なぜ「住宅地」だけが上がるのか…!今年の「公示地価」が暴いた「不動産二極化」の現実
「住宅地」価格の最新動向
マイホーム購入を検討するうえで、最も直接的に影響を与えるのは「住宅地」の価格動向であることは言うまでもない。最新の「公示地価」は、その住宅地の動きを把握するうえで重要な指標の一つである。
30年ぶりの「不動産バブル」という言葉がネット上に踊るいま、その変化をどう読み解くかが問われている。
最新の「令和8年公示地価」は、3月18日に発表された。
結果を見ると、「全用途平均」・「住宅地」・「商業地」のいずれも5年連続で上昇したが、実需と直接結びつく住宅地の動きが今回の特徴を最も端的に示している。住宅地は前年と同じ2.1%の伸びを維持し、安定した上昇基調が続いている。全用途平均も2.7%から2.8%へと拡大しているが、その内実は住宅地の底堅さに支えられている面が大きい。
とりわけ三大都市圏では住宅地の上昇が顕著であり、東京圏では前年の3.3%から3.5%へと上昇幅を広げた。住宅地の価格動向が、都市部への人口集中や居住ニーズの変化を反映していることがうかがえる。
筆者は近年、「稀立地(マレリッチ)」の動向を注視している。限られた供給に対して需要が集中する希少性の高い立地のことで筆者の造語だが、住宅地においてこうした稀立地をめぐる取引は年を追うごとに活発化し、需給の逼迫が続いている。
今回発表された公示地価においても、その傾向は住宅地のデータに明確に表れている。
全国の住宅地変動率の上位順位表を見ると、東京都港区港南3丁目が+22.2%と高い上昇率を示している。
利便性の高い都心アドレスにおける住宅地、とりわけ「稀立地」への需要集中は、前年よりも強まっている状況にある。
中国勢の後退も継続する「オーバーレジデンシズム」
その背景にあるのは、円安の進行により、日本の不動産が相対的に割安と見られ、海外からの投資資金が流入していることである。
もっとも、日々の取引の現場にいる私の実感としては、やや変化の兆しもみられる。
中国の景気動向や日中関係などを背景に、これまで市場を牽引してきた中国人富裕層の投資行動には、以前ほどの勢いは見られなくなっている。 しかしながら、海外資金全体としての流入は依然として底堅く、地価を押し上げる要因となっている。
このように実需以外の資金が市場に流入し、価格形成に影響を与えることで、居住目的の取得が難しくなる局面もみられる。
投機マネーが混入し、価格を過度に押し上げることで、本当に住みたい人が居住できなくなる――、これを私は「オーバーレジデンシズム」と名づけ警鐘を鳴らしてきた。
今回のデータはまさにその歪んだ構図が継続していることを浮き彫りにしている。
地価上昇の「光と影」
今回の公示地価の公表で新たに確認されたのが、特定地域における上昇だ。
一つは企業誘致やインバウンドの影響である。北海道千歳市では次世代半導体「ラピダス」の進出により、関連企業による不動産開発が進展し、商業地の上昇率で全国1位となる+44.1%(幸町3丁目)を記録した。
インバウンド需要に支えられる長野県白馬村は住宅地上昇率全国1位の+33.0%、北海道富良野市も同2位の+30.0%と、高い伸びを示している。
白馬村では、長期滞在型の海外富裕層を対象とした宿泊施設の開発が進んでいる。
もっとも、上昇率の高さはそのまま評価できない側面もある。
1平方メートル当たりの単価を見ると、白馬村は2万7,400円、富良野市は8万4,500円にとどまる。港区港南の226万円と比較すれば、いずれも絶対水準としては低い水準にある。上昇率と絶対価格の両面から評価する視点が重要である。
一方で、実需に基づく健全な地価上昇の例もみられた。
「子育てしやすい環境」を掲げる千葉県流山市では、市内複数地点で+15%〜+18.9%と高い上昇率を記録している。流山市は、共働き子育て世代をターゲットとした政策を継続しており、保育インフラや環境整備を通じて人口流入を促してきた。
生活環境の整備と不動産価値の向上が連動した例として位置づけることができる。
「地方の減速」―札幌、仙台、名古屋、福岡―
一方で、全国的に同様の上昇がみられるわけではない。
「地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)」の住宅地変動率は、全体で前年の7.4%から6.4%へと縮小した。
個別に見ても、札幌市は前年8.4%から2.9%と大幅に鈍化。
福岡市は9.0%から7.0%へ、仙台市も6.3%から4.3%へと、上昇率の縮小が確認される。
また、この傾向は地方四市に限られない。
名古屋圏においても、住宅地の上昇幅が前年の2.3%から1.9%へ、商業地も3.8%から3.3%へと縮小している。
愛知県全体(住宅地:2.3%→1.8%)、名古屋市(同:3.6%→3.1%)の動きを見ると、上昇基調は維持されているものの、その勢いは鈍化しつつある。
さらに下落率を見ると、地方の状況はより明確になる。
明暗くっきり…「二極化」が急激に進む地方
宮城県大崎市(住宅地▲5.5%)、北海道江差町・広尾町(ともに▲5.2%)など、下落幅の大きい地域も確認されている。
財務省の地域経済レポートによれば、過疎化や高齢化、商業機能の低下、人口減少といった要因が、地価下落の背景にあるとされる。
青森県弘前市では「大型商業施設の閉店やスーパーの撤退による中心部の商業地区の空洞化」、山形県酒田市では「既成商業地域における百貨店の閉業」が下落の引き金となった。
岩手県の久慈市や釜石市のように、「人口減少の進行」がダイレクトに地価を押し下げている事例も報告されている。
都心の稀立地やインバウンドリゾートが熱を帯びる一方で、実需や産業を失った地方都市の地価は容赦なく下落する。
二極化が鮮明になるなかで、私たちはいかにして住まいを選ぶべきなのか?
そもそも、この状況のもとでマイホームは買いなのか?
後編『湾岸タワマンに“異変”…!成約激減が示す「値上がりの限界」と住まい選びの新常識』で、選択肢を整理して、検討していこう。
