「結果マイナスにしかならへん」多くが“トイレ貸出拒否”…外国人観光客が殺到する京都でコンビニ店員が語った苦悩
◆「トイレはご利用いただけません」こぞって利用拒否の意思表示を行うコンビニ
一つは、海外観光客(インバウンド)の多さだ。日本人より西欧系、アジア系、イスラム系などとすれ違うことが多く、まるで海外にいるかのような錯覚を覚えるほど。
もう一つの異変が、路上沿いにあるコンビニの掲示だ。「店内にトイレはありません」「トイレはご利用いただけません」ーー多くのコンビニが、「トイレ貸出拒否」の貼り紙を店内外に掲げているのだ。東山区内で10数軒の店舗をまわってみたが、8〜9割は貸出不可。中には配送用の箱をトイレ前に重ね、バリケードを作っている店もあるほどだった。
◆トイレを貸してあげたいのはやまやまだけど
京阪本線清水五条駅付近にあるコンビニでは「ベンチで寝ないで下さい!」「長時間の居座り、飲酒、足、杖の投出しお断り致します!」など、トイレ以外も含むマナー注意書きが何枚も貼り出されていた。なぜ店側はかくも過敏になるのか。レジで名刺を差し出し、取材希望の旨を伝えると、店員は日頃から溜まっていた鬱憤を吐き出すかのように「トイレを貸してあげたいのはやまやま。意地悪したい訳じゃないんです」と話し始めた。
「使ったからには買い物ぐらいして行ってほしいのに、インバウンドの場合、用だけ足して帰ってしまう人が半分以上。あとは日本人も含めてトイレを汚される、壊される、吐かれることが何度もあった。本部は修繕費を負担してくれへんから、その度ごと、店側が何十万円も支払っているんです。トイレを貸したら貸したで『汚い』とカスタマーハラスメントまがいのクレームを受けることもあり、結果マイナスにしかならへんと(やめた)」
インバウンドの恩恵を受けて商売が成り立っているのだから、店側はもっと寛大な姿勢であってもいいのではないかーーそんな声も聞こえてきそうだ。しかし、事態はそう単純ではない。
◆京都はトイレマナー問題の「最先端地域」
「インバウンドによるトイレマナー問題について、国内でも最も深刻な状況に置かれているのが京都。他の観光地の問題も先取りした、いわば『最先端地域』と言えるでしょう」
こう指摘するのは、京都を拠点に観光事業を手がける株式会社KICKsの代表取締役・山本健人氏(34)だ。
’23年から2年間、京都大学経営管理大学院に在籍。卒業研究として京都市中心部のコンビニチェーンを約半年間歩き回り、トイレの貸出状況を調べた。その結果、トイレの貸出を不許可としていた店舗は、354店舗中74(「夜間のみ閉鎖」など時間帯の区別を設ける場合を含む)。市内でも特に観光客が多い四条河原町では、23店舗中のうち16店舗がトイレを閉じていたという。
なぜ観光地のコンビニほど、トイレの閉鎖率が高いのか。山本さんによれば一つには、文化の違いを背景とした「トイレトラブル」が関わっているという。
「地域や文化の違いによって、トラブルの内容に差があります。西欧人の場合は便器にまたがって破損させる、中国やインドなどではトイレットペーパーを流さない習慣があるため、紙をゴミ箱に捨てて帰ってしまうといった傾向があり、トラブルが多発しています。多くのコンビニはフランチャイズ方式のため、修理代や清掃代は加盟店側が負担することになる。その結果、『トイレを閉鎖した方が売上が増える』という認識がオーナー間で広がり、どこかの店舗がトイレを閉じれば、近隣の店舗もそれに続くという連鎖が起きやすくなっています」
