「2年目のジンクス」は時代遅れか…若手スターが苦しまない“新常識”
プロ野球ではよく「2年目のジンクス」と言われる。ルーキーなど活躍した若手選手が翌年に苦戦するというもので、過去にもこのジンクスにはまった選手は少なくない。では昨年ルーキーで活躍した選手の現状はどうなのだろうか。(成績は5月6日現在)【西尾典文/野球ライター】
【写真】「長打力をどこまで伸ばせるかが課題」ロッテ・西川史礁選手の姿
魔球と言っていいボール
まず昨シーズン、新人王に輝いたのが荘司宏太(ヤクルト)と西川史礁(ロッテ)である。荘司は45試合に登板し、2勝 28ホールド、防御率1.05とセットアッパーとして見事な成績を残した。今年最初の登板となった3月29日のDeNA戦こそ1イニングで3安打を浴びて1失点を許したが、その後は安定した投球を続けている。ここまで11試合、10回1/3を投げて16奪三振、防御率1.74をマーク。ブルペンを支える存在となっている。そんな荘司の武器について、他球団のスカウトはこう話す。

「とにかくチェンジアップは魔球と言っていいボールですね。目いっぱい腕を振ってもボールが来ない。スピードと落差も上手く使い分けています。短いイニングならプロでも通用すると思っていました。ここまでは思った通りですね。社会人でもリリーフ専門だったので高くは評価しづらく、下位で狙っていた球団も多かったと思います。3位で指名したヤクルトの作戦勝ちと言えるでしょう」
チームは昨年の最下位から一気に浮上し、首位争いを演じている。今後も貴重な左の中継ぎとして期待は大きい。
一方の西川は昨年の開幕当初こそ打率1割台と低迷したものの、6月以降はヒットを量産。最終的にルーキー最多となる117安打を放ち、リーグ6位の打率.281を記録した。2年目の今年は開幕から中軸に定着。4月15日の日本ハム戦では今季第1号ホームランを含む4安打を放つなど、ここまでリーグ7位の打率.286をマークしている。そんな西川について他球団のスカウトに聞くと、こんな話が返ってきた。
「打球を上げるのは上手かったですが、プロのレベルになるとそこまでスイングスピードや打球速度が突出しているわけではなく、正直1年目からもっと苦しむと思っていました。実際、昨年の開幕当初はなかなか打てませんでしたよね。そこから二軍で自分の打撃を見直したそうで、上手く変化できる対応力がここまでの成績に繋がっているように思います。ただチームに期待されているホームランはまだ少ない。ここから確実性を維持したまま長打を増やせるかが課題となるでしょう」
高い打率を維持しているだけに、今後は長打力をどこまで伸ばせるかも大きなテーマとなる。
プレーに安定感が
惜しくも新人王は逃したものの、パ・リーグで強いインパクトを残したのが宗山塁(楽天)と渡部聖弥(西武)である。宗山は負担の大きいショートを守りながら112安打、打率.260を記録してベストナインを受賞。渡部も怪我による離脱がありながら110安打、12本塁打、打率.259をマークした。
2年目の今季も渡部は中軸を任され、ここまで33試合で37安打、4本塁打、打率.280と、いずれもチームトップの数字を記録している。一方の宗山は、3月20日の巨人とのオープン戦での走塁で左手首を痛めて長期離脱を余儀なくされた。復帰が待たれる。
そんな渡部について他球団のスカウトはこう話す。
「大学時代からとにかくプレーに安定感がありました。リーグ戦で出塁のない試合はほとんどなかったと思いますし、守備での貢献度も大きかった。全国大会や大学日本代表でも常に結果を残しています。少しバットが外回りするようなスイングですが、それでも対応力が高い。反応や読みが鋭いのでしょう。打線が課題だった西武に入ったことも本人にとっては良かったと思いますね」
5月6日のソフトバンク戦では初の満塁ホームランを放ち、チームの大勝に大きく貢献。既に打線には欠かせない存在となっている。
その他では昨年先発として5勝をマークした伊原陵人(阪神)が今季も既に2勝を挙げたが、その後に腰を痛めて離脱。昨年中継ぎで41試合に登板し、今年から先発に転向した岡本駿(広島)も5試合で1勝、防御率1.48と安定した投球を続けている。
2年目の壁を乗り越えた先に
怪我による離脱を除けば、2年目のジンクスに苦しんでいる選手は少ない。むしろ昨年以上の存在感を示している選手が目立つ。その背景について、ある球団のアナリストはこう話す。
「昔と違って今はプレーに関するデータ量が多く、弱点もすぐに分かるようになりました。弱点が分かれば徹底して攻めるのがプロですから、2年目を待たずに苦しむ選手もいます。逆に言えば、1年を通じて結果を残した選手は既にそれを乗り越えているとも言えるでしょう。またデータを活用してさらに成績を伸ばす選手も出てきます。自分の武器や弱点を把握しながら対応できるかという点が、以前より重要になっていることは確かでしょう」
今は2年目を待たずに徹底マークされる時代だ。それを乗り越えてきた選手は、既にプロで戦い続けるだけの強さを備えているとも言える。“2年目の壁”を越えた先に、球界を代表する存在へ成長する選手が現れても不思議ではない。
西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
デイリー新潮編集部
