√5をふくむ「超複雑な形の式」が、あれよあれよと「整数値」に! 驚きの先に現れる「フィボナッチ数列」の奥深き世界
「素数シリーズ三部作」(『 素数が奏でる物語 』『 素数はめぐる 』『 有限の中の無限』)でブルーバックスを代表する人気著者コンビ・西来路文朗さんと清水健一さん。最新刊『 ガウスの黄金定理』も大好評のお二人が、美しく奥深い「数の世界」を案内してくださいます!
今回は、「富士山麓おうむなく…」で有名な√5にまつわる話です。
√5を含んだ複雑な式が、あれよあれよとシンプルな数に整っていく快感を味わううちに、あの有名な数列が登場します!
黄金比と√5の関係
今日5月5日は、√5にまつわる話題をご紹介します。
√5=2.2360679...(富士山麓おうむなく)
は2乗すると5になる正の実数です。直角をはさむ2辺の長さが1と2の直角三角形の斜辺の長さが√5になります。
また、正五角形の1辺と対角線の長さの比は、
になります。この比は黄金比とよばれています。
さて、今回は黄金比とも関係する
という数を考えます。√5を含んだ複雑な式です。
この式は、ある数列のn番目の数を表しています。
数列のn番目の数は、nの式で表されます。たとえば、自然数の列
1, 2, 3, 4, ...
のn番目の数はnです。偶数の列
2, 4, 6, 8, ...
のn番目の数は2nです。では、
はどのような数列のn番目の数でしょうか。
マジックを見るように根号が消える!
nに1, 2, 3, ...と代入していけばわかります。
n=1とすると、
となり、n=2とすると、
となり、n=3とすると、
となります。√5の複雑な式が現れるかと思いきや、なんとマジックを見るように、根号がきれいに消えて整数の値が得られます。
このあとn=4, 5, 6, …と代入していっても、同様に整数の値になります。
「フィボナッチ数列」現る!
現れる整数を順に書くと、
1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55,
89, 144, 233, 377, 610, ...
と続きます。
この数列の特徴は、最初の2つが1で、以降は前の2つの数を足して次の数になっています。確かめると、
1+1=2
1+2=3
2+3=5
3+5=8
…
です。これを式で表すと、
a₁=1, a₂=1, aₙ=aₙ₋₁+aₙ₋₂(n≧2)
となります。このような数列をフィボナッチ数列といいます。
ここでは説明を省略しますが、上の関係式から、フィボナッチ数列のn番目の数が、
となることを導くことができます。
「ピサのレオナルド」と『計算の書』
フィボナッチ数列は、13世紀にピサのレオナルドによって紹介されました。
フィボナッチは、レオナルドのニックネームです。フィボナッチの由来は定かではありませんが、「ボナッチ家の息子」ということからきている可能性が高いそうです。
フィボナッチが1202年に著した『計算の書』(『算盤の書』ともよばれる)の中で、次のような問題が出題されています。
【問題】
生まれたばかりの1つがいのウサギがいるとき、12ヵ月後に何つがいになるでしょうか?
ただし、どのつがいも生まれて2ヵ月目から、毎月1つがいのウサギを生むものとします。
最初は1つがいで、1ヵ月後はまだ1つがいのままです。
2ヵ月後は1つがいのウサギが生まれ、2つがいになります。
3ヵ月後は、2つがいのうち、1つがいがウサギを生まず、1つがいがウサギを生むので、3つがいになります。
4ヵ月後は、3つがいのうち、1つがいがウサギを生まず、2つがいがウサギを生むので、5つがいになります。
5ヵ月後は、5つがいのうち、2つがいがウサギを生まず、3つがいがウサギを生むので、8つがいになります。
nヵ月後のウサギのつがいの数は、
1, 2, 3, 5, 8, ...
と増えていきます。
見覚えのある数の列ですね。
最初から、つまり0ヵ月後も含めて数えると、フィボナッチ数列
1, 1, 2, 3, 5, 8, ...
になっています。
12ヵ月後のウサギのつがいの数は、13番目のフィボナッチ数であり、
a₁₃=233
になります。
隠れた法則を探そう!
フィボナッチ数列は多くの本や雑誌の記事で紹介されているので、ご存じの方も多いと思います。この数列には多くの興味深い性質がありますが、ここでは、5にちなんだフィボナッチ数列の性質に焦点を当てたいと思います。
フィボナッチ数列を、8よりもう少し先まで表にまとめてみます。
naₙnaₙnaₙ1182115610219341698732105517159743118918258455121441941816813233206765713143772110946
この表から、nが素数pのときを抜き出してみましょう。
paₚ213255713118913233171597194181
この表の中に、どのような法則が隠れているでしょうか。また、5とどのように関係しているのでしょうか。
p=5のとき、aₚ=5
ですが、他はpとaₚの値が異なっています。よく眺めてみると、p=2, 3, 7, 13, 17のとき、
a₂+1=1+1=2
a₃+1=2+1=3
a₇+1=13+1=14=7×2
a₁₃+1=233+1=234=13×18
a₁₇+1=1597+1=1598=17×94
となり、
aₚ+1がpの倍数
になっています。
p=11, 19のとき、
a₁₁−1=89−1=88=11×8
a₁₉−1=4181−1=4180=19×220
となり、
aₚ−1がpの倍数
となっていることに気づきます。
「5で割った余り」に注目!
pを5で割った余りに注目して見ると、法則が浮かび上がります。
pが5で割って2, 3余る素数のとき、aₚ+1がpの倍数になり、
pが5で割って1, 4余る素数のとき、aₚ−1がpの倍数になる
ことがいえます。
フィボナッチ数列は、
a₁=1, a₂=1, aₙ=aₙ₋₁+aₙ₋₂(n≧2)
という簡単な規則で作られるにもかかわらず、非常に多くの興味深い性質を秘めていることに驚かされます。
ふしぎなことに、花弁の枚数や巻き貝のらせんなど、自然界にも現れます。数学の世界の奥深さを垣間見させてくれる魅力的な数列です。
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