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スマートフォン大手の中国シャオミ(Xiaomi、小米科技)が、日本市場への参入を認めたとの報道がなされている。中国メーカーとしても日本市場への参入はかなりの後発となるが、シャオミはどこに商機を見出して日本への参入を進めようとしているのだろうか。そしてシャオミは日本で成功を収めることはできるのだろうか。

○最近増えていたシャオミ日本進出の兆候

世界的に見るとスマートフォン市場では中国メーカーの台頭が著しく、いくつかのメーカーが日本への参入を果たしているものの、存在感はまだあまり大きいとは言えない状況にある。そうした中にあって、新たに日本市場への参入を打ち出したのがシャオミである。

シャオミは2010年設立の若い企業ながら、高いパフォーマンスを持つスマートフォンを低価格でオンライン販売するというビジネスモデルによって、中国で爆発的な人気を獲得した企業だ。その後他社の追随によって一時は苦戦するものの、独自性の強いスマートフォンを投入したり、コストパフォーマンスを武器として新興国に進出するなどして販売を拡大。いくつかの統計では、スマートフォン販売シェアで世界4位の大手メーカーにまで成長している。

そのシャオミが一部報道で、2020年に日本のスマートフォン市場へ進出すると伝えられたところ、中国のSNS上でシャオミの幹部がそれを認めたことで、同社の日本上陸が確実なものになったのである。だが実は、ここ最近の日本での動向からも、シャオミが日本への進出を図ろうとしている兆候を示す出来事がいくつか起きていたのである。

それはシャオミのスマートフォン以外の製品、そしてシャオミに関連する企業が相次いで日本に進出していることだ。実際シャオミは2017年より、やはり同社が世界的に高いシェアを持つウェアラブルデバイスなどを、TJCという会社を通じて日本で販売している。また2019年10月にはソフトバンク系のSB C&Sが、シャオミが出資する家電メーカー3社のスマート家電機器を国内で販売すると発表している。

スマートフォンに関しても、シャオミが出資しているBlackshark Technologies製のゲーミングスマートフォン「Black Shark2」が、TAKUMI JAPANという会社を通じて2019年6月より日本で販売されている。一連の動きは、間接的な日本市場への進出によってシャオミ自身の本格的な日本進出を探っていたものと見ることができよう。

○チャンスはあるが課題はやはり米中摩擦

しかしなぜ、シャオミはかなりの後発というタイミングで日本市場進出を図ろうとしているのだろうか。その理由の1つは、シャオミが今後の成長を考え海外市場開拓に力を注いでいることが挙げられるだろう。シャオミはインドでトップシェアを獲得するなど新興国で高い支持を得て販売を伸ばしているが、2017年からは欧州にも進出を果たして販路を広げつつあるなど、先進国の市場開拓も推し進めるようになってきており、日本進出もそうしたタイミングに合致したといえそうだ。

そしてもう1つは日本市場の変化であろう。日本では2019年10月に電気通信事業法が改正され、スマートフォンの値引き販売に厳しい規制が敷かれたことで、高額なスマートフォンの値引き販売が困難になった。そうしたことから最近は価格競争力に強みを持つ中国メーカーが攻勢をかけており、同じ中国のオッポは、低価格ながらFeliCaを搭載するなど日本市場に注力したオリジナルモデル「Reno A」を投入。積極的なプロモーションを実施するなどして販売拡大を進めている。

法改正は低価格に強みを持つシャオミにとって大きなチャンスが生まれたことは確かだろうし、それに加えて2020年は日本でも5Gの商用サービスが開始される年でもある。シャオミは低価格な5Gスマートフォン「Mi Mix 3 5G」を販売するなど、5Gでも低価格のラインアップを持つことから、値引き規制で5Gでも低価格が求められる日本市場に大きな商機が生まれたと判断したのではないだろうか。

オッポが日本に進出したのは2018年とごく最近であり、短期間のうちに急速に存在感を高めていることを考えれば、シャオミも日本市場への積極的なコミットによって日本市場で一定の存在感を打ち出せるチャンスは十分あると考えられる。だが一方で、シャオミが日本進出して成功を収める上で、1つの壁になりそうなのが米中摩擦だ。

同じ中国のファーウェイ・テクノロジーズやZTEが、日本市場でスマートフォン販売を急拡大していたにもかかわらず、米国から制裁を受けたことで日本市場にも大きな影響が出たことは記憶に新しい。とはいえシャオミはこれら2社と違ってネットワークインフラ関連機器を手掛けていないことから、米国から直接制裁を受ける可能性は低く、直接的なリスクがあるとは考えにくい。

それでも懸念されるのが間接的なリスクである。というのもこれまで中国メーカーを採用した携帯電話大手のいくつかが、米中摩擦の影響によるトラブルを経験したことで、現在は政治リスクが大きいとして中国メーカー製品自体の採用に慎重になっているためだ。実際ファーウェイ・テクノロジーズが制裁を受けた後、2019年秋冬商戦に向けて大手3社のメインブランドが提供したスマートフォンの中には中国メーカー製品が含まれておらず、サブブランドやMVNO、そして新規参入の楽天モバイルでの採用にとどまっている。

日本の携帯電話市場はSIMフリー端末よりも、携帯電話会社から販売される端末数の方がはるかに多いだけに、携帯電話会社への採用が見込めないとなるとビジネスが限定的なものになってしまう。それだけにシャオミが日本に進出した場合、最終的にその成否を握るのはやはり政治になる可能性が高いというのが筆者の見立てである。