「結果マイナスにしかならへん」多くが“トイレ貸出拒否”…外国人観光客が殺到する京都でコンビニ店員が語った苦悩
◆駅のトイレは有料に。トイレ難民化する一般客
地域によっては駅のトイレに観光客が立ち入れず、その分の需要をコンビニが引き受けていることもある。今回取材を行った京阪本線三条駅・清水五条駅はどちらも改札外にトイレがなく、「駅構内の利用には入場料金が必要です」と掲示がなされていた。三条駅付近のコンビニ店員は、こう訴える。
「(三条駅の)改札外にはトイレも椅子もなくて、一般客も困っています。特にトイレに入れない観光客は、うちの店を目がけてやって来る。『トイレはどこ?』と質問されることがあまりに多いため、少し前までは仕事にならない状況が続いていました。店員に断りなくトイレを使ってしまうインバウンドも多く、何度も詰まりが起きて、今は貸出を不可にしています」
◆「トイレ情報のDX化」で、特定の店舗に偏る負担を軽減する
民間の事業者に集中しがちな負担を、地域や行政の側で引き受けようとする動きもある。同じく東山エリアの古川町商店街で副理事長を務める鈴木淳之さんは、「うちの商店街は、東山の中心地から少し離れており、それほど観光客は多くないので、各店ごとに頼まれたら貸し出す体制を取っている。中心地に比べれば、汚損被害を受けることも少ない」と話す。
京都市では市が維持・管理を行う公衆トイレのほか、観光客が多く付近に無料トイレがないエリアの民間施設について「観光トイレ」と認定。年額22万を上限に、維持管理費用の一部を助成する取り組みを行っている。
近年力を入れているのは、トイレ情報のDX化だ。’24年からは、京都市が管理・維持を行う公衆トイレ69か所・観光トイレについて、いずれも京都市情報館のHP上にて「公衆トイレマップ」として公開を始めた。東山区でもトイレマップの作成を行ってきたが、’25年12月からはKICKsが提供するトイレ情報提供サービス「TOIMAP」を導入。地域のコンビニなどに掲示されたポスターのQRコードを読み込むと、観光客が使える最寄りのトイレが地図上に表示される。「アクセスログを見れば、負担が集中するトイレや利用が多い国が見えてくる。データを元に、行政とも連携して利用が偏る店舗の負担を軽減していきたい」と山本さんは話す。
◆誤った使い方で便器が汚されるケースも
京都市の公衆トイレの維持・管理を担当する環境政策局の樫村貴之係長は言う。
「昔に比べると件数は減ってきたものの、誤った使い方によって便器が汚されることは今もあります。近年では、ゴミや食べたものがそのまま放置されてしまうといったトラブルも増えています。ただ、公衆トイレを閉鎖することは考えていません。コンビニ事業者からは善意でトイレを貸し出しているにも関わらず、利用者から高圧的なクレームを受け、心理的負担を感じるといった話も聞いています。特効薬はないものの、行政として必要なケアは行っていくつもりです」
’26年春、京都では「帝国ホテル京都」、シンガポールを拠点とするラグジュアリーホテル「カペラ京都」など、名だたるホテルが開業を控え、消費額の大きいインバウンドの流入加速が見込まれている。「おもてなし」の美名のもとに特定の事業者が「泣き」を見る構造が生まれていないかを見直すタイミングが訪れている。
山本健人(やまもと・けんと)
株式会社KICKs代表取締役。一橋大学卒。アマゾンジャパンでのDX担当を経て、京都大学MBA在学中の2024年にKICKsを創業。米国公認会計士、行政書士。自身が外出時に、トイレに困った経験から「トイレ不安」の解消を志し、京都市内354カ所のトイレ調査を敢行。アカデミアとビジネスの視点でトイレDXを推進する
<取材・文・撮影/松岡瑛理>
【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san
