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お〜い、どこまで上がるんだよ〜?

AIデータセンター向けの方が儲かるってことで、半導体メーカーがそっちに熱中してる間に、パソコンのメモリ価格が見る見る上昇。DDR5もSSDも1カ月で値段が数倍に膨れ上がっています。

PCの値上がりは待ったなし

メモリショック、RAM危機の現状
Image: pcbuildadvisor.com

トランプの関税も乗り切って、無事に2026年を迎えられたと思ったばかりなのにトホホ…。一難去ってまた一難ですね…。

最初に影響が出たのはデスクトップPCでした。一部のRAMは価格が5倍に高騰中。ノートPCにも影響が及ぶのは必至と見られています。

IDCの最新データによれば、昨年のPC販売台数は前年から10%近く増加した(売上トップはシェア20%のLenovo(レノボ)で7080万台、2位はHPの5750万台)のですが、折からのメモリ不足で、価格がどこまで持ち堪えられるのか予断を許さない状況です。

その辺のことをCES会場でDELL(デル)の担当者に聞いてみたら、今後の状況次第で価格改定は十分ありえるとのことでした。そのうち値上げで追いつかなくなって、搭載するRAM容量が減っちゃうこともありえると、IDCは警鐘を鳴らしています。

DDR4、DDR5のみならず、SSDも爆上がり中で、DRAMモジュール世界最大手Kingston Technology(キングストンテクノロジー)によると、今年第1四半期にNAND価格は昨年同期比で246%も高騰中。うち70%の値上がりは、この60日という短いスパンで起こっているという異常事態です(NANDフラッシュメモリはSSD原料費の約9割を占める主要部品です)。

もはやこれはDIYでパソコン製造側だけの問題じゃなくて、PCを買う人全員に降りかかってくる問題といえそうです。

AIをデモ中のThinkBook Plus Gen 7 Auto Twist。AIの影響で今年PCが値上がり傾向なこと思うと何とも言えない気分になる
Image: Kyle Barr - Gizmodo US
Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 14。キーボードを開くとRAM。修理しやすくなったのはうれしいけど、これだけメモリが値上がりすると、おちおちアプグレもままならない!
Image: Kyle Barr - Gizmodo US

最近では「端末側で処理するPCの時代が終わっちゃうんじゃないか」と青ざめてる人もいます。

AIデータセンターの建設ラッシュで、高価なメモリはいくら作っても追いつかない中、Samsung(サムスン)、Micron(マイクロン)、SK Hynix(SKハイニックス)のメモリ製造大手3社は、どこもPC向けの安価なメモリは後回しで、もっと実入りの大きいOpenAIのスターゲートみたいな大型データセンター建設プロジェクトに力を振り向けています。

データセンターにブレインパワーを全部吸い上げられて、消費者の手に残るのは値段が吊り上がったPCだけ。こんな状態が続いたら、ますます高負荷な業務タスクやゲームの処理に耐えるPCを買える人と買えない人にキッパリ分かれちゃいますよね。

CESでは、Lenovoのインテリジェンス端末グループ上級バイスプレジデントのSteve Longさんにも取材したんですが、「全部が全部クラウドになることもないだろうし、ローカルになることもない。ハイブリッドで落ち着くんじゃないかな」という穏当な回答でした。まあ、極論は戒めなきゃですけどね…。

シリコンバレー各社は韓国でRAM争奪戦

値段が成層圏突き抜けた感のあるRAMとストレージ
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まあ、Lenovoは割と安全圏なのかもしれません。価格爆上がりの「前」に、通常より50%多くRAMの在庫を仕入れまくっていたとBloombergが報じているので。事実、9月後半から10月の時点で、すでにベンダーとは長期契約を結んでいて、2026年の需要はすべてカバーできる体制が整っているとのお話でした。

もちろんメモリ不足は、今年だけで終息するようなものではありませんけどね。専門家の予想では、来年か下手すると2028年までこの状況は続くみたいなので…。

「Samsungから安定供給されるので、Lenovoはメモリショックどこ吹く風」だとDigiTimesに報じられていたので、Samsungが最大ベンダーなのかと思って聞いてみたら、地域ごとに複数のベンダーから調達しているってお茶を濁されました。

他社はどうかといえば、今はGoogle(グーグル)もMicrosoft(マイクロソフト)もMeta(メタ)も、みんな韓国のホテルに缶詰めになって、「DRAMくれくれ」とSamsungとSK Hynix詣でに心血を注いでいるそうです。

Asus ROG Crosshair X870E GlacialみたいなマザーボードとRAM積むだけでも、今は目の玉飛び出るプライス
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若干優位のLenovoにしても「価格はサプライチェーン全体のものだし、当社にとっても上昇傾向」だとLongさん。メモリ不足の皺寄せはOEMにも小売にも来ますもんね…。

そんなこともあって、昨年はLegion Go S with SteamOSみたいなゲーミングPCが、2度も値上がりしたってなわけです(550ドルから600ドル、さらに発売後650ドルになった)。同じことが今後またないとは言い切れません。

さらにLongさんの話では、今後はPCのラインナップが上位モデル中心に流れていくだろうとのことでした。つまりRAMやストレージが大容量で、プロセッサーの処理能力の高いPCですね。高スペックになれば、自ずと価格は上がっていきますし、逆に安いPCはクラウド処理にますます依存せざるを得なくなっていきます。今すぐどうこう変わることはないにしても、ゆっくり確実にその方向に向かっていきそうではありますよね。

さらには「選べるRAM容量が減る」という予想もあります。

これはWccftechがMicronマーケティング長のChristopher Mooreさんから取材して聞いた話なんですが、今みたいに12GB、16GB、24GBから選べる体制だと、「アウトプットが減る」ので、MicronとしてはもっとDRAM容量の規格を狭めたい方針らしいんですね。なんかメモリ容量って、昔はPCメーカーが決めてたような気がするんですが、今はこうして半導体メーカーの「鶴の一声」なんですね…。

PCの選択肢は確実に減る

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パソコンの部品はただでさえ高かったところに、半導体メーカーによる上位プロセッサーの値上げが加わった状態ですね。

CESでは、Intel(インテル)が今年のノートPC用チップ「Intel Core Ultra Series 3(Panther Lake)」の全容を発表しましたし、AMDとQualcomm(クアルコム)も高性能プロセッサーを発表したわけですが(特に注目はトップエンドのARMのSnapdragon X2 Elite Extreme)、前世代の軽量ノートPCの多くに搭載されているのは、中価格帯のIntel Lunar Lakeなのに、今年出るIntel搭載デバイスにはトップエンドのCore Ultra X9 388H CPUが搭載されてたりして。この皺寄せはCPUやほかの部品にも及ぶだろうとLongさん。ほかの零細企業はどう対応しているのか尋ねたら、統廃合されても「仕方ない」というムードだと言ってました。

生き残るPCメーカーが1社か2社ということはないにせよ、店頭に並ぶメーカーの数が減って、機種選択の幅も狭まりそう。例えばカスタマイズ&修理可能なPCを手掛けるFrameworkみたいなメーカーは、昨年の暮れからノートとデスクトップPCの値上げを何度も実施しています。サバイブしてくれるといいのですが…。

OSのチョイスは広がる

Lenovoからは今年Windowsオンリーじゃないパソコンが出るかも。その可能性を否定はしていない
© Kyle Barr / Gizmodo

PCの寡占化。今すぐ起こる問題じゃないけど心配です。大小さまざまなメーカーが幅広い商品を世に出すから、それを伝える喜びもあるわけで。1社単独だったらなんの面白みもないじゃないですかね。

AI禍のメモリショックが生んだ唯一のプラス要素があるとするなら、それはWindows 11でCopilot AI推しなMicrosoftに反発する動きが結構出ていること。これでオープンソースのLinuxにも入り込む隙が生まれてます。

LenovoもWindows以外のOSの商品発売に前向きだとLongさん。年明け早々、Legion Go 2にもLinuxべースのSteamOS版が出ることが明らかにされました。

ポータブルゲーム機もOS次第。Lenovo Legion Go 2にSteamOS版が来る

Valveが今年前半発売する独自のSteam Machineも、OSはLinuxをゲーム用に最適化したSteam OSですしね。

GoogleはGoogleでChromeOSとAndroidを一本化して、廉価なChromebookで使えるアプリの種類を増やそうと努力中です。もちろんChromebookだけに、最上位機種(強々すぎるLenovo Chromebook Plus 14など)を除けば全部クラウド依存型。これまで同様にローカルのタスクもネットにつながないと処理できませんけどね。

OneXPlayer最新のハンドヘルドPC「Strix Halo」。メモリ高騰の煽りで昨年発売間際になって200ドルも一気に値上がりした
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パソコンの種類が目に見えて減るような変化はまだ起こっていないし、自作PC市場も健在ですけど、安くPCが買える時代はあっけなく終わりを迎えてしまうのかも。

代わりにこれまでローカルで処理できていたことも、クラウド(とその有料サービス)がないと処理できない。そんな端末がますます増えていきそうです。

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