佐野晶哉×藤原季節の“新たな顔”が『風、薫る』を盛り上げる りんと直美の運命を変える2人に
NHK連続テレビ小説『風、薫る』第18話では、美津(水野美紀)にトレインドナースの道を大反対されたりん(見上愛)の前に、またもや“救世主”としてシマケン(佐野晶哉)が現れる。
参考:『風、薫る』第19話、りん(見上愛)が亀吉(三浦貴大)に離縁の意思を伝える
りんとシマケンの出会いは、りんが瑞穂屋で働きはじめて間もない頃。外国人の来客対応をこなそうと外国語を覚えはじめていたりんだが、まだまだ挨拶で手いっぱい。それなのに客から外国語でモーパッサンの詩集があるかを聞かれて困っていた時に颯爽とシマケンが店へやってきて助けてくれたのだった。のらりくらりとわかるようでわからない話し方をし、独特の雰囲気を持つシマケンだが、りんはそんな彼を興味深そうに見つめていた。
この日も、シマケンがモヤモヤを飛ばせる一馬力ならぬ、“一とんび”という言葉を考えたとりんに早口で力説。りんは少し怪訝そうな顔をしながらも楽しそうにシマケンが作ったとんびを改良していた。ちょっとやそっとのことでは動じないりんとシマケンは、ちょっと風変わりな者同士、相性がいいようだ。
りんは、実はナースになることを迷っていることをシマケンに打ち明ける。美津にはナースになる社会的意義を熱く語っていたが、予想外に強く反対されたことで少し考えが変わったようだ。シマケンは病弱だった幼少期に孤独を感じていたこと、そしてそれを救ってくれたのが夜中、熱が出た時に看病に来てくれたおばさんの手だったことを明かした。シマケンはその手を「冷たくて、あったかかった」と言った。熱がある身には、おでこに当てられる手は物理的には冷たい。そして「熱がまだあるかな」と心配してのその行動はとても温かい。看病する側、される側の姿と看護の本質を捉えた素敵な表現だ。
そう明かしつつ、シマケンはりんが「自分へ向けられる偏見」を怖れているのではないかと鋭く投げかける。この男は、ふわふわして優しいなと思っているとこうして核心を突いてくるから油断ならない。りんは戸惑っていたが、「無意識にあるのかも」とさらに言われて気がついたことがあるよう。シマケンと別れる頃にはどこか晴れ晴れとした顔をしていた。
一方の直美(上坂樹里)は鹿鳴館で出会った小日向中尉(藤原季節)の別の姿を垣間見る。いつも出会う中尉は詰襟の制服をきっちりと着ているが、見かけた彼は、着物をゆるゆると着崩していて、腕を組んできた女性と何やら親しげだ。
直美がカッとなって小日向を問い詰めると、彼はあっさりと自分が日々を食いつなぐために軍人のふりをしている“詐欺師”であることを明かした。さらに直美も嘘をついていることを指摘し、あろうことか「帰る家くらいは用意しておかないと。名前は札に合わせて名乗るのがいいよ」とアドバイス。その言葉に激昂する直美だが、小日向は臆することなく、今度は「直美さんも、親いないの?」とするりと人の懐の中に入ってくる。そして会った時に「どっか違う国、行ってみてえなあ」と言ったことは嘘だらけの詐欺師から出た言葉でも「本当のこと」だったと言った。やはり、本当の詐欺師というのはこれくらい人たらしでないと成り立たないのだろう。小日向は直美のことも詐欺師扱いしたが、逆に直美のまっすぐさが際立つようなシーンだった。
小日向と別れた後、直美はかんざしを折りながら涙を流していたが、その涙には騙された悔しさだけでなく、世の中に同じ気持ちを抱いていた人がいたという安心感のような別の気持ちが含まれていたように思われてならない。
りんがシマケンの言葉で自分の気持ちのモヤモヤが晴れたように、直美も小日向の本当の姿を見たことで心が決まった様子。捨松(多部未華子)に鹿鳴館を辞めることを願い出る。
自分の人生を自分の足で歩こうともがく、りんと直美。そんな彼女たちのそれぞれの運命をさまざまな形で左右していくシマケンと小日向。この4人の関係性の変化がこれからも気になってしまう回となった。(文=久保田ひかる)

