事事件等も多数取り扱っている。
事務所名:ベルフラワー法律事務所
事務所URL:https://bellflower-law.jp/