腎臓病・甲状腺疾患の人必見。「納豆」の食べていい量と避けるべきタイミング 【医師解説】

腎臓の機能が低下している方にとって、納豆に含まれるカリウムやリンは体内に蓄積しやすく、健康上のリスクになる場合があります。また、甲状腺疾患を抱えている方は、大豆イソフラボンが甲状腺の働きや治療薬に影響を与える可能性があります。それぞれの疾患と納豆の関係について、具体的に解説します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

腎臓病の方と納豆:リンやカリウムの過剰摂取に注意

納豆はタンパク質が豊富で栄養価が高い食品ですが、腎臓の機能が低下している方にとっては、摂取に注意が必要な食品の一つです。腎臓は、血液をろ過して体内の老廃物や余分な水分、ミネラルを尿として排泄する重要な臓器です。腎機能が低下すると、これらの物質を十分に排泄できなくなり、体内に蓄積してさまざまな健康問題を引き起こすため、食事管理が治療の重要な柱となります。

腎臓病における食事制限の基本

慢性腎臓病(CKD)の患者さんは、病気の進行度(ステージ)に応じて、タンパク質、カリウム、リン、塩分といった栄養素の摂取を制限する食事療法が必要になることがあります。納豆は、良質な植物性タンパク質の供給源であると同時に、カリウムやリンも比較的多く含んでいるため、これらの制限が必要な方にとっては注意すべき食品となります。特に、タンパク質制限がある場合、納豆の摂取はその制限値に大きく影響します。

腎機能が低下すると、食事から摂取したカリウムやリンを尿中に十分に排泄できなくなり、血液中の濃度が異常に高くなることがあります。高カリウム血症は、不整脈や心停止といった命に関わる心臓の合併症を引き起こすリスクがあります。一方、高リン血症は、骨がもろくなる、血管が石灰化して動脈硬化症を進行させる、かゆみを引き起こすなど、長期的に身体へ深刻なダメージを与えます。これらのリスクを管理するため、腎臓病の患者さんは納豆を食べる量や頻度について、必ず担当医や管理栄養士の指導に従うことが不可欠です。

透析を受けている方への影響

腎機能がさらに低下し、血液透析や腹膜透析を導入している方では、食事制限はより一層厳格になります。透析治療によって体内に溜まった老廃物や余分なミネラルはある程度除去されますが、透析と次の透析までの間(非透析日)に食事から摂取したカリウムやリンは体内に蓄積し続けるため、日々の摂取量を厳しくコントロールする必要があります。

一般的な納豆1パック(約50g)には、カリウムが約330mg、リンが約95mg含まれています。これは透析患者さんの1食あたりの目標摂取量に対して、かなり大きな割合を占めることがあります。例えば、カリウムの1日の制限量が2000mg以下の場合、納豆1パックでその約1/6を摂取することになります。そのため、多くの透析施設では、納豆はカリウムやリンが高い食品として、食べることを控えるか、食べる場合でも少量にするよう指導されます。付属のタレにも塩分やカリウムが含まれているため、使用にも注意が必要です。透析を受けている方が納豆を食べたい場合は、必ず担当の医師や管理栄養士に相談し、安全な量や食べ方について具体的なアドバイスを受けてください。

甲状腺疾患の方と納豆:大豆イソフラボンの影響

納豆の原料である大豆には、「大豆イソフラボン」というポリフェノールの一種が豊富に含まれています。この成分は、女性ホルモン(エストロゲン)と化学構造が似ていることから、骨粗しょう症の予防や更年期症状の緩和など、多くの健康効果が期待されています。しかし、甲状腺の疾患を抱えている方にとっては、この大豆イソフラボンの摂取に注意が必要な場合があります。

大豆イソフラボンと甲状腺機能の関係

甲状腺は、喉仏の下にある蝶のような形をした臓器で、身体の新陳代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しています。一部の研究では、大豆イソフラボンが甲状腺ホルモンを合成する際に必要な酵素「チロイドペルオキシダーゼ(TPO)」の働きを阻害する可能性が示唆されています。この作用は「ゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)」様作用と呼ばれ、理論上、大豆製品を過剰に摂取することで甲状腺機能低下症の症状を悪化させたり、治療薬の効果に影響を与えたりする可能性が考えられています。

特に、自己免疫疾患である橋本病などが原因で甲状腺機能低下症と診断され、甲状腺ホルモン薬(チラーヂンSなど)を服用中の方は、大豆製品の摂取量について一度主治医に相談することが望ましいでしょう。ただし、通常の食事で1日に納豆1パック程度を食べるくらいであれば、臨床的に大きな影響が出ることは稀であると考えられています。問題となるのは、サプリメントなどで大豆イソフラボンを大量に摂取したり、極端に大豆製品に偏った食生活を送ったりする場合です。過剰摂取には慎重な姿勢が求められます。

甲状腺薬と大豆製品の飲み合わせ

甲状腺機能低下症の治療に用いられる甲状腺ホルモン薬「レボチロキシン(商品名:チラーヂンSなど)」は、食事の影響を受けやすい薬です。特に、大豆製品や食物繊維、カルシウム、鉄剤などと一緒に摂取すると、薬の成分がこれらと結合してしまい、小腸からの吸収が妨げられることが報告されています。薬の吸収が低下すると、体内で必要なホルモン量を維持できなくなり、治療効果が不安定になる可能性があります。

この相互作用を避けるため、レボチロキシンは通常、空腹時(食事の30分~1時間前、または就寝前など)に服用するよう指導されます。薬を飲むタイミングと、納豆を含む食事の時間をしっかりと空けることが、安定した治療効果を維持する上で非常に重要です。例えば、朝食で納豆を食べる習慣がある方は、起床後すぐに薬を服用し、朝食まで1時間程度間隔を空けるといった工夫が必要です。服用方法については個人差があるため、必ず主治医や薬剤師の指示に従い、大豆製品の摂取タイミングについても相談することをおすすめします。

まとめ

納豆は非常に栄養価の高い優れた食品ですが、すべての人にとって手放しで推奨できるわけではありません。
「食べてはいけない」のか、「注意すれば食べられる」のかは、個々の健康状態、病状、服用している薬の種類によって大きく異なります。ご自身の健康に関して少しでも不安や疑問がある方は、自己判断せず、まずはお薬手帳を持参の上、かかりつけの内科医、腎臓内科、薬剤師などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」