2026年春ドラマ22作を“視聴率無視”でガチ採点「今春トップクラスの脚本・演出・映像」「女性5人で固めた鉄板の布陣」「TBS金曜ドラマの得意ジャンル」
●「政治モノは数字が取れない」定説を覆せるか
主要22作がそろった2026年春ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。
別記事(「今春ドラマトップの主要キャスト」「意外性と没入感」「一枚上のクオリティ」2026年春ドラマのオススメ5作は? ドラマ解説者が22作の傾向を徹底分析「見たことのない設定」「ファンタジー乱発の現実と未来」) において2026年春ドラマの主な傾向を【[1]見たことのない設定が目白押し [2]ファンタジー乱発に浮かぶ現実と未来】の2つと解説。
おすすめドラマとして、『エラー』(ABC・テレビ朝日系 日曜22時15分)、『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系 月曜22時)、『田鎖ブラザーズ』(TBS系 金曜22時)、『刑事、ふりだしに戻る』(テレビ東京系 金曜21時)、『102回目のプロポーズ』(フジ系 水曜23時)の5作を選んだ。
本記事では、それらを含む主要22作のレビューと目安の採点(3点満点)を挙げていく。
『サバ缶、宇宙へ行く』 月曜21時〜 フジ系
出演者:北村匠海、出口夏希、神木隆之介ほか
寸評:前作『ヤンドク』に続く事実ベースのオリジナルで、感動とリアリティが担保される反面、わかり切っている結末へ向かう物足りなさがある。さらに第1話が急ぎすぎて「なぜ宇宙?」「なぜサバ缶?」が消化できないまま進む戸惑いも。高校の青春ムードと福井ロケの素朴な風景は魅力的だが、シンメトリー多用や細かいカット割りなどのスタイリッシュ系演出で、みずみずしさやのどかさが薄れているのが気がかり。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

北村匠海
『銀河の一票』 月曜22時〜 カンテレ・フジ系
出演者:黒木華、野呂佳代、松下洸平ほか
寸評:「政治モノは数字が取れない」という定説を覆せるか。佐野亜裕美P、松本佳奈監督、脚本・蛭田直美と黒木、野呂と女性5人で固めた布陣は鉄板で時勢にも合う。ダブルヒロインの魅力を高めて政治をどこまでエンタメとして見せられるか。政治の闇をフィーチャーしすぎると苦戦必至であり、“野呂都知事”の誕生を祝う大団円で盛り上がりたい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

黒木華
『産まない女はダメですか? DINKsのトツキトオカ』 月曜23時6分〜 テレ東
出演者:宮澤エマ、浅香航大、北山宏光ほか
寸評:DINKsのリアルと心境の変化をとらえた物語と思いきや、すぐにサイコホラー系にチェンジ。子どもじみた夫、毒母、異様な執着の後輩、育児ノイローゼの女性など「問題アリ」の人物が暗躍し続けるダークサイド偏重型の作風となった。追い込まれた宮澤の演技は要注目だが、クライマックスはすべての鬱憤を晴らす展開を見せたいところ。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

宮澤エマ
『リボーン〜最後のヒーロー〜』 火曜21時〜 テレ朝系
出演者:高橋一生、中村アン、鈴鹿央士ほか
寸評:前期の『リブート』とコンセプトやタイトルが似ているように1人2役の高橋がどう演じるかを楽しむ作品。ただ虚実皮膜の世界観だった『リブート』に対して当作は突き落とし、タイムスリップ、転生という何でもアリの粗い設定が視聴者を選ぶ。商店街再生も情報番組でこすられたエピソードがそろい、他作以上に脚本の質が成否を左右しそう。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

高橋一生
『夫婦別姓刑事』 火曜21時〜 フジ系
出演者:佐藤二朗、橋本愛、矢本悠馬ほか
寸評:「秘密の夫婦」「年の差夫婦」は70年代から続く王道パターンでそれを令和にアップデートという秋元康らしいプロデュース。主演2人のギャップは魅力的だが、コメディとシリアスの振り切り方が両方とも大きく、火曜21時にしては見て疲れる感がある。同枠の『踊る大捜査線』のようにコメディのトーンは抑えたほうが見やすそう。「福田雄一監督作品の佐藤二朗」のイメージに引っ張られたのではないか。3話までが放送された現時点では、内容と乖離したタイトルは悪ノリであり、批判されて仕方なし。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

佐藤二朗
『時すでにおスシ!?』 火曜22時〜 TBS系
出演者:永作博美、松山ケンイチ、佐野史郎ほか
寸評:若年層の恋愛と仕事を扱ってきた火曜ドラマが「子育てを終えた主婦の第二の人生」を選んだことに驚かされる。ただ鮨アカデミーという舞台は斬新であり、定時制ドラマのようにさまざまな年齢・立場の生徒が集う分、人間ドラマは作りやすい。各話のエピソードは薄味なため「生徒の誰かに共感できるか」は微妙。見応えを増すために、鮨職人の技術や魚の知識などをうまく盛り込んだほうがいいかもしれない。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

永作博美
『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』 火曜22時〜 NHK総合
出演者:中島健人、田中麗奈、鈴木福ほか
寸評:コンビニのフェロモン王子と何でも屋のワイルド男子という2役を中島がどう演じるか。山下智久の『正直不動産』と似た設計の連ドラであり、自由な制作環境にあるNHKにしては保守的と言わざるを得ない。地方都市が舞台であるうえに、コンビニという小さなスペースの物語だけに誘因力は弱めで、女性層に癒しを感じさせたいところ。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

田中麗奈
●安心して見られるハマリ役
『ボーダレス〜広域移動捜査隊〜』 水曜22時〜 テレ朝系
出演者:土屋太鳳、佐藤勝利、井ノ原快彦ほか
寸評:「移動捜査課」「トラック」「7人の刑事」という設定をどう受け止めるかで評価が変わる作品。緊急性の高い医療の『TOKYO MER』と比べると必然性に欠ける設定だけに、警察内部の人間模様を掘り下げて引きつけたいところ。『踊る大捜査線』『教場』シリーズなどを手がけた君塚良一の脚本でありエンタメ性には期待したいが、1号車、2号車の設定や登場シーンなどは子ども向けドラマの感もある。テレ朝なら特撮系が放送されている休日朝のほうが受けそう。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

土屋太鳳
『月夜行路―答えは名作の中に―』 水曜22時〜 日テレ系
出演者:波瑠、麻生久美子、柳俊太郎ほか
寸評:「主人公がトランスジェンダーで文学オタク」「文学の知識が鍵のミステリー」というかなりの異色作。原作は「本の楽しさを伝え、本を売りたい」という出版業界のロジックで作られた“小説ファン向けの小説”のため、映像作品との相性は微妙か。実際アニメーションや吹き出しなどを多用した演出は没入感を分断し、バラエティのムードを感じさせられる。同じ本の世界では辞書編集の世界を描いた『舟を編む』のような演出上の自然さは感じられず。ただ文学オタクの聖地巡礼シーンはリアルな“推し旅”を見ているようでほっこりさせられる。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

波瑠
『LOVED ONE』 水曜22時〜 フジ系
出演者:ディーン・フジオカ、瀧内公美、八木勇征ほか
寸評:法医学系の作品は多く、この枠でも昨夏に『最後の鑑定人』を放送したばかりで差別化は難しい。ライターズルーム形式を採用しているが、1話完結型ではエピソードを練り上げることは困難ではないか。ディーン独特の異国感、松山博昭監督の色彩豊かな映像、イケメンぞろいなどで重くなりすぎず、いい意味での軽さを出せていることが救い。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

ディーン・フジオカ
『102回目のプロポーズ』 水曜23時〜 フジ系
出演者:せいや、唐田えりか、伊藤健太郎ほか
寸評:「賛否は織り込み済みで、局の貴重な財産を生かしていこう」という戦略は民放にとって重要であり、無難なリメイクではなくリスクのある続編に挑戦したところは好感が持てる。『101回目』は格差純愛だけでなく、底抜けに明るいトークが重要な作品だったが、『102回目』はせいやと武田鉄矢らがそれを担うなどポイントは外していない。「浅野温子が演じる薫が亡くなった」という設定以外はバランスのいいプロデュースが見られるが、30分尺は物足りなさを感じてしまう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

せいや
『今夜、秘密のキッチンで』 木曜22時〜 フジ系
出演者:木南晴夏、高杉真宙、瀧本美織ほか
寸評:“共同テレビとマガジンハウスで共同開発した漫画とほぼ同時スタート”というビジネス的な仕掛けによるメリットとデメリットが見受けられる。メリットは互いのノウハウをかけ合わせられ、PRの相乗効果を狙えること。一方のデメリットはファンタジー、薬膳料理、極端なモラハラ夫などの無難な設定を詰め込みがちになってしまうこと。特に“ゴーストイケメンシェフ”という設定は夢物語すぎて「シビアな現実を生きる令和の人々に響くか」と言えばあやしい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

木南晴夏
『君が死刑になる前に』 木曜23時59分〜 読テレ・日テレ系
出演者:加藤清史郎、鈴木仁、唐田えりかほか
寸評:「7年前にタイムスリップした主人公ら3人が連続殺人事件の死刑囚と出会う」というホラーテイスト強めのサスペンス。事件の真相とタイムスリップした意義をどう結びつけるのか。それが序盤で見えなければ、安易なファンタジーの悪用とみなされるリスクが高い。事実上のヒロインに唐田を起用するなど攻めのプロデュースには好印象。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

加藤清史郎
『刑事、ふりだしに戻る』 金曜21時〜 テレ東系
出演者:濱田岳、石井杏奈、鈴木伸之ほか
寸評:テレ東×アミューズクリエイティブスタジオの共同製作によるオリジナルで、今作が第4弾だけにコラボがこなれてきた感がある。「人生と恋、事件の捜査をやり直すタイムリープサスペンス」というコンセプトは何度も見てきたものだが、過不足のない脚本・演出、映像の作り込みなどは今春トップクラス。濱田のハマリ役で安心して見られる。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

濱田岳
●静かなトーンの中の“怒り”“深い傷”
『田鎖ブラザーズ』 金曜22時〜 TBS系
出演者:岡田将生、染谷将太、中条あやみほか
寸評:“クライムサスペンス&ミステリー+家族の物語”というジャンルは、最近では『クジャクのダンス、誰が見た?』『ライオンの隠れ家』、古くは『流星の絆』などTBS金曜ドラマの得意ジャンルだけに安定感たっぷり。近年、他のドラマ枠もこれを踏襲しようとしているが、レベルの違いを見せている。静かなトーンの中にこぼれ出るような怒りや深い傷がにじみ、回を追うごとに盛り上がりが増していきそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

岡田将生
『余命3ヶ月のサレ夫』 金曜23時15分〜 テレ朝系
出演者:白洲迅、桜井日奈子、新川優愛ほか
寸評:「末期がんの余命宣告」「妻の不倫と浮気」というダブルパンチを受ける主人公が痛々しく、早々に反撃の一手を見せなければ視聴離れのリスクが高そう。そもそも妻は浮気レベルではなく長年の交際であり、相手に性的な利用もされ、さらに育児放棄という非現実的な設定。つらさで感情移入を狙うのではなく反撃のカタルシスを楽しませる作品であり、「まさかの末期がん克服」というハッピーエンドがあってもいい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

白洲迅
『タツキ先生は甘すぎる!』 土曜21時〜 日テレ系
出演者:町田啓太、松本穂香、江口洋介ほか
寸評:フリースクールが舞台だけに慎重かつ丁寧に作られた作品だが、タイトル通り「甘すぎる」ことが共感度とエンタメ性を下げている。当事者から見たら「そんなにうまくいかない」というファンタジーのレベルだけに「社会的な関心を集めるきっかけになるか」も未知数。子どもの問題が1話で解決するのではなく、「なかなか解決しない」「全編をかけて解決する」というエピソードをもっと見せておきたいところ。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

町田啓太
『ターミネーターと恋しちゃったら』 土曜23時〜 テレ朝系
出演者:宮舘涼太、臼田あさ美、石田ひかりほか
寸評:ほぼSTARTOのドラマ枠だけに「彼らのアイドル性をどう扱うか」「個人のファン以外をどれだけ引き込めるか」の2点が重要だが、宮舘の良さを引き出せているかはあやしい。序盤はターミネーターという役柄に縛られているからか、バラエティで見せる生き生きとした姿は見せていない。恋愛とは遠い関係性の2人がどのように距離を近づけていくのか。かなりのスローペースで描いたほうが純愛を感じそう。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

臼田あさ美
『時光代理人』 土曜23時40分〜 東海テレビ・フジ系
出演者:佐藤大樹、本郷奏多、林芽亜里ほか
寸評:「写真撮影者に憑依してタイムスリップできる」「写真撮影されたとき何が起きたのか感じ取れる」という2つの特殊能力は、70・80年代に放送されたNHKの『少年ドラマシリーズ』を彷彿させるライトな設定。必然性や辻褄はゆるめのファンタジーだけに深く考えずに見たいところだが、各話のエピソードはドラマティックかつハートフルで意外な没入感がある。母の失踪という大テーマをもっと見せたい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

佐藤大樹
『GIFT』 日曜21時〜 TBS系
出演者:堤真一、山田裕貴、有村架純ほか
寸評:ルールを知らない人が多い“車いすラグビー”は思い切ったテーマ。さらに“孤独な天才宇宙物理学者”という主人公のかけ合わせも難解で間口の狭い作品になってしまった。見はじめてみるとプレーシーンも選手の人間ドラマも熱く、レク派とマジ派などのディテールもリアルを感じさせられる。設定は難解だが、昭和時代から「仲間や家族の大切さ」「愛と夢とは何なのか」を描いてきたド真ん中の日曜劇場。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

堤真一
『エラー』 日曜22時15分〜 ABC・テレ朝系
出演者:畑芽育、志田未来、藤井流星ほか
寸評:まず“童顔の小柄なダブル主演がヘビーな設定を背負う”というギャップに映像的な面白さがある。さらにその2人が「他人以上友達未満」から徐々に絆が芽生え、一方で罪悪感が募るという二面性に引きつけられていく。テーマの「人は取り返しのつかない失敗をしたとき、どう向き合えばいいのか」だけでなく、思わぬ不倫、新たな罪、1億円の損害賠償、迫る刑事の手などのシーンが次々に展開していく弥重早希子の脚本が冴え渡っている。その弥重がライターズルームの筆頭を務めた『3000万』を彷彿させる構成で結末が読めないことも魅力。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

畑芽育
『10回切って倒れない木はない』 日曜22時30分〜 日テレ系
出演者:志尊淳、仁村紗和、京本大我ほか
寸評:あえて韓国ミックスの作風に挑むのは「これで若者を引きつけたい」という狙いだが、K-POPや韓国美容などのファンと韓国ドラマの視聴者層は必ずしも一致せず、マーケティングに疑問を感じる。近年、テレ東の深夜帯で目立つ“波瀾万丈×純愛”というコンセプトがプライム帯で通用するのか。志尊と仁村の組み合わせは序盤から評判がいい。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

志尊淳
木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら
主要22作がそろった2026年春ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。
別記事(「今春ドラマトップの主要キャスト」「意外性と没入感」「一枚上のクオリティ」2026年春ドラマのオススメ5作は? ドラマ解説者が22作の傾向を徹底分析「見たことのない設定」「ファンタジー乱発の現実と未来」) において2026年春ドラマの主な傾向を【[1]見たことのない設定が目白押し [2]ファンタジー乱発に浮かぶ現実と未来】の2つと解説。
本記事では、それらを含む主要22作のレビューと目安の採点(3点満点)を挙げていく。
『サバ缶、宇宙へ行く』 月曜21時〜 フジ系
出演者:北村匠海、出口夏希、神木隆之介ほか
寸評:前作『ヤンドク』に続く事実ベースのオリジナルで、感動とリアリティが担保される反面、わかり切っている結末へ向かう物足りなさがある。さらに第1話が急ぎすぎて「なぜ宇宙?」「なぜサバ缶?」が消化できないまま進む戸惑いも。高校の青春ムードと福井ロケの素朴な風景は魅力的だが、シンメトリー多用や細かいカット割りなどのスタイリッシュ系演出で、みずみずしさやのどかさが薄れているのが気がかり。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『銀河の一票』 月曜22時〜 カンテレ・フジ系
出演者:黒木華、野呂佳代、松下洸平ほか
寸評:「政治モノは数字が取れない」という定説を覆せるか。佐野亜裕美P、松本佳奈監督、脚本・蛭田直美と黒木、野呂と女性5人で固めた布陣は鉄板で時勢にも合う。ダブルヒロインの魅力を高めて政治をどこまでエンタメとして見せられるか。政治の闇をフィーチャーしすぎると苦戦必至であり、“野呂都知事”の誕生を祝う大団円で盛り上がりたい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『産まない女はダメですか? DINKsのトツキトオカ』 月曜23時6分〜 テレ東
出演者:宮澤エマ、浅香航大、北山宏光ほか
寸評:DINKsのリアルと心境の変化をとらえた物語と思いきや、すぐにサイコホラー系にチェンジ。子どもじみた夫、毒母、異様な執着の後輩、育児ノイローゼの女性など「問題アリ」の人物が暗躍し続けるダークサイド偏重型の作風となった。追い込まれた宮澤の演技は要注目だが、クライマックスはすべての鬱憤を晴らす展開を見せたいところ。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『リボーン〜最後のヒーロー〜』 火曜21時〜 テレ朝系
出演者:高橋一生、中村アン、鈴鹿央士ほか
寸評:前期の『リブート』とコンセプトやタイトルが似ているように1人2役の高橋がどう演じるかを楽しむ作品。ただ虚実皮膜の世界観だった『リブート』に対して当作は突き落とし、タイムスリップ、転生という何でもアリの粗い設定が視聴者を選ぶ。商店街再生も情報番組でこすられたエピソードがそろい、他作以上に脚本の質が成否を左右しそう。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

『夫婦別姓刑事』 火曜21時〜 フジ系
出演者:佐藤二朗、橋本愛、矢本悠馬ほか
寸評:「秘密の夫婦」「年の差夫婦」は70年代から続く王道パターンでそれを令和にアップデートという秋元康らしいプロデュース。主演2人のギャップは魅力的だが、コメディとシリアスの振り切り方が両方とも大きく、火曜21時にしては見て疲れる感がある。同枠の『踊る大捜査線』のようにコメディのトーンは抑えたほうが見やすそう。「福田雄一監督作品の佐藤二朗」のイメージに引っ張られたのではないか。3話までが放送された現時点では、内容と乖離したタイトルは悪ノリであり、批判されて仕方なし。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

『時すでにおスシ!?』 火曜22時〜 TBS系
出演者:永作博美、松山ケンイチ、佐野史郎ほか
寸評:若年層の恋愛と仕事を扱ってきた火曜ドラマが「子育てを終えた主婦の第二の人生」を選んだことに驚かされる。ただ鮨アカデミーという舞台は斬新であり、定時制ドラマのようにさまざまな年齢・立場の生徒が集う分、人間ドラマは作りやすい。各話のエピソードは薄味なため「生徒の誰かに共感できるか」は微妙。見応えを増すために、鮨職人の技術や魚の知識などをうまく盛り込んだほうがいいかもしれない。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』 火曜22時〜 NHK総合
出演者:中島健人、田中麗奈、鈴木福ほか
寸評:コンビニのフェロモン王子と何でも屋のワイルド男子という2役を中島がどう演じるか。山下智久の『正直不動産』と似た設計の連ドラであり、自由な制作環境にあるNHKにしては保守的と言わざるを得ない。地方都市が舞台であるうえに、コンビニという小さなスペースの物語だけに誘因力は弱めで、女性層に癒しを感じさせたいところ。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

●安心して見られるハマリ役
『ボーダレス〜広域移動捜査隊〜』 水曜22時〜 テレ朝系
出演者:土屋太鳳、佐藤勝利、井ノ原快彦ほか
寸評:「移動捜査課」「トラック」「7人の刑事」という設定をどう受け止めるかで評価が変わる作品。緊急性の高い医療の『TOKYO MER』と比べると必然性に欠ける設定だけに、警察内部の人間模様を掘り下げて引きつけたいところ。『踊る大捜査線』『教場』シリーズなどを手がけた君塚良一の脚本でありエンタメ性には期待したいが、1号車、2号車の設定や登場シーンなどは子ども向けドラマの感もある。テレ朝なら特撮系が放送されている休日朝のほうが受けそう。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『月夜行路―答えは名作の中に―』 水曜22時〜 日テレ系
出演者:波瑠、麻生久美子、柳俊太郎ほか
寸評:「主人公がトランスジェンダーで文学オタク」「文学の知識が鍵のミステリー」というかなりの異色作。原作は「本の楽しさを伝え、本を売りたい」という出版業界のロジックで作られた“小説ファン向けの小説”のため、映像作品との相性は微妙か。実際アニメーションや吹き出しなどを多用した演出は没入感を分断し、バラエティのムードを感じさせられる。同じ本の世界では辞書編集の世界を描いた『舟を編む』のような演出上の自然さは感じられず。ただ文学オタクの聖地巡礼シーンはリアルな“推し旅”を見ているようでほっこりさせられる。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

『LOVED ONE』 水曜22時〜 フジ系
出演者:ディーン・フジオカ、瀧内公美、八木勇征ほか
寸評:法医学系の作品は多く、この枠でも昨夏に『最後の鑑定人』を放送したばかりで差別化は難しい。ライターズルーム形式を採用しているが、1話完結型ではエピソードを練り上げることは困難ではないか。ディーン独特の異国感、松山博昭監督の色彩豊かな映像、イケメンぞろいなどで重くなりすぎず、いい意味での軽さを出せていることが救い。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『102回目のプロポーズ』 水曜23時〜 フジ系
出演者:せいや、唐田えりか、伊藤健太郎ほか
寸評:「賛否は織り込み済みで、局の貴重な財産を生かしていこう」という戦略は民放にとって重要であり、無難なリメイクではなくリスクのある続編に挑戦したところは好感が持てる。『101回目』は格差純愛だけでなく、底抜けに明るいトークが重要な作品だったが、『102回目』はせいやと武田鉄矢らがそれを担うなどポイントは外していない。「浅野温子が演じる薫が亡くなった」という設定以外はバランスのいいプロデュースが見られるが、30分尺は物足りなさを感じてしまう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『今夜、秘密のキッチンで』 木曜22時〜 フジ系
出演者:木南晴夏、高杉真宙、瀧本美織ほか
寸評:“共同テレビとマガジンハウスで共同開発した漫画とほぼ同時スタート”というビジネス的な仕掛けによるメリットとデメリットが見受けられる。メリットは互いのノウハウをかけ合わせられ、PRの相乗効果を狙えること。一方のデメリットはファンタジー、薬膳料理、極端なモラハラ夫などの無難な設定を詰め込みがちになってしまうこと。特に“ゴーストイケメンシェフ”という設定は夢物語すぎて「シビアな現実を生きる令和の人々に響くか」と言えばあやしい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『君が死刑になる前に』 木曜23時59分〜 読テレ・日テレ系
出演者:加藤清史郎、鈴木仁、唐田えりかほか
寸評:「7年前にタイムスリップした主人公ら3人が連続殺人事件の死刑囚と出会う」というホラーテイスト強めのサスペンス。事件の真相とタイムスリップした意義をどう結びつけるのか。それが序盤で見えなければ、安易なファンタジーの悪用とみなされるリスクが高い。事実上のヒロインに唐田を起用するなど攻めのプロデュースには好印象。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『刑事、ふりだしに戻る』 金曜21時〜 テレ東系
出演者:濱田岳、石井杏奈、鈴木伸之ほか
寸評:テレ東×アミューズクリエイティブスタジオの共同製作によるオリジナルで、今作が第4弾だけにコラボがこなれてきた感がある。「人生と恋、事件の捜査をやり直すタイムリープサスペンス」というコンセプトは何度も見てきたものだが、過不足のない脚本・演出、映像の作り込みなどは今春トップクラス。濱田のハマリ役で安心して見られる。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

●静かなトーンの中の“怒り”“深い傷”
『田鎖ブラザーズ』 金曜22時〜 TBS系
出演者:岡田将生、染谷将太、中条あやみほか
寸評:“クライムサスペンス&ミステリー+家族の物語”というジャンルは、最近では『クジャクのダンス、誰が見た?』『ライオンの隠れ家』、古くは『流星の絆』などTBS金曜ドラマの得意ジャンルだけに安定感たっぷり。近年、他のドラマ枠もこれを踏襲しようとしているが、レベルの違いを見せている。静かなトーンの中にこぼれ出るような怒りや深い傷がにじみ、回を追うごとに盛り上がりが増していきそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『余命3ヶ月のサレ夫』 金曜23時15分〜 テレ朝系
出演者:白洲迅、桜井日奈子、新川優愛ほか
寸評:「末期がんの余命宣告」「妻の不倫と浮気」というダブルパンチを受ける主人公が痛々しく、早々に反撃の一手を見せなければ視聴離れのリスクが高そう。そもそも妻は浮気レベルではなく長年の交際であり、相手に性的な利用もされ、さらに育児放棄という非現実的な設定。つらさで感情移入を狙うのではなく反撃のカタルシスを楽しませる作品であり、「まさかの末期がん克服」というハッピーエンドがあってもいい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

『タツキ先生は甘すぎる!』 土曜21時〜 日テレ系
出演者:町田啓太、松本穂香、江口洋介ほか
寸評:フリースクールが舞台だけに慎重かつ丁寧に作られた作品だが、タイトル通り「甘すぎる」ことが共感度とエンタメ性を下げている。当事者から見たら「そんなにうまくいかない」というファンタジーのレベルだけに「社会的な関心を集めるきっかけになるか」も未知数。子どもの問題が1話で解決するのではなく、「なかなか解決しない」「全編をかけて解決する」というエピソードをもっと見せておきたいところ。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『ターミネーターと恋しちゃったら』 土曜23時〜 テレ朝系
出演者:宮舘涼太、臼田あさ美、石田ひかりほか
寸評:ほぼSTARTOのドラマ枠だけに「彼らのアイドル性をどう扱うか」「個人のファン以外をどれだけ引き込めるか」の2点が重要だが、宮舘の良さを引き出せているかはあやしい。序盤はターミネーターという役柄に縛られているからか、バラエティで見せる生き生きとした姿は見せていない。恋愛とは遠い関係性の2人がどのように距離を近づけていくのか。かなりのスローペースで描いたほうが純愛を感じそう。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

『時光代理人』 土曜23時40分〜 東海テレビ・フジ系
出演者:佐藤大樹、本郷奏多、林芽亜里ほか
寸評:「写真撮影者に憑依してタイムスリップできる」「写真撮影されたとき何が起きたのか感じ取れる」という2つの特殊能力は、70・80年代に放送されたNHKの『少年ドラマシリーズ』を彷彿させるライトな設定。必然性や辻褄はゆるめのファンタジーだけに深く考えずに見たいところだが、各話のエピソードはドラマティックかつハートフルで意外な没入感がある。母の失踪という大テーマをもっと見せたい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】

『GIFT』 日曜21時〜 TBS系
出演者:堤真一、山田裕貴、有村架純ほか
寸評:ルールを知らない人が多い“車いすラグビー”は思い切ったテーマ。さらに“孤独な天才宇宙物理学者”という主人公のかけ合わせも難解で間口の狭い作品になってしまった。見はじめてみるとプレーシーンも選手の人間ドラマも熱く、レク派とマジ派などのディテールもリアルを感じさせられる。設定は難解だが、昭和時代から「仲間や家族の大切さ」「愛と夢とは何なのか」を描いてきたド真ん中の日曜劇場。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『エラー』 日曜22時15分〜 ABC・テレ朝系
出演者:畑芽育、志田未来、藤井流星ほか
寸評:まず“童顔の小柄なダブル主演がヘビーな設定を背負う”というギャップに映像的な面白さがある。さらにその2人が「他人以上友達未満」から徐々に絆が芽生え、一方で罪悪感が募るという二面性に引きつけられていく。テーマの「人は取り返しのつかない失敗をしたとき、どう向き合えばいいのか」だけでなく、思わぬ不倫、新たな罪、1億円の損害賠償、迫る刑事の手などのシーンが次々に展開していく弥重早希子の脚本が冴え渡っている。その弥重がライターズルームの筆頭を務めた『3000万』を彷彿させる構成で結末が読めないことも魅力。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

『10回切って倒れない木はない』 日曜22時30分〜 日テレ系
出演者:志尊淳、仁村紗和、京本大我ほか
寸評:あえて韓国ミックスの作風に挑むのは「これで若者を引きつけたい」という狙いだが、K-POPや韓国美容などのファンと韓国ドラマの視聴者層は必ずしも一致せず、マーケティングに疑問を感じる。近年、テレ東の深夜帯で目立つ“波瀾万丈×純愛”というコンセプトがプライム帯で通用するのか。志尊と仁村の組み合わせは序盤から評判がいい。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら
