実態は売れ残りの“在庫処分”…「純血猫譲渡会」の闇 それでも主催者が儲かるカラクリ
「子育てもひと段落して猫が飼いたいのですが、どうせなら保護猫をお迎えしたいなって。ネットで“純血猫専門譲渡会”というイベントを見つけたので、今度行ってみようと思っています」
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都内に住む50代女性は、目を輝かせる。彼女が見つけたというサイトを見ると、スコティッシュフォールドやマンチカン、ラガマフィン、ノルウェージャンフォレストキャットといった、人気種の子猫がずらり。
保護猫譲渡会といえば通常、野良猫や飼い主の事情で飼えなくなった猫たちを保護主から譲り受けるためのイベントを指す。必然的に成猫や老猫が多くなりがちだが、この「純血猫専門譲渡会」はさながらペットショップのサイトのようだ。ショップならば20万円、30万円といった値段で売られているような子猫たちが、どうして“譲渡”されているのだろうか。

譲渡会とは名ばかり
「色々な理由がありますが、いちばんは動物愛護法の規制強化が挙げられます。頭数規制であぶれた猫たちを“譲渡”と称して出しているんです」
こう話すのは、東京で保護猫の譲渡会を開催し、飼育放棄や多頭飼育崩壊などの救済、支援活動も行うグループ『しあわせにゃんこ』の代表者・山本紀之さん。
山本さんのいう規制強化は、2019年6月に始まった。『動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律』が公布され、以降、生後8週間未満の犬や猫の販売・引き渡しを禁止する8週齢規制や、ブリーダーやペットショップなど第一種動物取扱業で扱われる犬猫に対してのマイクロチップの義務化などが1年単位で段階的に施行されてきた。
そして、一昨年、第一種動物取扱業(ブリーダーやペットショップなど)が飼育できる頭数が従業員1人あたり、犬の場合は20頭、猫の場合は30頭と定められた。
昨年6月からは、ブリーダーなどからの譲渡が増加する可能性があるとして、愛護団体などの第二種動物取扱業もその対象となり、業界全体に数値規制が完全施工された。
「ここ最近、本当に『純血種猫専門』を謳った譲渡会が増えました。こういったものを運営しているのは、ほぼすべて繁殖業者などの2次団体。愛護団体のように見せかけつつ、その代表者がペットショップの社長だったケースもある。つまり頭数規制によって、ブリーダーやペットショップで売れなかった子や、健康でなく生まれた子が増えたため、譲渡という名目で“在庫処分”をするんですよ」(山本さん、以下同)
死後もフードが
確かに高値で取引されている純血種の子猫が譲渡されるとなれば、猫を飼いたい人は集まるだろう。しかし業者からしてみれば、利益がないように思えるが――。
「譲渡なので生体に金額はつけません。でも結局は、色々な名目をつけて費用を回収する狙いがあります。タチの悪いところになると、保険の強制加入や、5年間などの縛りのあるフード定期購入を条件にしているところも」
ショップがペット販売時に保険に強制加入させることは、抱き合わせ販売にあたり、独占禁止法で違反になる。ペットフードの定期購入に関しても、
「こういった譲渡会に出てくる猫たちは、ほぼすべて正規のルートで売れない、オークションに流せないような、疾患などの問題がある子がほとんどです。変な話、迎え入れた子が3年で亡くなってしまっても、フードは買い続けなくてはいけません」
団体側からしてみれば、売れなかった猫を無料で譲渡しても、保険会社やペットフードメーカーからのキックバックなど、ほかの部分で利益をとれるというわけだ。
「保護された猫たちを救いたい」――そんな気持ちで譲渡会にやってくる人たちを利用しないでほしい、と山本さん。
「疾患のある子たちだって、そこに命がある。百歩譲って、そういう子たちを譲渡するなら、相手に告知をすべきであるし、私たちと同程度のお金をもらうだけでいいはずです」
負のループ
山本さんのグループでは、ワクチンや避妊手術などをすべて行った上の譲渡でも、かかる初期費用は2万円ほどだ。一方、悪徳なケースだと、
「とある団体では、ノルウェージャンの子猫1匹に対して9万円を請求していました。それはもう完全にビジネスですよね。“譲渡会”という言葉で客寄せをする。譲渡会に行って実際に子猫をみると可愛いから、申し込む。そこで初めて、譲渡の初期費用の説明を受けるわけです。普通で買ったら30万円の猫ちゃん。でもここなら10万円。安いんじゃないかな……と考え、迎えてしまう家庭は多いでしょう。しかも、その団体には提携の動物病院もある。一般家庭よりずっと安く病院で診てもらえるし手術だってできるはずなのに、どうしてそんなに費用がかかるのか。問いただしたいです」
普通に考えれば、正規のルートで高く売られている「ブランド猫」が格安で手に入るには、それ相応の理由があるのが当たり前。だが、実際に出会った猫の可愛さを武器にされたら……愛猫家には抗いがたいものがあるだろう。
「そうして誰かがその子たちを迎えることで結局、彼らにとっての利益と在庫処分になり、また新たに商品として子猫を作り始めてしまう。負のループですよ。ペットショップにとってもブリーダーにとっても、猫はただの商品。繁殖させるだけの道具として扱われるケースが多すぎる」
もちろん、種を守るためにきちんとブリーディングをしている人たちもいる。しかし、猫たちを商品として扱っている業者がいることもまた事実だ。
『純血種猫の譲渡会』には、“在庫処分”の手段として、猫を愛する人々を利用している側面があった。
「愛護という言葉が、歪められているのがものすごく不愉快ですね」
山本さんはそうつぶやいた。
いちばんの被害者は、人間の都合に振り回される猫たち。迎える側の「ブランド猫」に対する過剰な思いも、業界の“闇”を深くしている原因の一つなのかもしれない。
取材・文/蒔田稔
デイリー新潮編集部
