『サバ缶、宇宙へ行く』©︎フジテレビ

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 1960年代にNASAがアポロ計画を進めるにあたり、宇宙食の安全性を管理する目的で考案した食品衛生管理システム「HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point=危害要因分析・重要管理点)」。1990年代ごろから宇宙食以外の分野にも取り入れられるようになり、日本国内では2021年6月から食品を扱うすべての事業者に対してHACCPに沿った衛生管理が義務化されている。いまでこそ食品業界において広く知られたものとなっているが、2005年の、しかも高校生にはまるでイメージができないものであっただろう。

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 4月20日に放送された『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系)第2話は、このHACCPの認証を受けるための試行錯誤が描かれていく。前回のラスト、菅原(出口夏希)たちがHACCPについて話しているなか(断片的ではあるが、“くらげ豆腐”を商品化するために今後はHACCPの認証が必要になると授業でやっていたという話だったはずだ)で、“NASA”という言葉に著しく反応した寺尾(黒崎煌代)がぽつりと呟く「うちのサバ缶も宇宙へ飛ばせるんちゃう?」の言葉。それを受けて朝野(北村匠海)は、生徒たちにHACCP取得を呼びかけるのである。

 興味深いのは、原作のノンフィクション(すなわち実際の話)とは一連の“順序”が異なることである。原作では水産高校の名物であるサバ缶に磨きをかけるためにとHACCP取得を思い付く。専門家からの助言をあおり、通常であれば億単位の金額がかかるところを生徒たちの創意工夫をもって解決へ導いていく。その先でようやく「サバ缶も宇宙へ~」となっていったわけだが、ドラマでは「サバ缶を宇宙へ」という大きな話が先にあり、その第一関門としてHACCPの認証基準を満たすためのアイデアが発揮されていく。

 もちろんこれは、第1話で水産高校という舞台設定や小浜の町のロケーション、登場人物の配置などドラマとしての導入をひと通り描き切り、第2話から本格的に物語を動かしていくための脚色の策なのであろう。しかしながら、この順序になったことでHACCP取得へ向けた一連にも“宇宙を目指す”という壮大な夢へのモチベーションがプラスされることになる。さらにクラスに馴染めずにいた菊池(西本まりん)のエピソードが加えられることにより、クラス全体の一体感という非常にシンプルな青春ドラマのかたちが強化されるのである。

 今回のように、ひとつの大きな事象のかたわらで生徒1人1人にフィーチャーした運びをするのだろうか。そんなことを考えていれば、エンドクレジット後の次回予告で示されているのは“第1期”の生徒たちの卒業である。なんという速さだろうか、たしかに実話では13年かけて300名もの生徒たちがバトンをつなぐのだから仕方あるまい。どうやらその次回では朝野たちの水産高校と木島(神木隆之介)のいるJAXAとがようやく結びつくようでもあり、それを踏まえると、この第1期こそがひとつの大きな“導入”といえるのかもしれない。

(文=久保田和馬)