スクールバスで高齢者が通院、日中もフル活用…「交通空白」地域は全国に2000超
バスや鉄道の利用が難しい「交通空白」が各地で拡大している。
学生や高齢者など車を持たない交通弱者の生活の足が失われかねない事態に、国は危機感を強める。限られた輸送資源の活用に取り組む地域もあり、国土交通省は持続可能な地域公共交通の実現に向けた法律改正案を今国会に提出するなど、対策に本腰を入れている。(小池和樹、日下翔己)
地域の足に
人口減少や高齢化が進む岐阜県白川町中心部のJR白川口駅。新学期が始まった4月10日朝、「スクールバス」と書かれた大型バスから高校生らが次々と降りて駅に入っていった。町外の高校に通う女子生徒(16)は「バスのおかげで家族に駅まで30分の送迎を頼むことなく通えている」と笑顔を見せた。
バスはそのまま小学生らが登校に使うスクールバスとなり、日中は高齢者らの買い物などに利用される。通院に使った男性(89)は「足を骨折して運転できなくなったが、バスがあるので自分で買い物に行ける」と満足げだ。
白川町ではスクールバスなどをほかの町民が有料(1回200円など)で利用する町営の交通システムが生活を支える。運転は町から委託を受けた団体に所属するドライバーが担う。10年ほど前に地元バス会社の路線バスが減便したのをきっかけに始めた試みで、2025年度は町人口(6641人、4月時点)の約9倍にあたるのべ約5万6000人が利用した。
今年度はスクールバス車両などでの個人輸送の実証実験も検討している。町の担当者は「子供の進学を機に町を離れる家庭も多かった。交通網の整備でそうしたケースは減りつつある」と手応えを口にする。
バス運転手2万人弱減少
国交省の全国調査では、公共交通機関の利用が難しい地域が24年度末時点で2000超に上ることが明らかになった。白川町の取り組みは、国交省も注目する交通空白対策のモデルケースの一つだ。
交通空白が拡大しているのは、人口減少や少子高齢化の進展に伴う交通事業者の収支悪化や担い手不足などが要因だ。国交省によると、バス運転手は16〜23年度で約1万9000人減少。16〜24年度にバス路線は約1万5000キロ・メートル、鉄軌道は500キロ・メートル余りが廃止となった。こうした地域では、子供や高齢者の移動のために家族が車で送迎を行う必要があり、負担が大きくなっている。
「都市部でも」
交通空白は過疎化の進展にもつながる問題で、国交省では25〜27年度を集中対策期間と位置づけた上で、白川町のような地域の輸送資源をフル活用することが有効と分析。自治体がバス事業者や学校、企業などとの調整を担い、車両や運転手を確保して輸送サービスを構築するための手続き簡略化を盛り込んだ地域公共交通活性化・再生法改正案を今国会に提出した。国交省幹部は「持続可能な地域交通確立の後押しをしたい」とする。
福島大の吉田樹教授(地域交通政策)は「交通空白は地方だけでなく都市部にも広がりつつある。輸送資源活用など対策の効果が出ているケースもあるが、課題は地域ごとに違い、同じやり方ではうまくいかないこともある。自治体や住民が課題を認識し、国が制度的・財政的な支援、人材育成の後押しなどを行うことが大切だ」と話した。
公共ライドシェア、自動運転も
国土交通省では交通空白解消に向け、自治体などが有償運行を管理する「公共ライドシェア」や予約型乗り合いタクシーといった新たな移動手段の導入を後押ししている。
国交省は、自治体が新たな交通手段を導入する際に、調査から運行などへの財政支援を行っている。また、各地方運輸局幹部らが担うのは、自治体トップと運送事業者らとの橋渡し役などだ。公共ライドシェアは昨年3月時点で、全国645市町村で導入されているという。
運転手不足の解決策として、急速に技術開発が進む自動運転車両にも着目。地域での運行を目指す自治体には、車両購入やシステム構築などへの支援も行っている。国交省幹部は「今、対策を打たないと取り返しがつかない事態になる。できることはなんでもやる」としている。
