ヒラメ上司の傾向と対策

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ヒラメ上司はどの企業にも生息しています。目が上につくヒラメ同様、上役の顔色しか窺わず、部下のことはまるで眼中にない管理職。小心者で臆病なのが特徴です。

トラブルがあると責任を部下に押し付けることもある。もしヒラメ上司なら、きっと仕事は進まず、ストレスは溜まる一方でしょう。

では、運悪くそんな上司を持ったらどう士気を保てばいいか。

残念ながら、即効性のある対策は見当たりません。すぐにできることと言えば……、ヒラメ上司のことを自分の意識の外に出して、可能な限り考えないようにすることぐらいです。ヒラメに限らず、他人は自分の力では変えられません。「他人」「感情」「生理反応」「過去」は変えられないもの。そうした制御不能な存在の典型がヒラメだと諦めるしかありません。

人事異動で上司か自分が他部署にいくまでは、ヒラメとは付き合う運命。よって、ストレスを溜め込み自分の精神状態が不安定にならぬよう、解決できないものと割り切ることが得策だと思います。ただし、反面教師として学ぶのはいいかもしれません。

一方、自らの手で変えられるのが「自分」「思考・行動」「未来」です。変えられないものに囚われず、こうした変えられるものにエネルギーを集中するほうが、ずっと生産的な仕事ができるはずです。いわば、ピンチをチャンスへと変える発想の転換が必要でしょう。

いかにチャンスの扉を開くのか。

ヒラメはしばしば部下の仕事の邪魔もします。情報を隠したり、権限を委譲しなかったり、と部下はたまったものではありません。

しかし、そんな困難な状況だとしても、何とか上司のメンツを立てつつ、ダメ上司に代わって仕事をこなせば、自分の能力を内外に広く知らしめることができます。

仕事の成長には「試される」→「任される」→「託される」という3つのステップがあります。

ヒラメの部下である時期は、自分が試されている時期と言えるかもしれません。上司の下でかいがいしく、かつ立派に仕事をする姿は、社内では周知の事実となり、自然と自分の株は上がっていく。

「あのヒラメの下であいつはよくやっている」と。その積み重ねによって会社の将来を託される時期がやってくる。そう信じてモチベーションをキープしたいものです。

■ヒラメの存在意義がある会社、ない会社とは

そもそもヒラメはいつどのようにしてヒラメ化したか。もし、あなたに心の余裕があるのなら、客観的に考えてみるとよいでしょう。

なぜなら、組織で働く以上、自分自身もヒラメになる可能性が大いにあるからです。おそらく、ヒラメ化した上司は、その人なりにビジネスパーソンとして必死に環境に適応し、生き延びようと知恵を働かせた結果、ヒラメに進化したのだと私は思うんです。

特に、トップがカリスマ的な企業であればあるほど、その周辺は上ばかり見るイエスマンが多くなる。企業の成長プロセスがこうしたステージにある場合、ヒラメの存在意義は案外あるものです。

ただし、社長交代や転職などでそのステージが変わった途端に状況は一変。社内ヒエラルキーという生態系に生きるヒラメは「外海」では決して生き延びられない脆弱な生き物なのです。

ヒラメも問題ですが、最近では部下の意向に振り回されてばかりの「逆ヒラメ」も増殖しています。これもやはり組織にとっては厄介な存在。理想的なのは、上も下もバランスよく気配りできる「目」を持ち、率先して群れを引っ張れるような人材でしょう。

とはいえ、人間関係はそれほどうまくいかないかもしれません。とりわけヒラメ上司の場合、部下の立場で状況を改善するのは難しい。どうしても、上司の方針に沿えないような場合は、勇気を持って部下が団結し、社長などヒラメが恐れる幹部に直談判をするという作戦もあるかもしれません。

とにかく、腐らず愚直に仕事に取り組めば、それを評価してくれる人は必ずいるということを忘れてはいけません。

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リンクアンドモチベーション代表取締役社長 小笹芳央
1961年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートを経て2000年にリンクアンドモチベーションを設立。同社独自の技術「モチベーションエンジニアリング」が一躍話題に。

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(リンクアンドモチベーション代表取締役社長 小笹芳央 構成=堀 朋子 撮影=上飯坂 真)