高市首相に厳しい質問をするのは「イジワル」なのか 逆風からのスタートが生んだ“早苗推し”という社会現象の正体
第1回【「参政党」でも「れいわ」でもなく「高市首相」がSNSで独り勝ちした理由…有権者の心を鷲掴みにする「庶民宰相」との共通点とは】からの続き──。XなどのSNSには「日本人は批判されることに慣れていないのではないか?」という疑問の投稿が非常に多い。背景として「欧米のようなディベートの習慣も教育も欠如している」ことを理由に挙げる人が目立つ。(全3回の第2回)
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【写真を見る】「激ヤセ」が心配される高市首相 現在と比較すると「まるで別人」
細心の注意を払い、冷静で穏やかな口調で、理性的に問題点を指摘しても、相手は「自分を敵視している」と逆上してしまう──。SNSで特に共感を集めるのは「上司の建設的な注意」であるにもかかわらず、部下は「上司のパワハラ」と受け止めてしまう残念なすれ違いだ。

ところが最近、似た傾向が政治の世界でも認められるとの指摘が急増している。担当記者が言う。
「政治家に対する“真っ当な批判”が“誹謗中傷”に曲解される代表的な事例として、高市早苗首相に対する批判と反論が挙げられます。今回の衆議院選挙では、かなり早い段階から相当数の有権者が『野党は高市さんに対する揚げ足取りのような批判ばかりで、具体的な政策が何もない』と強い不満をぶつけていました。さらに選挙戦が終盤を迎えるにつれ、『野党は高市さんをいじめてばかりで、高市さんがかわいそうだ』と首相を擁護する意見が加速度的に増えていったのです」
確かに野党が批判しか口にしなかったのは事実だ。しかし「統一教会との関係について説明してほしい」という要望や「本当に消費税減税は可能なのか」という質問でさえ、「高市さんに対する不当な攻撃」と受け止めた有権者が多数存在したことも事実だ。
高市氏への「判官びいき」
経済ジャーナリストの志村昌彦氏は、心理学の専門誌の編集長を務めた経験がある。「高市さんに対する批判は許さない」という有権者がなぜ生まれたのか、“集団心理”の観点から読み説いてもらった。
「新聞社やテレビ局といった大手メディアは、2025年9月の自民党総裁選で高市氏の劣勢を伝えてきました。そして10月に発足した高市政権は“少数与党”でした。つまり高市さんは“逆風からのスタート”を余儀なくされたわけですが、こういう時は心理学で言う『アンダードッグ効果』が生まれる場合があります。分かりやすく日本語に訳せば『判官びいき』です。不利な状況に苦労している人を見ると、同情や共感の気持ちから応援したくなるという心理状態です」
誰に対してでも「アンダードッグ効果」が生まれるわけではない。高市氏が「判官びいき」の対象になったのは「コミュ力が強め」、「素敵なバッグ」、「私も同じボールペンを持っている」、「素顔は関西の飴おばちゃん」──などなど、マスコミが取り上げやすく、国民が興味を持つ話題が豊富だったことが大きい、と志村氏は指摘する。
感情的な高市擁護
「心理学では『単純接触効果』と呼びますが、『よく会い、よく見る人には親近感が強まる』という傾向が人間にはあります。少数与党で苦労していた高市さんに対する親近感から『判官びいき』の集団心理が働いたように思います。その後、あれよあれよという間に高市さんのファンが増え、いわゆる“早苗推し”が多数派を占めるようになると、今度は『バンドワゴン効果』が顕著になりました。『人気がある商品は私もほしい』、『行列ができる店は私も食べたくなる』という心理状態で、“勝ち馬に乗る”効果のことです。『みんなが高市さんを応援しているから私も応援する』という有権者は衆院選の後半になると特に目立ちました」(同・志村氏)
高市氏への批判に反発する有権者が少なくないのも、やはり「アンダードッグ効果」と「バンドワゴン効果」で説明できるという。
「高市さんを批判する野党、ジャーナリスト、元官僚などの識者・専門家、芸能人の言説はSNSを通じて拡散を続けました。最初に生じたのが『アンダードッグ効果』です。高市さんに対する批判を冷静に検証するというよりも、『袋叩きにされてかわいそう』、『首相なのに偉ぶらない、親しみやすい、いい人を叩くのはひどい』という感情的な擁護論が高まったのです」(同・志村氏)
高市旋風の原動力
「アンダードッグ効果」の次は「バンドワゴン効果」の出番だ。
「次第に高市さんを支持する層が増え、“アンチ高市”を批判するネット世論が主流派を占めるようになると、今度は『バンドワゴン効果』が生まれます。『みんなの意見を見ていると、やっぱり高市さんを叩くのは間違っているんだ』、『みんなと同じように私もXでリポストして高市さんを応援しよう』と“勝ち馬に乗る”人々が一気に増えたのです。今回の衆院選で吹き荒れた“高市旋風”は、『アンダードッグ効果』と『バンドワゴン効果』の強力なスパイラルによって誕生したと考えて間違いないでしょう」(同・志村氏)
とはいえ、世論の動向を見ていると「叩くと溜飲が下がる政治家」が存在するのもまた事実だ。「叩くことが許されない政治家」と「叩くと誰もが喜ぶ政治家」の違いはどこにあるのか。
第3回【高市首相「日本は強くなれる」が支持され、野田佳彦氏「民主主義が大きく後退する」が反発を招いた「集団心理」とは…野党がハマった“悲観的なメッセージ”の落とし穴】では、政治家の“ビジョン”が有権者に与える影響について詳細に報じている──。
デイリー新潮編集部
