【再審制度】法制度見直し巡り紛糾の末に政府の改正案を自民党了承…閣議決定経て今国会に提出する方針も課題残る
怒号が飛び交うほど紛糾してきた再審制度の見直しについてです。袴田巌さんの無罪判決を受け議論が進められてきましたが、13日、自民党の会合で刑事訴訟法の改正案が了承されました。ただ、課題も残っています。
袴田巌さんの無罪が確定したことをきっかけに、見直しの機運が高まった再審=裁判のやり直し。
その内容を盛り込んだ刑事訴訟法の改正案について国会提出前の事前審査を続けてきた自民党は、13日夜、政府が示した案を了承しました。最大の焦点となったのは検察官による抗告=不服申し立てを認めるかどうか。
「ほとんどの議員が(検察官の)抗告禁止と言っているにもかかわらず、それを全く無視をしている」
当初、政府案は検察官による「抗告」を認める内容になっていましたが、これに自民党議員が相次いで反発。
(自民党 井出 庸生 衆院議員)
「自民党は法務省のためにあるんじゃないんだぞ。国民のためにあるんだぞ。忘れるなよ」
法務省は修正を重ね、検察官による抗告=不服申し立ては「原則禁止」に。えん罪被害者を一刻も早く救済すべきと抗告の「全面禁止」を訴えてきた自民党内の声に法務省が一定程度応えたかたちです。
ただ、改正案には「十分な理由がある場合は抗告が可能」という例外規定も盛り込まれました。
(自民党 稲田 朋美 衆院議員)
「非常に私はまだまだ不十分だと思いましたけれども。了といたしました」
(自民党 井出 庸生 衆院議員)
「悔しくて泣いた人が何人かいた。私も含めて」
ただ、焦点となっていた検察官による「抗告」は再審開始が決定された後の話です。そもそも再審が“開かずの扉”とも言われてきた理由の一つが…。
(自民党 宮下 一郎 衆院議員)
「証拠開示のあり方等々については、まだまだ不十分」
「証拠開示」という手続きです。
袴田さんの場合、検察が犯行時の着衣とされた“5点の衣類”のカラー写真を新たに開示。ただ、衣類についた血痕の色に疑問をもった支援者が独自の実験を行い「衣類に赤みが残るのは不自然」と主張。この主張を裁判所が認めたことが袴田さんの再審無罪につながりました。
これまで証拠開示に関する明確なルールはありませんでしたが、改正案では証拠の開示が義務化されました。ただ、同時に盛り込まれたのが「目的外使用の禁止」です。
弁護士などが再審請求の手続き以外の「目的」で証拠を公開すると、1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金が科せられることになります。
自民党が了承した改正案の内容について袴田さんの姉・ひで子さんは…。
(袴田巌氏の姉・ひで子氏・93歳)
「神様がつくった法律ではない。人間がつくったもの。だから直せないことはない。そういう意味で抗告を禁止しないと、えん罪被害者は救われないの。いい証拠も悪い証拠も全部出して裁判をやらないと無理じゃないか。証拠は全部開示してもらわないと困る」
政府はあす15日、法案を閣議決定し、今国会に提出する方針です。
(スタジオ解説)
(徳増 ないる アナウンサー)
袴田巌さんの再審無罪がきっかけとなって実現した再審制度見直しの法案は、きのう13日、ようやくまとまりました。袴田さんの場合は、検察官による抗告により再審開始が決定されてから、実際に再審が開始されるまで9年かかっています。このように、今は再審開始が決定されても、検察官による抗告、不服の申立てを行うことが認められているのですが、こちらが原則禁止ということになりました。ただし、十分な理由がある場合は、抗告が可能という例外規定も盛り込まれています。津川さん、この抗告の原則禁止についてはどう評価しますか?
(レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏)
えん罪被害者を救済するという意味では、ここは一歩前進だと思います。ただ、再審開始そのものに、ものすごく時間がかかるという意味でいうと、ここだけで解決するものではないと思いますし、一方で、法務省側が大事にしているのが、裁判の確定性の担保、要するに一審、二審、最高裁とまでやって決まったものを、そう簡単にコロコロ変えていいわけではないですよね。これはこれで確かに大事だと思うんですが、やっぱり裁判官も人ですから、「間違いだ」というのが分かった時には、速やかに正していく。
これは、見直しを今、本当にどんどん進めていかなければならないところだと思いますね。
(徳増 ないる アナウンサー)
そうですね。一方、青山さん、今回、政府案に対して、与党の自民党から反対が相次ぐという異例の事態になりましたが…。
(コメンテーター 政治ジャーナリスト 青山 和弘 氏)
ここで自民党と法務省が折り合わなかった場合は、「もうこの法案の今国会への提出を見送ります」ってことになる瀬戸際まで来ていました。それでは一歩も進まないですし、その後、改正まで何年かかるか分からない。だから自民党側もこの辺りで妥協しなきゃいけなかった。その悔しさみたいなものが反対意見がまだ相次いでいる状態になったんだろうと思います。その意味では、これからの国会審議も大事だということは言えると思います。
(徳増 ないる アナウンサー)
そして、自民党内から異論が出たままとなっているのが証拠の開示についてです。現在、再審手続に関する証拠については、弁護士などが再審請求の支援者など第三者に開示できます。袴田さんの場合は、検察が5点の衣類のカラー写真を開示して、この証拠をもとに支援者が独自の実験を行い、検察の主張の矛盾点を指摘したことで、再審無罪につながりました。ただ、今回の改正案では、検察が開示する証拠については、目的外使用の禁止が盛り込まれました。再審手続以外の使用を禁止する、つまり支援者など第三者に証拠を開示してはいけないということになります。津川さん、これについてはどう思われますか?
(レギュラーコメンテーター 津川 祥吾 氏)
これはとても深刻な話ではないかなというふうに、よく指摘をされますよね。袴田さんの件でいえば、まさに無罪にならなかった可能性があるわけですから、証拠はしっかりと開示をしていくべき。再審とはいえ、透明性を高めていくということが非常に重要になると思います。ただ、検察側としては、「そうすると証拠がそもそも出てこなくなるんじゃないか」ということを言っているんですが、ここは、証拠はもっともっと出していくというのが、今の現状で間違いないと思いますけどね。
(徳増 ないる アナウンサー)
再審制度はようやく見直されようとしていますが、まだ課題も多く残されていて、えん罪被害者の早期救済に向けた、さらなる議論が必要といえそうです。
