インフレ・株安を企業の成長に変える「意外な勝ち組銘柄」5選〈花王、バイセル、そして…〉

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4月から新年度がスタートする。2026年春闘の第1次集計(3月23日時点)によれば、回答を得た企業の賃上げ率は5.26%に達し、3年連続で5%台という歴史的な高水準を維持している。

一方で、家計を直撃する物価上昇も止まらない。コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)は前年比3%前後の上昇が続いており、日本銀行が掲げる2%の物価目標を一貫して上回る状況だ。

名目賃金(物価変動を考慮しない額面通りの賃金)は着実に伸びているものの、生活コストの増大が重くのしかかり、消費者の行動スタイルには明確な変化が生じている。具体的には、日々の支出を極限まで抑える「生活防衛」と、価値を認めたものには対価を惜しまない「プチ贅沢」という、極端な二極化現象だ。

「消費の二極化」が進展するなかで注目したいのが、インフレを適切に価格転嫁しつつ、圧倒的なコストパフォーマンス(費用対効果)で顧客の支持をつなぎ止めている企業だ。賃上げとインフレが同時進行する新年度以降は、株式市場における注目度がさらに高まるとみられ、長期投資の視点で向き合いたい。

花王〈4452〉

・3月27日終値6,147円 配当利回り(予)2.54%

日本を代表する日用品最大手の花王は、長きにわたるデフレ脱却を経て、真の成長フェーズへと回帰している。2025年12月期の連結業績は、売上高1兆6,886億円(前期比3.7%増)、営業利益1,641億円(同11.9%増)と、力強い増収増益を達成した。かつての同社は、シェア維持のために利益を削って価格を据え置く悪循環に苦しんだ時期もあった。しかし現在は、「アタック」や「ビオレ」といった強力なナショナルブランド(メーカーが全国展開するブランド)における値上げが消費者に浸透している。物価高を追い風にする価格転嫁力の高さが、利益の質を劇的に改善させている。

外部環境が不透明な局面においては、同社の盤石な財務基盤と株主還元への姿勢が最大の魅力となる。800億円規模の自己株式取得や配当支払いなど、年間1,751億円もの株主還元を実施しながらも、自己資本比率は56.7%と高水準を維持している。配当面では、2026年12月期に37期連続増配という驚異的な記録更新を見据えている。景気後退局面でも揺るがない「日本株市場の守護神的存在」と呼ぶにふさわしいだろう。

予想PER(株価収益率)は過去の推移から20倍から25倍が適正水準とされるが、インフレ耐性と還元姿勢が正当に評価されれば、上限の25倍を目指す展開も十分に期待できよう。

ALSOK〈2331〉

・3月27日終値1,247円 配当利回り(予)2.34%

物価高騰と社会格差の拡大が影を落とすなか、警備業界は「インフレ時代の防衛銘柄」として脚光を浴びている。防犯意識の高まりは法人需要にとどまらず、個人や富裕層へも波及しており、契約需要は右肩上がりの状況だ。2026年3月期の連結経常利益は515億円(前期比19.5%増)を見込み、4期ぶりに過去最高益を更新する勢いにある。売上高の大半を月次課金型の「ストック収益(継続的に発生する利益)」が占めており、景気変動に左右されにくい安定した現金創出能力は、不透明な経済情勢下で極めて堅牢なビジネスモデルといえる。

さらに、資本効率の改善に対する市場の期待も熱を帯びている。同社は現在、ROE(自己資本利益率)の向上に意欲を示しており、2026年5月に発表予定の次期中期経営計画が大きな転換点となる可能性が高い。現行計画の目標値である10%には未達であることから、蓄積したキャッシュの配分方針として、積極的な株主還元や成長投資が打ち出される公算は大きい。

また、人件費増をAI(人工知能)の実装で吸収しやすい点も魅力だ。AIによる監視業務の効率化や検知精度の向上は、業務の付加価値を一段と高めている。賃上げが進む中所得層以上の「安心への対価」を確実に取り込む構造を築き上げている。

パンパシHD〈7532〉

・3月27日終値983円 配当利回り(予)0.86%

「ドン・キホーテ」を核に快進撃を続ける同社もまた、インフレを成長のエネルギーに変える稀有な企業だ。過去10年で売上高は3.3倍、純利益は3.9倍と驚異的な成長を遂げ、22期連続増配を継続する「成長と還元のハイブリッド企業」である。2026年6月期もインフレ局面を味方につけ、コストパフォーマンスを重視する若年層から生活防衛に走る一般消費者までを全方位で取り込んでいる。

世界的なインフレ下で「日本発のグローバル・ディスカウントブランド」としてアジアや北米でも存在感を高めており、独自の仕入れネットワークがもたらす圧倒的な商品力は他社の追随を許さない。盤石な国内基盤に海外業態の爆発力が加われば、株価のさらなるステージアップも射程圏内だ。

さらに注目したいのが新業態だ。2026年3月に発表した新戦略「ロビン・フッド」は、長期経営計画の中核を担う食品強化型店舗だ。2035年6月期までに売上高6,000億円、営業利益360億円、最大300店舗を目指している。既存のスーパーマーケット業態との差別化を徹底することで、節約志向の高まりによる需要を確実に取り込む狙いだ。労働力不足や賃金上昇を背景とした小売業界の再編も、スケールメリット(規模の利益)を持つ同社にとっては、シェア拡大の絶好の機会となるだろう。

物語コーポレーション〈3097〉

・3月27日終値4,815円 配当利回り(予)0.83%

賃上げによる可処分所得(自由に使える手取り収入)の増加は、外食市場においても「プチ贅沢」という追い風を吹かせている。その受け皿として筆頭に挙げられるのが、「焼肉きんぐ」を中心に多角的な飲食チェーンを展開する物語コーポレーションだ。主力の焼肉業態では、単なる「安価な満腹感」ではなく、「手頃な価格での非日常体験」という独自の付加価値を追求している。高級専門店レベルの名物商品や豊富なサイドメニューをファミリー層が気兼ねなく楽しめる仕組みは、まさに令和の二極化消費のニーズを突いている。

また、卓越した業態開発力にDX(デジタルトランスフォーメーション)を融合させることで、インフレ下でも高い収益性を維持している点も注目に値する。焼肉業態で導入している特急レーンや自動案内システムに加え、「丸源ラーメン」や「ゆず庵」でも配膳ロボットやセルフレジを駆使し、上昇する人件費を巧みに吸収している。さらに、食材製造の内製化や独自の調達ルート開拓により、コスト管理と安定供給を両立させている点も強みだ。ROE(自己資本利益率)は予想ベースで約18%に達し、外食セクターのなかでも群を抜く資本効率の高さを誇っている。

バイセル〈7685〉

・3月27日終値6,310円 配当利回り(予)0.55%

物価高が家計を圧迫するなか、自宅に眠る「隠れ資産」を現金化したいというニーズが急速に拡大している。出張買取で国内最大級の地位を築く同社の2025年12月期連結経常利益は、前期比2.0倍の84.8億円と急伸した。続く2026年12月期も前期比41.4%増の120億円と、驚異的な成長スピードを見込んでいる。その源泉は「バイセル」と「買取福ちゃん」の2大ブランドを軸とした圧倒的な集客力だ。2025年12月期の出張訪問数は約44万件、グループ店舗数は490店と、業界内で突出した規模を誇る。

成長を支える構造的要因が、超高齢社会の深化に伴う「生前整理・遺品整理」需要の取り込みだ。着物や切手、骨董品といったシニア層の保有資産は膨大であり、今後も安定した供給源となる。また、M&A(企業の合併・買収)による店舗網の拡大や、自社ECサイト、海外販路の開拓など、買い取った商品を最適価格で売却するための「出口戦略」も極めて洗練されている。

リユース品に対する抵抗が少ないZ世代(20代前半から後半の層)の台頭も、生活防衛手段としての市場拡大を後押ししており、全世代を網羅する収益構造が確立されつつある。なお、同社は投資家層の拡大を目的に、2026年4月1日付で1株を2株とする株式分割を予定しており、「株価の求めやすさ」と「売買時の流動性」の向上が期待されよう。

「賃上げ」と「値上げ」が同時進行する現在の日本経済は、企業が真の稼ぐ力を試される試練の場でもある。コスト上昇を価格転嫁という形で顧客に受け入れさせ、なおかつ成長を続ける企業は、インフレ時代の勝者となるだろう。新たな年度の始まりは、インフレ耐性銘柄で攻めながら守るポートフォリオを構築する良い機会となるかもしれない。

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