なぜ今季の投手・大谷は打たれないのか? 対峙して「超一流」と脱帽したMLB戦士が証言した防御率0.73の歴史的活躍の「理由」

マウンド上では飄々と振る舞う大谷は、淡々と投げ続けた(C)Getty Images
苦しみながらも無失点の快投
またしても、支配力は発揮された。現地時間5月20日、敵地で行われたパドレス戦に大谷翔平(ドジャース)が、「1番・投手兼指名打者」で先発出場。4月22日以来の“投打リアル二刀流”でのプレーとなったが、投げては5回(88球)、被安打3、4奪三振、無失点で今季4勝目を挙げた。
【動画】これぞ二刀流復活!大谷の先頭打者弾、8号アーチシーン
打っても初回に初球を先頭打者弾となる8号ソロを放つ活躍を見せたこの日は、決して状態は万全ではなかった。試合後に米スポーツ専門局『Sports Net LA』などの取材に応じた大谷は、「今日までの1週間もあんまり投げ心地が良くなく入ってきて、不安な感じはありました」と証言。マウンド上で抱いていた感覚を正直に打ち明けている。
「投げ心地がそんなに良くなかったので、やっぱり、自分の中のパフォーマンスレベルとして、高いものが出せるかどうかっていうのが、一番しっくりきてなかったかなと」
4登板ぶりに“投打二刀流”で起用したデーブ・ロバーツ監督も「今日は彼のベストと呼べる球威ではなかった」と認めるほどの状態。球数がかさんでの“早期降板”も必然だったのかもしれない。それでも大谷はスコアボードにゼロを刻んだ。しかも、初回に“自援護”をしてくるのだからパドレスナインからしたらたまったものではないだろう。
約3年ぶりに投打二刀流での完走を目指している今季は、開幕から「投手」としてのパフォーマンスが際立っている印象だ。ロバーツ監督が「彼はサイ・ヤング賞を獲りたいと思っている」と認める内容の良さは、数字を見ても明らかである。開幕から8登板(49.0イニング)を消化しての防御率は0.73。さらにWHIP0.84、被打率.163、奪取した空振り率32.3%と「打たれない」と言って過言ではない。
歴史的に見ても二刀流スターの現状は稀有だ。MLBの過去30年間で、シーズン最初の8先発で、大谷よりも低い防御率を記録した投手は、ジェイコブ・デグロム(0.71/2021年)とザック・グレインキー(0.60/2009年)だけ。当然ながら両者とも投手専任である。

この日は打っても右中間に特大の一発を放った大谷(C)Getty Images
「ああいう投手からヒットを打つってのは、本当に難しい」
では、歴史的な投球を続ける今季の「投手・大谷」は、打席で目の当たりにしているライバルたちの目にはどう映っているのか。
パドレスの主砲ザンダー・ボガーツは、20日の試合後に「結局はメジャーリーグでああいう投手からヒットを打つってのは、本当に難しいんだよ。本当に……」と吐露。その上で対峙した偉才をどう見ていたのかを告白している。
「まぁ、結局は5回を無失点に抑えられたわけだ。そりゃあもう脱帽するしかない。今日は5回裏のダブルプレーが彼(大谷)にとって大きくなったと思う。本当にね。あの時、オオタニの球数はかなり増えていたし、タティスが打った打球も間違いなく打球速度100マイルを超えていたけれど、不運にもベッツの正面を突いてしまった。オオタニのような一線級の投手を相手にする時は、ああいう場面、あの一瞬のチャンスを何が何でもモノにするしかないんだ」
さらに「実際はどうか分からないけど、僕の目から見て、今日のオオタニが明らかな失投を投げた記憶はほとんどない」と漏らした33歳の名手は、こうも続けている。
「今日のオオタニはストライクゾーンの際どい隅への投げ分けを本当に素晴らしく使っていた。いくつかのイニングではコントロールに苦しんでいるようにも見えたけれど、やっぱり、『超一流』と呼ばれる偉大な投手たちは、本調子でなくても最終的に抑える方法を必ず見つけ出すんだ。今夜の彼はまさになんとかできる道筋を俺たちから見出したんだ。俺たちはその牙城を崩せなかった。ただそれだけのことさ」
ライバルが「超一流」と認める大谷だが、規定投球回には1イニング足りていない。それでもサイ・ヤング賞の筆頭候補に推され続ける現状は、いやはや脱帽するしかない。
果たして、最終的にどこまでの数字を残すのか。投打二刀流でレギュラーシーズンを完走できるかどうかも含めて興味は尽きない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
