Valveが「Steam Machine」で切り開くゲーム市場の新たな道
モバイルPCゲーム市場をリードし、人気を集めるValve。
SteamOSの使いやすさが大好評ですが、Valveの挑戦はまだまだ続きます。昨年、お家で使う据え置きゲーム機「Steam Machine」を発表。コンソール機と呼ぶべきか、キューブ型パソコンと呼ぶべきか、まだ得体のしれない、でも期待値だけは非常に高い存在となっています。値段がまだわからないという不安要素はあるものの、今年前半にはリリースされ、かつてないほどオープンなゲームプラットフォームになる予感。
カスタマイズ性を求めるなら、自分で高スペック(高価格)パーツを組んでゲームできるパソコンがいい。手軽さを求めるなら、制約はあってもゲーム開発側がベストな状態で提供してくれるコンソール機が楽。ゲームするならパソコンかコンソールか…なんていう長きにわたる議論にも終止符を打つことになりそう。
なぜならSteam Machineが、パソコンとコンソールのいいとこどりをする存在になりそうだからです。
パソコン的互換性
ValveのデザイナーであるLawrence Yang氏が、ゲームメディアGame Developerに語ったところによれば、ゲームタイトルごとの「Steam Machine認証」を開発側が気にする必要はないといいます。
これは、すでにSteam Deck対応のゲームならば、Steam Machineでも問題なく動作するため(ただし、VRヘッドセットSteam Frameの場合、x86エミュレーターを使ってARMベースのハードに対応させているので、Steam Deck対応=Steam Frame対応とはならないとのこと)。
ゲーム開発側にとっては、認証・対応マークの取得は非常に重要。なぜなら、Steamストアの専用セクションにゲームが表示されるうえに、そのハードで問題なく動くよとわかれば、より多くのユーザーがアクセスしやすくなるから。
こうした認証の手軽さは、ValveがXbox、Sony、任天堂とは大きく異なるところと言えます。既存ゲーム大手3社は、ゲーム開発側に、それぞれのゲームのプラットフォームを念頭にゲーム作りしてもらう必要があるからです。
Xbox Series S/XとPlayStation 5は、AMDのチップを採用しており、今までのコンソール機よりパソコン風な作りになってはいます。一方、Switch 2が採用したのはNvidia製のARMベースのチップで、ゲームをうまく動作させるにはゲーム開発社側のチューニングが必要。ただ、Switch 2ユーザーにとってこれはいいことで、Switch 2対応ゲームのSwitch 2上での動きの良さはピカイチ、ときにSteam Deckを超えます。これはゲーム開発側のチューニングのおかげですね。
Valveが誇るゲームOS、SteamOSベースのシステムを採用するメリットは、その根幹がパソコンっぽいこと。つまり、PCゲームをパソコンでプレイするときのようなカスタマイズ性の高さがあるということです。また、Protonという互換性レイヤーがあり、ProtonDBのコミュニティサイトでは多くのプラグインを見つけることができます。
つまり、SteamOSでは、ゲーム開発側よりも、むしろユーザーを含めた多くの第三者の手によってたくさんのゲームの互換性が保たれているとも言えます。
PCゲームを開発する側は、基本、IntelやAMD、Nvidiaといった複数のパーツをWindows環境で動作させてみて、問題なく動くかをテストします。これは、Steam Machineが世にでてきても同じこと。ただ、SteamOS上での認証・対応マークがあれば、ユーザー側から見てわかりやすく、親切であり、それに越したことはありあません。
また、Valveのオープン性の高さは、アクセサリの互換性でもプラスに働きますね。
コンソール的手軽さ
2022年のリリース以来、Steam Deckがここまで支持されているのは、PCゲームをモバイル化できるという絶対的な強みはもちろん、それ以外にも圧倒的な手軽さが挙げられます。
PCゲームをプレイするハードを、より多くの人にとってわかりやすく、お手軽にしたのがValve。ゲームプラットフォームであるSteamを介して、自分のゲームライブラリに手軽にアクセスできるようにしたわけです。
当然ゲーマーからの支持が高まれば、ゲーム開発側もサポートします。より多くのプレミアゲームが、Steam Deck向けのグラフィック設定を載せて出荷されるようになり、ユーザー側の手軽さはさらに強化されてきました。これって、コンソール的なメリットですね。
販売台数には拘らない
Valveが、なぜ他社コンソールのようにSteam Machineをクローズシステムにしないのか。それは、Valveの主目的が、ゲームプラットフォームとしてのSteam上でより多くのゲームを販売することにあるからでしょう。
Steamにどこから、どんなデバイスでアクセスするかは大した問題ではなく、アクセスしてくれることが最重要ミッション。ゲーム売上の3割をもらうことが大事なわけです。
Valveのゲームハードウェア、Steam Deckは大成功を収めています。IDCデータをもとにしたThe Vergeの報道によれば、モバイルPCゲーム機では最も売れており、リリース4年で400万台を売り上げました。
ただし、成功とは言え、他のモバイルゲーム機と比べれば「たったの」400万台。
Switch 2なんて、今年の3月までには出荷台数が1900万台にもなる予想ですからね。また、CircanaのアナリストMat Piscatella氏によれば、PS5のモバイルプレイを可能にするPlayStation Portalの導入はPS5ユーザーの5%。これはアメリカのユーザーだけの話かもしれませんが、それでも数百万台です。
「なーんだ、じゃあ、端末としてはSteamって売れてないんだね?」と考えるのは、Valveの戦略を誤解した見解。前述の通り、ハードが何であるかは問わないのです。Steamプラットフォームにアクセスしてくれることが最重要。つまり、Steam Machineのリリースは、より多くの人にとってSteamプラットフォームへアクセスできる手段になることがメリットであり、PS5やXboxと販売台数で真っ向勝負するつもりなんてハナからないのです。
ただし、Steam Machineの存在によって、よりゲーミングに特化したミニPCや、よりパソコンライクなコンソール機は増えてくるでしょう。SteamOSのような、ハードを問わないオープンソース型のゲーム向けOSへのシフト(または似た感じの新たなOS)も進むでしょう。
つまり、Valveはゲームそのものとゲーム機の間にある壁を壊しながら、独自の道を切り開いているわけです。今後、そうしてできた道を歩こうとする人は増えてくるものと思われます。新たなゲーム時代の幕開けを感じさせる存在、それがSteam Machine。楽しみでしかない!

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