『たとえば、葡萄』(大島真寿美 著)小学館会社を辞めたんだよね、と友人から報告されることが増えた。安定したポジションを得てこれからという時になぜ?と疑問だったのだが、その答えが、大島真寿美の新作長編『たとえば、葡萄』を読めば見つかるかもしれない。この物語の主人公・美月(28歳)は唐突に会社を退職してしまう。転職先も決まっていないのに無謀極まりないが、彼女は言うのである。――もうこんな会社に