人のために頑張って自分のことが後回し…「自己犠牲タイプ」がやりたいことをやるために自分の時間を取り戻す方法
会社や家庭、誰かのために奔走して一日が終わる。自分のことを後回しにしがちな人はいないだろうか。そうした人は、どうすれば自分の時間を作ることができるのか。その具体策を認知行動療法を専門とする臨床心理士の中島美鈴さん(中島心理相談所代表)に教えてもらった。
自分さえ我慢すれば…は続かない
誰かのためなら頑張れるのに、自分のための行動には、いまいちやる気が起きない。そんな話を聞くことがあります。自分のために頑張れないという人にはいくつかのタイプがありますが、中でも多いのが「自分さえ我慢すればその場がうまく収まる」と考える自己犠牲タイプです。
こうした方は空気を読みすぎる傾向があり、自分を後回しにしがちです。この姿勢を続けると、心身の調子を崩しかねません。ずっと我慢していた分、突然「もう、いい加減にして!」と爆発するケースもあるでしょうし、さらに悪いケースでは、自分より立場の弱い、例えば子供などに八つ当たりすることもあるでしょう。
to doリストよりもご褒美リストを
自分を後回しにしがちな自覚のある人に提案したいのが「ご褒美リスト」です。
片付けるべき用事や仕事などを記す「to doリスト」は有名ですが、ご褒美リストには「自分の気持ちが高まる事柄」を記します。例えば、あの映画を観に行こう、あの店のランチを食べよう、美容院に行こう、カフェで読書しようなど。 私自身も1週間が始まる月曜日に必ずふせんに書き込んでいます。
ご褒美リストを作ったら、各項目をすべてスケジュールに入力しましょう。自分の時間を予約するのです。その後はいくら友達から誘われても、家族から用事を頼まれても、よほどのケースではない限り、自分の予約を優先してほしいのです。
例えば、その週の土曜の午前中に「いつものカフェで読書」と入力した後、友人から勉強会に誘われたとします。読書はいつでもできるし、予定をずらせばいいと考えるかもしれません。しかしそこは、相手を優先したくなる気持ちをぐっと抑えて、VIPと約束しているのだ、くらいの気持ちで自分の予定を守ってください。
これは、仕事のto do リストに対しても有効です。
例えば「来週始まるプロジェクトの資料を作るため、明日の午前中は絶対に作業時間を確保したい」「新しい企画を考えるために、自分のゴールデンタイムの10〜11時は予定を入れたくない」など、自分の中で予定が決まっているならば、共有カレンダーなどでしっかり時間をブロックしておきましょう。
これはストレスマネジメントにおいても有効です。実際に心理学の研究でも、仕事の時間を自分でコントロールできている感覚があるほど、仕事のストレスが低くなるとの結果が出ています。
予定は「終わり」の時間を決める
予定を入れすぎてしまって上手に休めないという人は、24時間の縦軸になったバーチカルのスケジュール表を活用しましょう。その予定が何時間で終わるのか、縦軸で入力して把握するのです。
例えば、友達とのランチの予定は何時に終わるかわからない、という人がいますが、私自身は必ず事前に終わりの時間を決めるようにしています。私はよく、休日の朝8時から友達とモーニングをするのですが、10時にはヨガのクラスの予約を入れるので、それに合わせて9時半までといった感じで約束します。友人からも「予定が組みやすくて助かる」と好評です。
また、予定がぎっしり入ってないと不安になってしまう、という人もいますよね。一人で過ごすよりはマシだからと、どんどん誘いにのるケースです。こうした方に振り返ってみてほしいのですが、本当は気乗りしなかった集まりの後って、どっと疲れると思いませんか。例えば、久しぶりに会った友達と話が弾まず気疲れしてしまい、その後、体調が悪くなってしまったことはなかったでしょうか。そのような感覚をよく覚えておいてください。体は正直です。
こうした気づきを次に活かして、本当に会いたい人だけに時間を使おうと考える。この考え方が自分を優先することにつながります。そして、こういう時こそ、ご褒美リストの出番です。仕事や家事などやるべきタスク以外に、気分の高まる予定がたくさんあれば、気の進まない予定を入れる隙間はありません。
自分が時間管理王国の王様になる
リストを作ってスケジュールを確保しても、やはり友人からの誘いや仕事の依頼を断れないという人はいるでしょう。
私自身は、相手を優先しそうになる時には、自分を叱咤激励するためにこう考えています。「自分を大事にしてくれる人は、世界中で自分以外に現れないんだよ」と。
他人は皆、やはりその人自身が一番可愛いのです。自己犠牲を続けていれば、いつか誰かがそんな自分をちゃんと見ていてくれて、自分を優先してくれるはず、などと期待しても残念ながら誰も見ていないのです。自分が、自分自身の時間管理王国の王様にならないといけません。他人優先を続けていては、ずっと家来のままなのです。
いつか行ってみたい場所、いつか挑戦してみたい仕事、それはいつ実行する予定なのでしょうか。まずはご褒美リストを作ってみましょう。そして、自分優先の人生を取り戻しませんか。
中島美鈴(なかしま・みすず)
臨床心理士。公認心理師。心理学博士(九州大学)。専門は時間管理とADHDの認知行動療法。
構成=高木さおり
