携帯解約金「1000円」は官邸の横やり? 波乱巻き起こす『結論ありきの有識者会議』(石川温)
先週、降って湧いてきた携帯電話の「解除料1000円」騒動。6月11日に非公開で有識者会議が開催されたが、1000円という金額の根拠が「インターネットアンケートによるもの」だったため、有識者が反発。最終的に金額が決まることなく、次回、6月18日の会合に持ち越された。

ある業界関係者は「1000円という金額が報道された時、まさに青天の霹靂だった」と振り返る。実は騒動の背景には総務省や官邸による相当な「ゴリ押し」があったようだ。

業界関係者は次のように語る。

「解除料を安くするのは以前から議論されていた。そんななか、総務省からは『4000〜5000円でどうでしょうか』という提案があった。現実的な金額であったため、キャリア側も納得していた。しかし、突然、1000円という数字が報道され始めたので唖然とした」(業界関係者A)。

別の業界関係者も「総務省から現実的な金額の提案があった」と打ち明ける。

「我々が聞いているのも4000〜5000円という金額。5月30日までは4000〜5000円で総務省もキャリアも納得していたはずだった」(業界関係者B)。

5月30日というのは、総務省がインターネットアンケートをとった最終日だ。

業界関係者は「総務省としては4000〜5000円でキャリアと手打ちをしようとしたが、どこからか横槍が入って、もっと安い金額にせざるを得なかったのかも知れない。そのため、急遽、ネットでアンケートをとって、1000円という数字を作り上げたのではないか」と推測する。

昨年から続く、キャリアへの値下げ要請は、2018年8月に菅官房長官が「携帯電話料金は4割値下げる余地がある」という発言が発端だ。つまり、菅官房長官や官邸が総務省の尻を叩き「1000円」という数字をゴリ押しした可能性があるというのだ。

業界関係者は「キャリアとしては総務省の決定には従わざるを得ない。しかし、これが夏の参院選を睨んだ人気取り、さらには10月の消費増税に向けた不満を交わすために料金値下げが利用されているようで納得がいかない」とぼやく。

6月18日に開催される予定の有識者会議は、実は「最終回」で、この議論によって解除料が改定される見込みだ。 秋までに解除料を改定するには、この有識者会議で結論付けなければ間に合わない。

業界関係者は「キャリアにとって重要な会議でありながら、キャリアには発言権が与えられないのが納得いかない」と口をとがらす。つまり、キャリアには反論する場すら与えられない。

NTTドコモやKDDIは6月に新料金プランを始めたばかりであり、解除料が改定されれば、料金プランを作り直さなくてはいけない。またもすぐに新料金プランが出てくれば、ショップやユーザーは大混乱するのは間違いない。しかし、こうしたキャリアからの懸念の声も、有識者会議では口封じされてしまうのだ。

果たしては最終的な金額は「1000円以下」か、それとも「4000〜5000円」か。6月18日に開催される「結論ありきの有識者会議」でその答えが明らかになる。

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