「支給額が減るからバイト禁止」生活保護世帯で育った18歳女性の苦悩。抜け出せない“貧困の連鎖”
儚さんは国立大学に見事合格したものの、彼女の前には数々の困難が立ちふさがった。
「役所の窓口に合格通知書を持っていって、コピーされて、役所の人は『はい、これ保険証。これで世帯分離しました』みたいなあっさりとした対応で、生活支援関連の説明はまったくなかった。私はそのとき初めて保険証を見たんです。生活保護世帯は保険証がないので何かわからなかった」
親元を離れ、下宿生活が始まった。世帯分離となった人の生活費や医療費は、生活保護費からは支給されないため、生活費はすべて自力で稼がなければならない。それに加え、国民健康保険料も支払わなくてはならない。
◆一番苦しいのは「親だから嫌いになれない」こと
それどころか、クレジットカードや携帯電話なども儚さんの名義で無断で契約され、30万円分のカード払いや未払いの携帯代の請求書が届いた。
「生活保護世帯の子供は経済的な問題だけでなく、虐待を受けているケースも珍しくありません。私の場合、奨学金があっても、親に取られてしまったので、奨学金が機能しないんです。それに、学費が賄えたとしても、生活費をつくるためにアルバイトをする必要があり、大学の学業と両立させる苦労は避けられない。そのせいで留年や休学になったら、奨学金は打ち切られてしまいます」
塾講師や水商売などのアルバイトで生計を立て、体調を崩しての休学も挟みながら、儚さんは6年かけて大学を卒業。今春、大学院への進学が決まった。
「生活保護を使って大学に通いたいと言っているわけではありません。何らかの事情で奨学金が機能せず、最低限の生活が維持できない大学生の選択肢としても生活保護があってほしいのです。生活保護があれば、万が一のとき安全な環境に身を置くこともできるし、病院にも行ける」
2人に共通するのは、経済的な困難だけではない。「親だからこそ嫌いになりきれない」という葛藤を抱えることだと、儚さんは語る。
「たとえ虐待されていたとしても、親は親なんです。親とのいい思い出もあるし、全部嫌いにはなれない。だから支援団体に繫げようとしても、嫌がる人が多いんです」
制度のはざまで、自力で生きるすべを探している。
【現役大学生 儚(@hknin)】
Xで弁護士同伴のお悩み相談会を運営。大学で貧困に関する研究を行っており、生活保護世帯で育った子供たちとの交流もある
※2026年3月24・31日合併号より
取材・文/週刊SPA!編集部
―[U35貧困の惨状]―

