KBOに挑む武田翔太が摂津・大隣から学んだ投球哲学 韓国野球の違いにも自然体で対応「うまく使えたら楽しい」

新天地の韓国でも自然体は変わらない 写真/球団提供
開幕を目前に控えた武田翔太の言葉には、余計な力が入っていなかった。
新天地は韓国KBOのSSGランダース。外国人選手という立場で、環境は大きく変わった。それでも、話の中心にあるのは、自分自身の感覚だ。
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「結構、楽しみにしてますね」
穏やかな口調でそう語る。今は日本にいた頃よりも、野球を楽しめているという。その理由は、長く付き合ってきた肘の不安が、ようやく消えたからだろう。
「去年と比べると、肘の状態はもう完全に治りました。何の不安もない。このオープン戦期間で『あ、もう完璧に大丈夫だ』と感じたので」
ここ数年、武田の中に“完全に不安がない状態”は存在しなかった。投げるたびに肘の感覚を確かめ、意識的にブレーキをかけながらマウンドに立ってきた。その時間を経て、今季は久々に“考えなくていい”状態でシーズンに入れる。
「ここ数年なかった感覚ですね。今は気負いもせず、気を抜きもせずという感じです」
KBOリーグでは外国人選手という立場になるが、「外国人の感覚でやってますけど、それがまたちょうどいい感じなんで」と、重荷にはなっていないようだ。ABS(自動ボール・ストライク判定)システムについても、戸惑いより興味が先に立つ。
「ゾーンがはっきりしてるから、高低差も使えますし、うまく使えたら楽しいピッチングもできる」
一方で、配球や試合運びについては冷静に見ている。韓国野球に触れる中で、日本との違いもはっきり見えてきた。
「ボール球を使う感覚があまりない。力で勝負することが多いですね」
だからこそ武田は、“崩す作業”を強く意識する。
「調子いいバッターって、逆方向への打球も打てる。バットが内から出るんで、ちょっとコネさせながら打ち取るというか。ヒットを打たれるにしても、右バッターならレフト方向に打たせる。その方が相手の調子は崩れやすい」
インコースを突き、揺さぶって、最終的に“コネさせる”。逆算して組み立てる配球だ。
「調子が上がりそうなバッターには、めちゃめちゃそれをやります。それができないと、後半に回ってきたときに普通にバーンと打たれるので、そこはめっちゃ気にしてます」
武田は1試合ではなく、カード全体に視点を向ける。3試合という単位で相手との対戦を捉え、後半に向かって打者を崩していく。その前提に立って配球を組み立てている。
「3試合で考えた時に、後半がきつくなる。だから、崩す作業をやらないといけない。KBO全体を見ると、チーム打率はそんなに大きな差はないんです。その中で、防御率が低いチームがリーグの上位に来ている。ピッチャーが抑えれば勝てる傾向がはっきりしている」
だからこそ、先発としての責任も明確になる。
「中継ぎが打たれるのは、結局先発ピッチャーの仕事をしてないから。自分だけ抑えてよかった、じゃないんです」
その考え方は、プロ1年目の経験に根差している。当時は「自分は何も考えずに投げていただけだった」と振り返るが、その裏では先輩たちが打線を“崩す作業”を積み重ねていた。

武田は摂津や大隣ら先輩から多くを学んだ(C)産経新聞社
「僕が1年目に8勝できたのも、摂津(正)さんと大隣(憲司)さんのおかげなんですよ。1試合目より2試合目、2試合目より3試合目の方がバッターって崩れるんで。だから3試合目に出てくる若いピッチャーが、あまり何も考えなくても抑えやすくなる」
今度は、自分がその役割を担う番だ。
「先発ピッチャー陣が組んでそれをできれば、2勝1敗でいける。2勝1敗でいけたら、最終的に優勝できる」
言葉の壁はあるが、「通訳が一番大変ですね。筋肉の名前とか分からないと話が進まない。だから、解剖学の本を買って勉強してるんです。プロやなって思いました」と信頼できる通訳もいる。家族も合流し、韓国での生活にも徐々に慣れてきたのか、「人がおせっかいで優しすぎる。子どもの足とか出てると、知らない人に普通に怒られて、直される」と文化の違いに笑いもこぼれた。
そんな中で迎える開幕戦、韓国での「最初の1球」については「全く意識はない」と即答する。
「僕的には、2勝1敗になった時に『はい、終わった』って感じでいいかなと思うんで。いつも通りの投球ができればいい。それだけです。良くも悪くもなく、それくらいが一番いい」
新天地でのシーズンに、気負いは全くない。流れを作り、次へとつなぐ。その役割を担う自覚とともに、武田翔太はマウンドへ向かう。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
