再雇用で給料が「30万→20万円」に減った夫。引き続き働くと“高年齢雇用継続給付金”が「月1万円」以上もらえると聞きましたが、同じ年収なら転職しないほうがいいでしょうか?
「高年齢雇用継続基本給付金」「高年齢再就職給付金」とは?
高年齢雇用継続給付金とは、60歳以降に賃金が大きく下がった人の家計を支えるために、雇用保険から支給される給付金です。60歳に達した後、再雇用や転職によって給与が下がった場合に受け取れます。
高年齢雇用継続給付金には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類があり、どちらの制度が適用されるかは、失業給付(基本手当)を受給したかどうかで決まります。
高年齢雇用継続基本給付金は、定年後に失業給付を受け取らずに同じ職場で働き続けている人や、失業給付を受給せずに他社へ転職した人が対象です。
高年齢再就職給付金は、定年退職後に失業給付を受給し、その後再就職した人が対象です。再就職日の前日時点で失業給付の支給残日数が100日以上残っていることが条件で、残日数が200日以上かどうかによって給付金を受け取れる期間(最長1年または2年)が異なります。
どちらにも共通する受給要件として、雇用保険に通算5年以上加入していること、60歳以降の賃金が60歳時点の賃金の75%未満に下がっていることが求められます。
各制度の支給率とは?
給付金の額は、各月に支払われた賃金に支給率を乗じて計算されます。支給率は、60歳時点の賃金と比べて現在の賃金がどれだけ下がったかによって決まります。賃金の下落幅が大きいほど支給率は高くなる仕組みで、2025年4月1日以降に60歳になった人には最大10%の支給率が適用されます。
2025年3月31日以前に60歳になった人には、旧制度の最大15%が適用されます。つまり、いつ60歳になったかによって支給率の上限が変わるため、夫の誕生日を確認しておきましょう。
今回のケースで試算してみましょう。夫の給与が30万円から20万円に下がったとすると、低下率は約66.7%になります。2025年4月以降に60歳になった人の場合、低下率が64%以下であれば最大10%(月2万円)が受け取れますが、66.7%という低下率は64%という水準をやや上回るため、支給率はそれより低くなり、支給額は約1万4540円です。
2025年3月31日以前に60歳になった人で、低下率が61%以下であれば最大15%(月3万円)が受け取れます。
転職するのと今の職場で働き続けるのはどちらがお得?
毎月の受取額だけを比べた場合、高年齢雇用継続基本給付金も高年齢再就職給付金も、支給率の計算式は同じです。2つの制度で同じ賃金であれば、月々の給付額は変わりません。
大きな差が生まれるのは、給付が続く期間です。高年齢雇用継続基本給付金は65歳になる月まで受け取れるのに対し、高年齢再就職給付金は失業給付の残日数に応じて最長2年間(残日数100日以上200日未満の場合は最長1年間)に限定されます。仮に夫が60歳から受け取り始めると、基本給付金は最長5年間受け取れる計算になります。
転職する場合は、まず会社を辞めて失業給付を受け取る期間が必要になります。失業期間中は給与が途絶え、家計への影響が避けられません。さらに、再就職先での賃金が現在より下がった場合、差し引きで損になる可能性もあります。
給付金の総額で考えると、今の職場で働き続けるほうが有利になるケースが多いといえます。転職は、給付金をもらうためではなく、現在よりもよい条件の職場に移れるかどうかを基準に判断するのが合理的です。ただし、転職先の賃金や就労条件が現在の職場よりも大きく改善される見込みがある場合は、現職継続が最善とはいえません。
まとめ
高年齢雇用継続給付金には、失業給付を受給せずに働き続ける(または転職する)場合の「高年齢雇用継続基本給付金」と、失業給付を受け取った後に再就職した場合の「高年齢再就職給付金」の2種類があります。どちらの制度が適用されるかは、退職後に失業給付を受給したかどうかで決まります。
支給率は60歳時点からの賃金低下率に応じて決まり、2025年4月以降に60歳になった人は10%が上限です。月々の給付額は制度によって変わりませんが、受取期間の長さには大きな差があります。
転職と現職継続のどちらが得かは、給付金の受取期間の長さに左右されます。現職継続なら65歳まで最長5年間受け取れるのに対し、再就職給付金は最長でも2年間に限られるため、給付金だけを考えると、転職を選ぶのは多くの場合、家計全体では不利になりやすいといえます。
出典
厚生労働省 第10章 高年齢雇用継続給付について
厚生労働省 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級
