「認知症が進行した安岡に酒を飲ませ『結婚誓約書』を書かせ…」 『地獄に堕ちるわよ』が描かない細木数子のもう一つの顔 「島倉千代子を『食い物』のように搾取」
占い師・細木数子氏(享年83)の生涯を描いたネットフリックスのドラマ「地獄に堕ちるわよ」が話題だ。4月27日に配信されるや、国内視聴ランキング1位をキープ。しかし虚実に彩られた細木氏の人生には、ドラマでも描けない禁断のエピソードが隠されているという。
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「私の著作が参考文献としてクレジットされているので、私にも視聴用アドレスが送られてきました。ただネットフリックスや制作側の人間と会ったことは一度もありません。ネット上での評価は高いようですが、配信前に視聴した私の感想は、緊張感に欠けた中途半端な作品というものです」

こう語るのは、『細木数子 魔女の履歴書』(講談社・2006年刊行)の著者でジャーナリストの溝口敦氏(83)である。
自らを創始者とする「六星占術」で占いブームを巻き起こし、00年代には“視聴率女王”としてテレビのバラエティー番組を席巻……。そんな希代の占い師・細木氏の半生を描いた全9話のドラマは、第1話冒頭で〈この物語は事実に基づいた虚構である〉とのテロップが表示される。民放キー局関係者によれば、
「養女で後継者の細木かおりさん(47)をはじめ、関係者の許諾を取らずに制作されたため、最初に“フィクションだ”と明示する必要があったといいます。エンドロールで参考文献として登場するのは2冊で、うち一つが細木の自著『女の履歴書 愛・富・美への飛翔』です」
置屋まがいの茶屋
もう一つが溝口氏の前掲書だが、それぞれは細木氏の「表」と「裏」の顔を描いた真逆の内容となる。溝口氏が言う。
「作品は両方に軸足を置いたためか、踏み込みの甘い部分が目立ちます。ドラマではまず、戦後の焼け跡の中で泥水をすすりながらたくましく生き抜く少女時代の細木の様子が描かれます。しかし細木の生家は都内・渋谷の百軒店という、関東大震災以降に発展した飲食街に根を張り、置屋まがいの茶屋を営んでいたのが実態です。つまり紋切型の“戦後の貧しさ”には必ずしも当てはまらない特殊な地域・家庭環境で育ったのです」
幼い細木氏が、お金を稼ぐために“ビール”と称して、中身は麦茶の飲料を闇市で売ろうとするエピソードなど、ドラマ前半部は予定調和の“お涙頂戴”を強調する内容だという。
「ただし後半になると、細木の裏の顔に迫り始め、ドラマは面白くなってきます。例えば、1975年に起きた歌手・島倉千代子の金銭トラブルを巡る細木の立ち回りなどはその一つです」(同)
島倉を散々食い物に
後年、NHK紅白歌合戦への連続30回出場を果たす島倉さんは、すでに当時、国民的な人気を博していた。しかし交際相手のつくった借金の保証人となったことから一転、大勢の債権者から追われる身となった。
「島倉のマネージャーを買って出た細木は、10億円を超える借金を整理すると言いながら、島倉を散々食い物にしました。その辺りの“搾取”の様子は不完全ながらも相応に描かれていました」(溝口氏)
戸田恵梨香(37)演じる細木氏が「生涯愛した男」として、生田斗真(41)扮する江戸川一家総長・堀田雅也なる人物がドラマ内に登場するが、
「実際の相手は、小金井一家総長の堀尾昌志です。細木は堀尾の実質的な姐(あね)さん(女房)となり、堀尾のことを“お父さん”と呼んでいた。そればかりか、堀尾の代わりに賭博の胴元を引き受けたこともあります。彼らが二人三脚で手を染めた悪行は数知れずですが、それらダークサイドの一面よりも、二人の関係性をメロドラマのように仕立てた演出には正直、底の浅さを感じました」(同)
ドラマ後半部に登場する、もう一つの重要なエピソードが、易学者・安岡正篤(まさひろ)氏(享年85)との再婚騒動である。
細木家の墓の不思議
吉田茂や池田勇人、佐藤栄作など歴代首相の「指南役」とされた安岡氏と細木氏の距離が急速に縮まったのは83年。安岡氏が死去したのと同じ年だ。
「当時、認知症が進行していた安岡に酒をたらふく飲ませて籠絡。彼が所有していた本や掛け軸を自分のものとし、“結婚誓約書”まで書かせたというのが、騒動の顛末です。安岡の死後、遺族が調停を申し立て、婚姻は無効とされました。ドラマでは触れられていませんが、実は安岡のところから持ち出した本や掛け軸の一部を、細木は山口組5代目組長・渡辺芳則にも渡していたのです。安岡への接近は、彼女の“男はカネづる”という人生観を最も如実に表したエピソードです」(溝口氏)
溝口氏の著作は「週刊現代」での連載がベースとなったが、連載が始まるや、細木氏側は版元の講談社に対し、6億円の損害賠償を求める訴訟を提起。裁判は最終的に細木氏が訴えを取り下げ、溝口氏側の実質勝訴に終わるが、これを機に彼女は表舞台から姿を消すことになった。
細木氏が没したのは21年。現在、細木家の墓は都内・多摩地区の寺の一画にある。その右隣には小金井一家の歴代総長の墓が並び、細木家の墓の後方には堀尾昌志氏の墓が立っている。
両者の深い関係を今に伝えているかと思いきや、親族の一人が言うには、
「多摩の墓に数子の実母や兄たちは眠っていますが、彼女のお骨はありません。堀尾さんのお墓をここに造ったのも、歴代総長の墓を移してきたのも数子です。でも堀尾さんが92年に亡くなって以降、数子がお墓参りに来たことはないそうです。あの世でも一緒になるつもりはなかったということでしょうかね」
定期的に掃除やお参りに訪れているのは小金井一家の関係者のみで、細木氏の兄弟が姿を見せたこともないという。
「エンタメ作品として消費される危うさ」
一方で、溝口氏は、
「ドラマが無邪気にエンタメ作品として消費されていることに、一抹の危うさを感じます。ヤクザとの交際や強欲さだけではありません。細木の代名詞である六星占術に関しても、実際は占い師・神煕玲(じんきれい)から剽窃(ひょうせつ)したものです。彼女がドラマを見たら、さぞ悔しがることでしょう。司法的には、私の書いたことが事実だと認められてなお、彼女の実像を正面から描こうとしなかったのはなぜなのか。細木がテレビやメディアでもてはやされた当時の胡乱(うろん)な空気がいま再び、日本社会にまん延しているような気がしてなりません」
秘された部分にも思いをはせて見れば、よりドラマは面白くなる。
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「週刊新潮」2026年5月21日号 掲載
