AIには「すでに中堅コンサルタントと同等の能力がある」 相次ぐ“大規模リストラ”に業界激震…最後まで生き残るコンサルの「3条件」とは
昨年12月、コンサル業界に衝撃が走った――。マッキンゼーが数千人規模の人員削減を計画していると報道されたのだ。理由は「AIによる業務自動化」である。11月末にはすでに約200人が同社を去り、今後2年間で追加削減の可能性があるという。業界大手のアクセンチュアも同様の動きを見せており、専門家は「コンサルが担う業務の約3割はAIで代替できる」と指摘している。【松本昌平/元官僚芸人まつもと】
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半年ほどでAIのレベルが激変
筆者はボストン・コンサルティング・グループを始めとした複数の戦略系コンサルティングファームに在籍した経験がある。今もフリーのコンサルタントだが、「AIによってコンサルタントが仕事を追われるのでは?」という話題自体は、2020年頃から耳にしていた。もちろん、将来的にそういう時代が訪れることは予期していたものの、現実に自分が困るのはもう少し先のことだと高をくくっていた。

だが、ChatGPTの登場によって、やや現実味を帯びてきたと思っていたら、そこから一瞬にして局面が変わってしまった感がある。
昨年の時点でもかなり使えるようにはなっていたが、その時点では調査業務の一部はやれるが、事実ではない情報が相当含まれるため、裏取りにかなりの工数を用いるので、結局は人がやった方が良いか……といった程度だった。したがって、実際に自分達の仕事で真正面から使えるようになるにはあと数年、仕事を奪われるといった話になるとまあ当面ホラーストーリーの域を出ない……そのように思っていた。
ところが、この半年から数カ月で状況は激変した。体感で恐縮だが、今のAIは中堅のコンサルタントくらいのレベルに達している。5年後の話だと思っていたことが、今年の話になった。この恐ろしいまでの加速度に、私は怯えている。何なら近い将来に自分がコンサルとして生計を立てられている可能性は割と低いとすら思ってしまった。
かつて人間に指示していた仕事が
今、私がAIに何をさせているか。端的に言えば、かつてコンサルタントに指示していた仕事のすべてだ。通常のコンサル仕事は、ひとつのテーマについて論点出しを行い、その論点について様々な観点から考えられる切り口を整理し、調査結果を踏まえて情報を整理し、結論を出していく流れで進めていく。
私はマネジャーというプロジェクトを統括する立場にあったので、複数のコンサルタントに担当テーマを切り分け、上記のような作業を任せ、その結果を対話の中でブラッシュアップし、プロジェクト全体の結論へと統合していく仕事をしていたが、今やこのコンサルタントの役割を丸々AIに置き換えても問題ない状況になっている。
単なる調査であればともかく、論点整理や情報整理のための切り口の導出などはコンサルタントとしての力量や経験差が出やすいので、マネジャーとコンサルタントが密にコミュニケーションしながら行っていたのだが、そこすらAIが対応してしまっている。
指示に対する結果提出が圧倒的に早い
もちろん、AIも最初はズレた結果を出してきたりするのだが、「そうではなく、こういう方向性でやってくれ」と指示を出し、修正することを繰り返していくと十分使える結論に辿り着く。面白いことに、この試行錯誤の過程は人間のコンサルタントとAIで全く同じことをやっているのだが、問題は、AIのこの試行錯誤のPDCAを回す早さが人間のコンサルタントより圧倒的に早いことだ。
人間のコンサルタントであれば「このテーマについて考えて」と言って、例えば数時間から1日は時間を与えていたが、AIなら1分で結果を出してくる。また、その結果を打ち返してというサイクルを短時間で多数回せるので、人間のコンサルタントとやる場合よりも下手するとアウトプットの質も高くなっている。
ただし、使い方にはコツがあって、ふわっとした問いや大きすぎる問いを投げると、AIもトンチンカンな結果を返してくる。ある程度細かい問いに分解し、前提条件や考えて欲しいポイントを細かく指示することが重要だ。指示するところが難しいのでは? と思うかもしれないが、AIにはいくらでも考えさせることができるので、最初ふわっとした問いでもそこを細かくする作業を人間がやる必要はなく、AIとの対話の中で求める粒度にまで高めさせればいい。
つまり、指示さえサボらなければ相当使える。逆に言うと、このあたりが今日現在のAIの限界でもある。冒頭、今のAIは中堅コンサルタントレベルになっていると述べたが、シニアのコンサルタントであれば対話や指示がなくても同じような結論に辿り着く。
AIが「中堅コンサルタント」どまりの理由
ここから言えることがある。つまり、2026年の今の時点では、AIは中堅のコンサルタントは代替できるが、シニアコンサルタントやマネジャーの仕事は代替できていない。この差はどこから生まれるのか?
中堅のコンサルタントになくて、シニアコンサルタント以上にあるもの。それは、過去の経験における「答え」の蓄積だ。「この場合にはこんな論点が出てくるはずだ」「こんな論点に対してはこんな整理があるはずだ」そういった蓄積があるから、AIの出してきたものに対して「もっとこうやってくれ」と指示できる。そして、中堅のコンサルタントはそれができない。経験の蓄積がないから、AIが出してきたものが正しいのか、ズレているのか、判断がつかない。
AIの進化のスピードを考えれば、更にレベルアップをし、数年後にはシニアコンサルタント以上の仕事も奪っている可能性は高いと考えられるが、今現在のことだけで言えば、最も深刻な影響を受けているのは中堅までのコンサルタントだ。顧客と対面で対話し、顧客の求めていることを推し量り、プロジェクト全体のストーリーを描く。そして、ストーリーを構成する論点や論点に応えるための分析結果のクオリティを担保する――これらの骨格にあたる部分はまだ人間の仕事だ。一方、この骨格に肉付けする中堅までが負っていた仕事はほぼAIで代替できる。
そうすると、どうやって若手の育成を行うかが問題になる。今、若手がやっていた仕事はほぼAIに置き替わり得る状況になっている。若手が研鑽を積む場が急速に失われつつある。例えば、かつては議事録を書きながらロジカルシンキングを磨いた。論点整理も全然違うと上に怒られながら何度もやり直しさせられた。そうした場がAIによって消失しつつある。
AI台頭の今、若手をどう育てるのか
だとすれば、かなり意図を持って、若手を育てる場所や機会を作っていかねばならないはずだが、現場のマネジャーに未経験者を育てるインセンティブはない。アウトプットを出すために最短距離を最小コストで走ることを求められてきたし、そもそもプロジェクトの納期に追われていてそれどころではない。なぜ、即戦力のAIがいるのに、時間をかけて若手を育てる必要があるのか。
これはコンサル組織にとっては非常にまずい状況だ。コンサル業界では転職が当たり前なので、日常的に人材が流出する。だからこそ、未経験者からも人を入れて、次の戦力へと育ててきた。このサイクルが止まると組織が崩壊する。
現場に若手を育てるインセンティブがないのであれば、経営が何らかの、若手を育てる仕組みを考えなければならない局面に来ている。しかしながら、AIによる効率化は進めたとしても、それによって失われる「若手の学びの場」をどう補うのか――この点で明確な答えを持っているファームはほとんどない。もっとも、近い将来にコンサル自体がAIによって駆逐されるから、今更人を育てる必要はないと考えている可能性もなくはないが……。
今は「若手の仕事がAIに置き換わる」段階だ。しかし、AIの進化は止まらない。このスピードで進化が続けば、今後数年で、シニアコンサルタントからマネジャー層が担う業務も徐々に侵食されるだろう。パッケージ型の提案、定型的なプロジェクト管理、調整業務――こうした「ある程度パターン化できる仕事」は、AIの学習が進めば進むほど、人間の優位性が失われていく。
そして、やがてはパートナー層にも影響が及ぶ。今後、コンサル需要そのものが減るとすれば、パートナー層のメインの仕事である営業も減るからだ。
生き残り策を考えるか、潔く撤退か
では、最後まで生き残るのはどんなコンサルか。まずは、クライアントの経営層と深い信頼関係を築き、「この人に相談したい」と指名されるレベルのパートナー。人間関係の深さはAIでは代替不能だ。そして、実行支援・PMO系や常駐系のコンサル。昨今では高級人材派遣と言われたりもするが、現場に深く入り込み泥臭く現場を回す人も残る。社内の調整、ステークホルダーの説得、現場の抵抗を乗り越える――これらの「人間臭い仕事」も残るだろう。
最後に業界特化型の専門コンサル。特定業界に深く入り込み、その業界の「暗黙知」や「力学」を理解している人は強い。各業界には、データだけでは読み取れない文脈がある。汎用的な分析はAIができても、「この業界ではこれは通用しない」という肌感覚は人間にしか持てない。
逆に言えば、それ以外は淘汰されるのではないか。AIに対応できるコンサルと、できないコンサル。その二極化が急速に進み、後者は容赦なく淘汰されていく。そして、生き残れるコンサルはおそらくかなり少数だ。現状できていること(中堅コンサルタント)のレベルも世の中から見れば相当に高いレベルのことなのだ。
このレベルのことが出来ているということは、ここから上のレベルも早晩出来るようになる。もはや、それを阻む壁は存在しない。私自身、この変化の中で悩んでいる。どのように生き残るべきか、または、この業界から撤退すべきか……。
松本昌平(まつもと・しょうへい)
コンサルタントとお笑い芸人の二足の草鞋で活動。芸名は「元官僚芸人まつもと」。1978年、京都府生まれ。京都大学大学院修了。キャリア官僚として総務省や財務省などに勤務。退職後はボストン・コンサルティング・グループなどに在籍した。2024年、株式会社公務員転職.comを設立。
デイリー新潮編集部
