なぜバルサは厄介者デンベレの“飼い殺し”を止めたのか。番記者が明かす騒動の顛末と方針転換した「3つの理由」【現地発】
「練習を見れば、一目で分かる。いつも驚かされている。彼のポジションで世界トップ5に入る。判断ミスを繰り返す傾向が相変わらずだとしてもね」
しかし、デンベレは「脅迫には負けない」とSNSを通して反発。圧力に屈することはなかった。そんな両者の軋轢を目の当たりにして渋い表情を浮かべていたのが他でもないシャビだ。当時はまだアダマ・トラオレとピエール=エメリク・オーバメヤンが加入する前。アブデ・エザルズリやフェラン・ジュグラが期待以上の働きを見せていたとはいえ、指揮官はチームが巻き返しを期すには、デンベレが必要な戦力と考えていた。
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ジョアン・ラポルタ会長はそんなシャビの希望を受け入れたのは、レアル・マドリーと激突するスーペルコパ・デ・エスパーニャの準決勝が目前に迫っていたからだ。しかしそれが限界だった。コパ・デル・レイのラウンド・オブ16のアスレティック・ビルバオ戦の前日に、契約延長に応じない限り、2度とバルセロナのユニホームを着てプレーすることがないと決定したのだ。
このクラブの強硬路線への転換はデンベレが予想していないことだった。「それは代理人も同じだろう。結局のところ、デンベレは彼らから言われるがまま行動しているに過ぎない」。クラブ内部からこんな証言が聞こえてくるが、彼らの不満の根底にあったのがデンベレサイドの態度の豹変だった。
一旦、双方は条件面で基本合意に達していた。にもかかわらず、突然、契約延長ボーナス(内訳は代理人1500万ユーロ+デンベレ3000万ユーロ)と年俸3000万ユーロという逆オファーを提示してきたのだ。一方、デンベレ側は、メールを送っても返信がなく、最終オファーがダウン提示だったと主張する。
ジェラール・ピケはそんなデンベレについて、「何度かどうするのかって聞いたけど、煮え切らない返答ばかりだった。いつも成り行き任せって感じだ」と語っている。移籍市場の締め切りが近づく中、クラブは圧力をかけ続け、「これ以上起用することはない」と態度を鮮明にした。
しかし代理人が「数か月間、怪我で戦列を離れた時は何も起こらなかった」と応じれば、デンベレも「4か月なんてあっという間だ」と追随。結局、強硬手段も、暖簾に腕押しだった。
そう考えれば、デンベレが冬の移籍市場締め切り直前に届いたトッテナムからのオファーを一蹴したのは当然の成り行きと言える。クラブ内部には、来シーズンからの加入でパリ・サンジェルマンとすでに合意していると考えている者は少なくなく、「6か月間ここに残ることを選んだ。これは彼とクラブの双方にとって良くないことだ。理解に苦しむ」とラポルタは眉をひそめたが、すでに後の祭りだった。
移籍市場終了後に、クラブが矛を収めたのは周知の通り。これはやはりシャビの意向によるところが大きい。理由は主に3つある。1つ目が試合の流れを変えたり、他のウイングへの負担を軽減するのに役立つと理解しているから。2つ目がロッカールームにネガティブな空気が入り込むことを恐れたから。そして3つ目は、常々口にしていたように、“飼い殺し”を続けることはモビング(職場での心理的な嫌がらせ)に当たる可能性があり、クラブのイメージ悪化に繋がると考えたからだ。
来シーズンに向けてセサル・アスピリクエタ、アントニオ・リュディガー、アンドレアス・クリステンセン(いずれもチェルシー)、フランク・ケシエ(ミラン)といった選手の獲得を目指している中、それはもちろん得策ではない。さらに今のバルサにとって何が先決かと言えば、チャンピオンズ・リーグの出場権を獲得することだ。最大の補強ターゲットのアーリング・ハーランド(ボルシア・ドルトムント)もCL出場をバルサのオファーを考慮に入れるための条件に挙げている。
文●ジョルディ・キシャーノ(エル・パイス紙バルサ番)
翻訳●下村正幸
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