カタールとの初戦で2ゴールを挙げた北原。(C)AFC

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[U-17アジア杯]日本 3−1 カタール/5月5日/King Abdullah Sports City Pitch C Future

 これぞ10番の仕事だ。風上を取った前半に先制を許し、U-17日本代表には重苦しい雰囲気が漂う。そうした嫌な流れを断ち切ったのがMF北原槙(FC東京)だった。

 5月5日、U-17ワールドカップの最終予選を兼ねたU-17アジアカップサウジアラビアのジェッダで開幕し、小野信義監督が率いるU-17日本代表は、グループステージ初戦でカタール代表と対戦。徐々に主導権を握ったものの、25分にCB熊田佳斗(大宮)が自陣でボールをロストしてしまう。そのままショートカウンターを仕掛けられ、先制点を奪われた。

「自分たちのミスから失点して、やばいなって思った。ただ、前半の戦いを見ていたら、絶対に後半いける」とキャプテンのCB元砂晏翔仁ウデンバ(鹿島)が明かした一方で、焦りがあったのも事実。17歳でまだまだ経験が浅く、子供から大人へ成長していく過程の選手たちにとって、大事な初戦で背負ったビハインドは少なからず動揺を生んだ。

 だが、下を向いている時間はない。グループステージで上位2か国に入らなければ、今秋にカタールで開催されるW杯に出場できないため、初戦の結果は大きな影響を及ぼす。0−1でロッカールームに戻ってきた選手たちはハーフタイムに言葉を交わし、ゴールを奪うための方策を再度確認して後半のピッチに飛び出した。

 勝利のために――。覚悟と決意を持って臨んだなか、チームを救ったのがエースの北原だ。J1最年少出場記録を持つチームの10番は、51分にまずはFKで魅せる。正確な右足のキックでファーサイドの元砂に合わせ、FW齋藤翔(横浜FCユース)のヘディング弾を演出した。

 これで勢いに乗った北原は3−4−2−1の左シャドーで躍動。得意のドリブル突破と左右の足からパンチの効いたシュートを打ち込んで相手の脅威となった。周りを使うタイミングも抜群で自らが囮になりつつ、左CBのエゼモクェ・チメヅェ海(C大阪U-18)や左ウイングバックの木村風斗(川崎U-18)を巧みに使って攻撃参加を促した。
 
 以降も攻撃を牽引すると、70分にゴール前で相手のクリアに反応した北原は、頭で逆転弾を奪う。そして、圧巻だったのが76分の一撃だ。ハーフウェーラインを越えたあたりでボールを受けると、左サイドをひとりで突破する。一旦スピードを落として相手と駆け引きをすると、近寄ってきた瞬間にスピードを上げて振り切り、最後は左足を一閃。強烈な一撃が逆サイドネットに突き刺さり、勝負を決める3点目をねじ込んだ。

「もう最高です」と笑顔を見せつつ、「自信を持っているんで、迷いなく振りました。狙い通り」と3点目のゴールを振り返った北原。小野監督も試合後に賛辞を送り、「北原に『助けてもらった』って言ったら、ニヤって笑っていました。でも、一番良かったし、ゴールを取った以外のところも」と攻守で奮戦した10番の仕事ぶりに目を細めた。

 昨秋のU-17W杯は飛び級でメンバー入りしたものの、直前の怪我で開幕前日に負傷離脱。悔しさを持って自らの代でのリベンジを誓っていた。しかし、今年2月のアルゼンチン遠征では強度の高い相手に苦しみ、小野監督も「物足りなくて、まあまあ言いました」と振り返るほどだった。

 特に課題を突きつけられたのは、守備の部分。プレスバックは悪くなかったのだが、自分の頭を越えていくようなボールに対する守備や、ふとした瞬間に休んでしまう癖が顔を覗かせていたという。攻守において連動することを含め、北原はプレーを改善。このカタール戦もゴールばかりに目がいくが、守備での貢献度も高かった。

 命運を握るエースの活躍はチームにとってプラスの要素。W杯出場を目ざす若き日本代表を支える北原の一挙手一投足から、今後も目が離せない。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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