image: CORNELL CHRONICLE

水陸両用どころの騒ぎじゃない。

アメリカ・コーネル大学の研究者グループが、水中でコンクリートを3Dプリントする技術を開発しています。

しかも使うのは、海底に沈んでいる堆積物(要は「海の泥」みたいなもの)がメイン。混ぜるセメントはそれほどたくさんいりません。

つまり、船で大量のセメントを運ぶ必要がなくなるかもしれない。それだけで海洋建設の常識がひっくり返りそうな予感がします。

「1年でやってよ」と言われたから、やってみた

きっかけは2024年秋、アメリカ国防総省の国防高等研究計画局(DARPA:ダーパ)が出した「挑戦状」みたいな募集でした。

「水深数メートルでも3Dプリントできるコンクリートを1年で設計せよ」

そこで手を挙げたのが、コーネル大学土木環境工学のSriramya Nair助教授のチーム。もともと約2,700kgもある産業用ロボットで大規模コンクリート構造物を3Dプリントする研究をしていました。

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「私たちが使っている混合物なら、少し調整すれば水に曝露し続ける環境でもいけるかも?」

と、そんなふうに実験してみたところ、なんと実現可能性が見えてきたと言います。 2025年5月には140万ドル(約2億2,000万円)の助成金を獲得。段階的にベンチマークをクリアしながら研究を進めています。

水中でコンクリートを積むのは、こんなに難しい

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陸上でも繊細な3Dプリント、水中になるとさらにハードルが跳ね上がります。

最大の敵は「ウォッシュアウト」。水中ではセメントの粒子がうまく結合せず、材料がバラバラになってしまう現象です。

通常は混和剤(添加物)で防ぐのですが、入れすぎると粘度が上がってポンプで送れなくなる。押し出した後に形を保ちつつ、層と層がしっかり接合しなければならない。こういったパラメーターのバランスが絶妙に求められるわけです。

さらにDARPAは短期間の開発だけでなく、「コンクリートの大部分を海底堆積物で構成すべし」と追加条件まで課してきました(すごいな…)。

なぜなら海底にある素材をその場で使えれば、大量のセメントを船で運ぶ物流コストが激減するからです。いや、理にはかなっているけども(すごいな…)。

前代未聞のチャレンジに、Nair助教授は共同研究者や協力大学も迎え入れ、電気、コンピューター、材料科学、建築などさまざまな専門知識を集めていったそうです。そして2025年9月、チームはDARPA関係者の前で、高い堆積物含有率の目標に近づいていることを実証しました!

最終のデモンストレーションは2026年3月を予定。DARPAの呼びかけに名乗り出た複数のチームが、水中でアーチ構造を3Dプリントする、いわば「水中建築コンテスト」で競うそう。

海を壊さずに、海に建てる

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Nair助教授がこの研究で掲げる理念は明快です。

「環境を破壊せずに建設したいんです。遠隔操作の水中ロボットが、海への影響を最小限にしながら現場にやってくる。陸上の従来工法をそのまま持ち込むのではなく、もっとスマートな方法があるはずです」

海底ケーブルの保護、港湾施設や橋の補修、洋上風力発電の基礎……などなど。水中で直接コンクリートを「印刷」できたら応用先はたくさんあるでしょう。3Dプリンターは宇宙だけでなく、もう1つのフロンティアへ潜っています。

Source: Cornell Chronicle, FabScene

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