野球は7回、サッカーは60分でよくない?若者のスポーツ観戦離れを「時短化」で食い止めろ - 土屋礼央
※この記事は2021年07月27日にBLOGOSで公開されたものです
スポーツ観戦をする若者が減っている。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84368
ストレス解消がスポーツ観戦の目的なので、応援しているチームが勝つ場面しかみたくない。という事らしい。
他にもこの記事には若者達の間で映画などを倍速で観る人たちが増えているとか、批評本が売れなくなってファンブックはよく売れるという事実も書かれている。興味がある方は是非。
「スポーツ観戦が好きなおじさん理論」は若者に通用しない
勝ちの状態だけをみたい。
スポーツ観戦が好きなおじさん(以下SSO)から言わせれば、負けにも魅力的な負け方があるんだよねぇ。なんて言ってしまいそうだ。
さらにSSOからすると0-0の試合にも面白い0-0が存在するのだよ!負けに等しい0-0と勝ちに等しい0-0が存在するからさー!となるが、これもハイレゾ良い音ー!mp3とは全然違うー!と言っている、趣味にお金を投資出来るオーディオが好きなおじさん(以下ASO)が悦に入っている状態と同じな気がしてきた。
オーディオに興味がない人にとっては同じ音にしか聞こえないし、スポーツに興味がない人にとってスコアレスドローほど退屈な試合はない。
そりゃあもちろん、応援しているチームが勝つ事に越した事がないし、それを観たくて観戦しているのはSSOだって同じだ。
勝つかどうかわからないドキドキの中、台本では書けないドラマが起こり逆転勝利!
そんな試合を一度体験してしまったら、もう引き返せない。残念ながら今日は負けちゃったけど、もう一度あの興奮を味わいたい。また観戦しよう!と、負けてもその日を良きものに変換出来る。
ただ、映画を1.5倍速で観る様になってきている若者達にとってのスポーツ観戦は、勝つかも知れないけど、負けるかも知れない試合に時間を使うというタイムマネジメント的にはリスキー以外の何物でもないのだろう。
映画だって、世間の評判を確認してから鑑賞する人が増えている。リスクはなるべく減らしたいのだ。
ちなみに音楽エンターテインメントの大原則に、「全ての人に勝者になって家に帰ってもらう」というのがある。その会場にいる全員が勝者。一人も敗者を出さないための演出の努力をする。
それに比べたら、スポーツ観戦はエンターテインメントとしてリスクが高いと考えざるを得ない。
間違いなく、我々中年が若者より先にこの世からいなくなるわけで、このまま行けばスポーツ観戦に興味を持たない若者の層がどんどん増えていく。
となるとスポーツエンターテインメントは廃れていくのか?と言われれば、それはないと考える。
実はスポーツコンテンツは、スポンサーサイドからすると、最高に美味しいコンテンツ。映画やバラエティは録画で、サブスクで、観たい時に観て、CMも飛ばしながら観る人も多いだろう。
一方、スポーツ観戦はライブで観たいと思わせるコンテンツだ。
スポーツ中継はリアルタイムなのでCMが飛ばせず、他のコンテンツに比べてCMの効果が圧倒的に高い。 オリンピックの放映権料がどんどん高くなっているのも、そうした要素が多分にあると考える。
なので、いかに若者から不人気であろうとも、ある程度の未来は、スポーツコンテンツは優良コンテンツのままだろう。
持続可能なルール変更を柔軟に受け入れろ
批評本が売れなくなっているのも、ファンブックはよく売れるというのも、スポーツ観戦をする若者が減っている理由と重なる部分が多いと思う。
スポーツ好きになると、応援するチームや選手の事が「うちのチームは…」「あの子がしっかりしてればねぇ…」と知らず知らずに身内、家族、親の感覚になったりもする。
悪い所があっても、だったらここを成長させるべきだ等、子どもを育てている感覚に近い。
ただ最近は子どもをノビノビ育てる方向になっているので、その時代に育ってきた若者達からすれば、我々おじさん達が、応援するチームをあーだこーだ言ってるのを、むさ苦しく思っているのかも知れない。
「楽しければ良いじゃん。なんで苦しんでまで応援してるの?」
褒められて成長してきている若者世代は、僕らの世代より厳しい意見を受け入れる土壌がない。
ではスポーツに関して、興味のない若者の意見を取り入れる必要がないのかと問われたら、絶対に取り入れた方が良いと思っている。
若者が興味を持てる、持続出来るルール変更をしていく方が、プロスポーツ界の未来が明るいと感じるのだ。
ちなみに僕はF1も観るのだが、若者曰く、F1は車がグルグル回っているだけで退屈だ。という意見が多いらしい(悲)
そういった事も加味されていると思うが、FIA(国際自動車連盟)は実験という形で、今月のイギリスGPを含め、3レースでスプリント予選を導入する事を決めた。
FIAの会長は「F1がファンと分かち合うための新たな方法を模索し、スプリント予選の概念を通じてレース週末のスペクタクル性が高まる事が喜ばしい」とコメントしている。
https://www.chunichi.co.jp/article/244088
詳しくはここでは書かないが、走行距離が短くなってレースの所要時間が短縮された分、見どころが1.5倍に増えた。関係者は大忙しでたまったものではないだろうが、観る方からしたら楽しみが増えそうだ。
F1は常にルール変更、変化をしており、2011年にはDRS(ドラッグ・リダクション・システム)と言って、ボタンを押すとリヤウイングのフラップが開き、スピードが上がる機能が加わって、前の車をオーバーテイク、抜きやすくなった。
「それじゃゲームと同じじゃん!スポーツじゃないよ!平等にしてよ!」と僕も思ったが、いざレースを観ていると、抜きつ抜かれつのレース展開が増えて、とても楽しい。ただこれはSSOの意見なので、若者からすれば、もっと大胆なエンタメが必要だろう。
盛り上がるためのルール変更は未来のために必要だ。
極端な事を書こう。
野球は7回までで良い気がする。
サッカーも前後半30分ずつで良い気がする。
「ふざけんな!」「台無しだ!」そういう意見が聞こえてくる。
でもスピード化、短縮化は避けられない。
YouTubeだって15分以上の動画を観ていられるだろうか?3分ぐらいでまとめてもらいたい。
今までも少しずつ行われてきたルール変更
卓球も選手の技術向上によってボールスピードが速くなり、ラリーが続かなくなったので、ボールのサイズを大きくして空気抵抗を増し、ラリーが続く様にした。
そして1セット21点の3ゲームマッチだったが、逆転しやすい様にと、1セット11点7ゲームマッチに変更になった。
僕は卓球経験者だったので、11点なんて1セットの大事さがなんか軽くない?と思ったが今はもう観慣れたし、この方が盛り上がる。
サッカーも昔はキーパーへのバックパスをキャッチする事もOKだったので、時間稼ぎが簡単に出来た。
ボールが外に出た場合も、今はボールボーイが他のボールを渡して、すぐにスローインするが、昔は1試合で使うボールは原則1個だったので、観客席にボールが入ろうがそのボールを拾ってきてスローインをしていた。
今の時代、そのルールでサッカーをやられたらSSOでも退屈で仕方がないと思う。
さらにはサッカーゴールを大きく変更する計画も存在するらしい。これは選手の体格が大きくなった事も要因だが、時代に適したルール変更はいつの時代も行われてきたのだ。
コロナ禍で交代選手が5人になったが、後半の交代による面白さは圧倒的に増した。コロナ禍が明けても、もうこのままで良いと思う。
野球も7回までであれば、投手の登板過多の問題も軽減される。ノーヒットノーランの可能性も高まる。
サッカーも合計60分であれば、コンディション悪化も軽減され、常に週2回の試合開催が可能になり、若者の目にふれる機会が増えるかも知れない。
この意見はSSOの僕の意見だ。スポーツ観戦に興味のない若者の意見はもっと斬新なものになるだろう。
音楽も昔は2ビートだったのが、今では32、64ビートの音楽もスタンダードになってきている。どんどん細かく、速くなっているし、それを求めている所もある。
ユーザーも進化しているのだ。
でも、ルール変更は少しずつと言うのも、とても大事な気がしている。
外食は一口目の味が濃いから美味しいのだ。新規ユーザーを増やすには外食の味が大事。
でも毎日があの濃い味だと疲れてくる。全部外食だと、食事という本質を失いかねない。
スポーツもそこは本当に大切な部分だ。結局はバランスと言う事になるのだが、SSOの僕からすれば家の味が美味しいんだ!が定着している事で外食の味を忘れがちだ。
僕も初めはにわかだった。
ルール変更もおじさん達が集まって決めるのでは変われない。大事な会議こそ若者の意見を取り入れてほしいものである。
東京五輪で未来のルールを探れ
オリパラが始まった。普段あまり観ない競技も沢山あり、退屈だと感じる競技もあるだろう。
その競技を観戦する上でもっとこうだったら盛り上がるなぁと思う事が、成熟してしまっている野球やサッカーなど、スポーツの未来のためのヒントになるかも知れない。
そういう視点でオリパラを観るのも良いだろう。
それにしてもこのままどんどん高速化や短縮化が進むと、未来の野球は3回まで。サッカーは前後半5分ずつみたいな事になっているかも?
ではでは土屋礼央でした。
著者プロフィール
土屋礼央(つちや れお)
1976年生まれ、東京都国分寺市出身。RAG FAIRとして2001年にメジャーデビュー。 2011年よりソロプロジェクト「TTRE」をスタート。FM NACK5「カメレオンパーティー」TBSラジオ「たまむすび(木曜パートナー)」NHKラジオ第一「鉄旅・音旅 出発進行!~音で楽しむ鉄道旅~」などに出演中。主な著書に「ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。」「FC東京のために200兆円で味スタを満員にしてみた」「なんだ礼央化―ダ・ヴィンチ版」など。
・Twitter - 土屋礼央 @reo_tsuchiya
