「味噌は材料的に比較的ハラル認証が取りやすかった」と林善博社長。

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世界人口の約2割を占め、出生率も経済の伸びも著しいイスラム圏。東南アジアから、中東、アフリカまで広がる海外の巨大市場に加え、急増する観光客をターゲットに国内市場も動き出した。そんなイスラムビジネスの最前線をレポートする。

■地方の活性化戦略になるか

12年末に日本ハラール協会でハラル認証を取得し、マレーシア、インドネシアなどに本格的に輸出を開始したのが、ひかり味噌(長野県)だ。味噌業界として初めてハラル認証を取得した。

同社社長の林善博氏は「味噌の原料は大豆、米、塩だけなので比較的取りやすかったということはあると思います。審査の際、ハラルとそれ以外の製造工程で、紛らわしくないように白衣を違う色に変えてほしいなど細かい指摘はありましたが、比較的順調に進んだほうだと思います」と語る。同社の海外売上比率は6%程度とまだ大きくはないが、米国での販売実績があり、国際化と多角化には業界に先駆けて取り組んできたという自負がある。

東南アジア市場については、現地の経済成長と日本食ブームもあって12年の初めから動き出し、同年末にはハラル認証を取得した。認証を得たのは業務用の「ひかり白こしS」と「ひかり赤こしS」の20キロ段ボールと、個人用の「無添加味噌田舎」のカップ入りだ。現在の需要としてはフードコートのレストランなど業務用が圧倒的に多いという。海外では麹のまろやかさがある甘口で白めの色の味噌が好まれる傾向があり、そうした味覚に合う商品を選んだ。

14年からは現地企業とのコラボレーションも予定している。12年の輸出は200トンだったが、5年後には5倍の1000トンを目指す。味噌業界の消費を支えているのは団塊の世代といわれており、将来的には国内市場の大幅な縮小は避けられない。そうした状況も見越して、早くから危機感を抱き対応してきたことが早期の認証取得につながり、同社のビジネス・チャンスを広げたといえる。

こうした取り組みは、日本の地方企業の「生き残り戦略」として非常に参考になるところが多いのではないか。地方では他との競争力を持てないまま業績悪化に追い込まれる飲食店や小売店、中小企業が少なくない。が、国内市場や地域経済という軸ではなく、海外、しかもハラルに注目することで生き残りの道があるかもしれない。

奇しくも、ハラル・ジャパン協会代表理事の佐久間朋宏氏は次のように指摘する。

「人口が縮小している地方では、マーケットは縮小していると思われていますが、ハラル・ビジネスという視点で見た場合、その地域で高いシェアを獲得すればニッチでも生き残っていける」

たとえば、観光地の寿司店ならばイスラム圏の顧客専門となって旅行代理店などに売り込めば、来日した顧客を取り込むことができる。最近、町を歩いていてもスカーフを巻いた女性を多く見かけるようになった。東日本大震災の影響により海外からの観光客が減少し、中国との関係悪化も拍車をかけるなど、国内の観光業界にとっては打撃が続いていたが、ビザ緩和などの効果で東南アジアからの旅行客は増加しているのだ。

(ジャーナリスト 中島 恵=文 澁谷高晴=撮影)