また、今年になって投資を開始しているシュルンベルジェは油田開発や油田探査用機器の開発・サービスを行っている会社ですが、油田の探査や掘削機器の管理にAIを用いるなど、デジタル部門が売り上げの15%、利益の30%を占めるほどに成長しています。このようにAIを活用したデジタル部門の成長、業績への貢献を評価して、新規で組み入ています。

田村 JPモルガンやシュルンベルジュなど、一見テクノロジーとは縁遠いような産業でもAIの活用が始まっています。当ファンドでは、AIについて「インフラ」「開発」「活用」という3つの側面で銘柄を評価して組み入れるようにしています。昨年の上昇局面では「インフラ」「開発」といったテクノロジー企業の株価がけん引していましたが、今年になってから「活用」の部分で組み入れている銘柄がパフォーマンスに貢献しています。AIの進展に伴って、投資対象が広がり、これまで以上に幅広い投資対象の中から、より優れた企業を厳選して投資できるような環境になっていることが、ファンドの成績を押し上げていると感じています。

井村 AIの3つのカテゴリーは、設定時からイメージしていました。運用チームは、「AIのエコシステム」と呼んで、「インフラ」から「開発」、「活用」までを一連の調査でカバーしています。AIの「インフラ」と「開発」だけでは一般的なテクノロジー株ファンドとしての側面が強くなりますが、「活用」を加えることで、テクノロジー株ファンドにプラスαの魅力を加えたユニークな商品価値があると考えています。

 ――株価上昇で売却した銘柄はありますか? また、テスラは昨年は株価が8倍になり、割高を指摘する声も高いのですが、買い増しているのはどういう理由ですか?

滝沢 昨年後半に株価が大きく上昇し、目標株価に到達した一部の高成長銘柄については、昨年の10−12月期や、今年の1月などに売却をして対応しています。

 一方、テスラについては、長期での高い成長性を見て評価しています。電気自動車(EV)の普及は始まったばかりで、これから世界的な市場拡大が期待されます。さらに、自動運転技術や蓄電池などの事業が業績に貢献する中で利益率が更に向上すると見られ、これから成長が加速するステージにあると考えられます。今年の利益に対するPER(株価収益率)などで株価を見ると高過ぎるとみえるかもしれませんが、これからの成長を評価すると、まだまだ大きなアップサイドがあると判断しています。

 ――ESGの視点では、シュルンベルジュなど温暖化ガスを排出する企業は時代に合わないように感じますが?

井村 シュルンベルジュは石油の探査、埋蔵量の解析や開発・生産に至る技術・サービスを提供する企業であり、一見すると二酸化炭素(CO2)を排出する側として投資を回避したいところですが、今は、水素や地熱、またCO2回収技術等の再生エネルギー分野を強化しています。同社のAIやデジタル技術は、このような新たな成長市場において重要な役割を果たすと考えています。

 また、ベーカー・ヒューズという油田サービスの会社がシースリーAIというAIのソフトウエア会社との戦略パートナーシップにより、排出されるCO2の回収についてモニタリングし、解析するシステムを開発しています。日々回収するCO2のみならず、将来の回収見通しまで分析ができるようになっています。このように、伝統的企業とみられている企業の中にもAIを活用することによって、新たな企業価値を生み出そうとしている企業があります。

 アナログデバイシーズという会社は、電気自動車用の走行に影響するバッテリーを効率的に管理する半導体を開発し、再生エネルギー時代を支えるAIインフラの1つになろうとしています。テスラの電気自動車や蓄電装置、太陽光発電等も脱炭素社会に向けたプラットフォーマーの一翼を担うと期待されるという点も、当ファンドで評価しています。