関連画像

写真拡大

視聴者のお悩みを解決するバラエティ番組『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)の1月23日放送内容を巡って、番組に登場した6人兄弟の長男(12歳)が「ヤングケアラー」ではないかという指摘が相次ぎ、母親のSNSなどに批判が殺到するなどの炎上状態となりました。

番組は、6人兄妹の長男(12歳)が「長男を1日代わってほしい」と依頼し、お笑い芸人「霜降り明星」のせいやさんが代わりに5人の世話をするという内容でした。

26日現在は、番組はTVerから配信停止となっており、切り抜きと思われる非公式の動画がSNSなどにアップされている状態です。番組の全容を確認することはできませんでした。

ただ、放送を実際に観た人達によると、長男が普段している兄弟の世話の内容は、5人分のご飯の準備、洗濯物の片付け、おむつ替えなどであったようです。友達と遊べるのは週1〜2回程度で、本人は「疲れた」と訴えていたそうです。

家事や弟妹の世話で「疲れた」と感じている子どもがいるとき、どのような相談窓口や支援があるのでしょうか。簡単に解説します。

●まず知っておきたい「ヤングケアラー」という概念

家事や家族の世話の負担が大きく、困っている子どもについて、「ヤングケアラー」という言葉が使われることがあります。

2010年代から日本でも報じられ始めました。朝日新聞は2014年5月6日付の記事で、ヤングケアラーへの社会的支援を行なってきた英国の事例を引き合いに、日本でも「社会で支援を」と問題提起する記事を掲載しています。

令和6年(2024年)6月に施行された改正子ども・若者育成支援推進法では、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」が、国・地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象として法律上明記されました(同法2条7号)。

法律では「ヤングケアラー」という言葉そのものは使われていませんが、ヤングケアラーを支援対象として位置づけた規定です。

この法律における「過度に」とは、こどもにおいては、こどもとしての健やかな成長・発達に必要な時間(遊び・勉強等)を奪われたり、ケアに伴い身体的・精神的負荷がかかったりすることによって、負担が重い状態になっている場合を指すとされています。

なお、ヤングケアラーの定義は、本法以前は定まっておらず様々なブレがありました。以前の定義では、「過度」という言葉は使われていないことが多いようです。

もっとも、こども家庭庁はこの「過度」という定義について「その範囲を狭めることのないように十分留意し、一人一人のこども・若者の客観的な状況と主観的な受け止め等を踏まえ、その最善の利益の観点から、個別に判断していくことが重要」としています(「ヤングケアラー支援の現況」(令和7年度、こども家庭庁支援局虐待防止対策課)p6)。

●「中学生の17人に1人が何らかのケア」という調査結果

2021年に厚生労働省・文部科学省が行なった調査では、中学生のおよそ17人に1人が何らかのケアを担っているとされます。

この定義には「親がどう思っているか」「子どもがどう思っているか」という認識は含まれていません。重要なのは、客観的に「大人が担うようなケアを引き受けている」ことで、子どもとして過ごすべき時間を奪われているという状況です。

では、「お手伝い」とヤングケアラーはどう違うのでしょうか。

子どもとしての健やかな成長・発達に必要な時間が保障されているか、そして「今日はやりたくない」という選択肢が子どもに保障されているかどうかで区別されると考えられます(「若者の困窮 家族をケアしながら学ぶ若者の困窮 ヤングケアラーを取り巻く現代的課題」(鈴木靜(愛媛大学教授)参照)。

子どもが家事や家族の世話、介護等をするしかない状況であり、そのために子どもとして生きるために必要な時間が保障されていない状況であれば、それは「やらない選択肢がない」、つまり「過度なケア」ということになります。

●子ども自身も「相談していいのか」迷うことがある

もう一つ重要な点があります。困っている子ども自身も「自分が相談していいのか」「大したことをしていないから相談してはいけないのでは」と考えてしまうケースが多いという問題です。

家族の世話は「自分にしかできない」という誇りや責任感を持っていることもあるため、「ケアをしないですむようにしてほしいとも思っていない」場合もあります。

しかし、本人が「疲れた」と感じているなら、それは相談してよいサインです。「ヤングケアラー」という言葉に該当するかどうかに関わらず、困っているなら支援を求めることができます。

つまり、親が「問題ない」と思い、子ども自身も「自分はヤングケアラーではない」と思っていても、客観的には支援が必要な状況である可能性があるのです。

●こども家庭庁の特設サイトから、相談窓口を検索できる

では、どこに相談すればよいでしょうか。

1)自治体の相談窓口

まず考えられるのは、住んでいる場所の自治体の相談窓口です。全国112件以上の相談窓口が設置されています。探すのが大変そうに思えますが、こども家庭庁の特設サイト(https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/)で、住んでいる地域やサポート内容に応じた相談窓口を検索することができます。

子ども本人からの相談も、教師など周囲の大人からの相談も受け付けています。一部の自治体では訪問支援事業(ヘルパー派遣)や配食支援など、具体的な支援サービスも提供されています。

なお、近くに相談窓口がない場合には、「全国」対応の窓口もあります。電話やオンラインでの相談も可能ですし、同じような悩みを抱える人達が交流する場もあります。

2)学校で相談

学校の先生、保健室の先生、スクールソーシャルワーカーに相談することもできます。

相談することは決して恥ずかしいことではありません。「ヤングケアラー」という言葉に該当するかどうかに関わらず、困っているなら相談して大丈夫です。

3)子供SOSの相談窓口

文部科学省のサイトでは「子供SOSの相談窓口」が紹介されています(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm)。無料で電話やSNSなどで相談ができます。

●周囲の大人ができること

子どもの様子に気づいた周囲の大人も、相談窓口を利用できます。

一方で、注意すべき点もあります。

SNS上では親への誹謗中傷が殺到していますが、これはやめるべきです。

刑事上の名誉毀損罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)や侮辱罪(1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)に問われたり、そうでなくとも民事上の名誉毀損などによる責任追及を受けるおそれがあります。なお、リポストやリツイートでも同様のリスクがあります。

「長男を助けたい」という善意から発した言葉であっても、親を攻撃することは、かえって長男や家族を苦しめ、建設的な解決につながりません。

感情的な投稿は控え、攻撃的な投稿を拡散せず、正しい情報(支援窓口の情報など)を発信することが重要です。気づいたことがあれば、専門機関に相談・通報する方が建設的です。

●さいごに

家事や家族の世話で「疲れた」と感じている子どもがいるとき、それが「ヤングケアラー」という言葉に該当するかどうかは、本質的な問題ではないと思います。

重要なのは、困っている子どもがいること、そして相談できる窓口や支援があることです。

子ども自身も、周囲の大人も、「これは相談していいのか」と迷わず、まず専門機関に相談してみることが大切です。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

(参考文献)
-「ヤングケアラー支援の現況」(令和7年度、こども家庭庁支援局虐待防止対策課)
-「若者の困窮 家族をケアしながら学ぶ若者の困窮 ヤングケアラーを取り巻く現代的課題」(鈴木靜(愛媛大学教授)/法学セミナーe-Book No.52(2024年2月、日本評論社))
- 「岐路に立つ日本の社会保障 - ポスト・コロナに向けての法と政策」(伊藤周平/日本評論社、2022年12月)