「我々は団結意識がなかった」露フィギュアコーチが告白 目の当たりにしていた米女子金との“差”「リウのように楽しむのは不可能」

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金メダルを手にし、異彩を放ったリウ。そのパフォーマンスをロシアのコーチたちも賛辞を惜しまない(C)Getty Images

 この冬に世界で小さくない注目を集めた、ミラノ・コルティナ冬季五輪は、現地時間2月22日に無事に閉幕。過去最多6個のメダルを獲得した日本勢の躍動も目立ったフィギュアスケートでは、一人のヒロインの存在が大きな話題を生んだ。女子シングルスで金メダルを手にしたアリサ・リウ(米国)だ。

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 まさに氷上で踊るようなのびやかなパフォーマンスは、審判員だけでなく、大衆の眼をくぎ付けにした。

 とりわけ圧巻だったのは、メダルの行方が絡んだフリーでの演技。煌びやかな金色の衣装に身を包んだリウは、序盤からルッツ、トーループの連続3回転を決めるなど、高さとキレのあるジャンプを披露。2002年ソルトレーク五輪で金メダルに輝いたレジェンド、アレクセイ・ヤグディン氏が「ただただ滑ることを楽しんでいた」と絶賛した内容で他者を寄せ付けなかった。

 弱冠二十歳の天才がいかに図抜けていたかは、間近で目にしていた関係者の証言が如実に物語ってもいる。今大会に「個人の中立選手(AIN)」として参加が認められたアデリア・ペトロシアンのコーチとして帯同していた振付師のダニイル・グレイヘンガウス氏は、ロシア・メディア『Sport24』で「本当に素晴らしかった」と称えた。

 もっとも、指導も一筋縄ではいかなかった。グレイヘンガウス氏は「私たちにとって『祭典』と呼べるような大会ではなかった。我々はちょっと部外者のような感じで、いつものようにチームとして団結する意識がなかった」と吐露。AIN選手としての参加を余儀なくされた影響を明かした上で、「ここで勝つには奇跡が起きなければならないのは明らかだった。無数の要因によって100%、金メダルを手にできる可能性はなかった」と言及している。

 そうした中で、世界との“差”をより実感させたのが、リウだった。「彼女は本当に素晴らしかった」と振り返るグレイヘンガウス氏は、こう続けている。

「アリサは、『メダルは必要ない。楽しむためにここに来た』という姿勢が、あらゆる大会で勝利をもたらすことを改めて証明した。私の目にも彼女は素晴らしいものとして映っていたし、何か特別な要素があった。そして、実際に彼女のキャリアはとても興味深いものになった。彼女は称賛に値する人物だと思っている」

 さらに「ロシアの選手に彼女のように滑ることは可能か?」と問われたグレイヘンガウス氏は、「アリサの水準では無理だ」と断言。「あのリラックスした雰囲気とプロセスそのものを楽しむ感覚は、年齢、経験、そして大会数を重ねなきゃいけない」と分析した。

「国全体が、楽しむことじゃなくて、勝利を期待している。だからリウのようにリラックスした雰囲気で楽しむのは難しいと思うよ。ロシアの選手たちにとって唯一の選択肢は、何年も滑り続けること。本当に(リラックスして滑るというのは)難しいことなんだ。競争がすごく激しいからね。ちょっと気を抜いて、国内選手権で負けたら、ヨーロッパにも、世界にも、行けなくなる。私たちの育成システムでは不可能だ」

 五輪の大舞台で異彩を放ったリウ。そのパフォーマンスは、フィギュア大国でも衝撃を与えていたようだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]