インタビューに応じる外務省の宇山秀樹担当大使(4月30日、外務省で)=米山要撮影

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 南極の平和利用などについて話し合う南極条約協議国会議が11〜21日に広島市で開かれるのを前に、議長を務める外務省の宇山秀樹担当大使が読売新聞のインタビューに応じた。

 南極では近年、観光客が急増中で、宇山氏は「環境負荷を抑える一定の規制が必要だ」として、新たなルール作りに意欲を示した。

 南極のペンギンや氷山は観光客に人気で、旅行者も増えている。国際南極旅行業協会によると、2024年11月〜25年3月頃のシーズンに南極へ行った観光客数は約12万人で30年前の約15倍になった。クルーズ船ツアーのほか、内陸でのマラソン大会や冒険旅行なども企画されている。

 こうした現状について宇山氏は「観光の形態も多様化しているのに、南極条約の締約国は実効的な管理が十分に出来ていない」と課題を指摘した。その上で「環境影響を最小限にするため、どういう規制や管理を進めるべきかは大きな議題になる」と述べ、国際ルール策定に向け、会議で各国に働きかけていく方針を示した。

 会議では気候変動の影響で減少するコウテイペンギンの保護策や、各国の活動の透明性向上なども議題になる。ただ、会議の意思決定は参加国の全会一致が原則で、難航が予想される。

 会議には米中やロシア、ウクライナを含む50か国近くが参加予定だ。宇山氏は「地政学的な対立が会議にも影を落としている」と述べる一方、「南極での国際協力の拡大は全人類の利益になる。できるだけ多くの論点で一致できるよう努力したい」と意気込んだ。

 また、広島での開催について宇山氏は「原爆の惨禍を経験して世界平和を訴えてきた広島は、南極の平和利用を基本とする南極条約と親和性がある。南極で国際協力を進める決意を広島から世界に発信することは意義がある」と強調した。

 宇山秀樹氏(うやま・ひでき)1987年東大法卒。88年外務省入省。欧州局ロシア課長、在英日本大使館公使兼総領事、欧州局長、駐デンマーク大使などを経て昨年12月から現職。鳥取県出身。63歳。

「平和」に共鳴、広島で

 南極の平和利用などを定めた南極条約の協議国会議が11〜21日に開かれる広島市は、被爆地として条約の理念に共鳴して開催地に名乗りを上げた。市は「平和の大切さを感じてもらう機会になれば」と期待する。

 広島開催は、国内の選考で複数都市の中から2024年に決まった。平和的な南極の活用に向けて1961年に発効した南極条約の理念について、市国際化推進課は「被爆から国際的な支援を受けて復興し、核廃絶や恒久平和を目指している市の思いと通じる」としており、平和都市を改めてアピールしていく考えだ。

 会議には、世界各国から政府関係者や研究者ら約400人が参加する見込み。市は広島平和記念資料館(広島市中区)の見学を促し、平和記念公園(同)で松井一実市長と会議の運営関係者らによる献花も予定する。松井市長は「国際社会に平和の尊さが広がるよう取り組んでいく」という。

 市内では関連イベントが相次いで開かれている。科学館のプラネタリウムでは4月21日、一日中太陽が沈まない「白夜」など南極の現象が紹介され、参加した広島県東広島市の大学生、中島ちゆきさん(20)は「南極に興味が湧くきっかけになった」と語った。同25日には南極の氷や岩石に触ったり、南極をVR(仮想現実)体験したりするイベントも行われた。

 広島市の担当者は「国際情勢が緊迫化する中、国際協力の大切さも感じてもらえるよう貢献したい」と話している。