《中国による「沖縄独立工作」の懸念》中華マフィアのドンの息のかかった秘密結社に沖縄の暴力団が一家を挙げて参加 当事者は「兄弟同士の付き合い」と語る
高市早苗首相の「台湾有事発言」で日中関係が冷え込むなか、中国の浸透工作が激化しているのが沖縄だ。地政学上の重要拠点となる沖縄について、中国のネット上では「琉球は中国の朝貢国」とする意見が飛び交っている。近年は中華マフィアと沖縄暴力団の関わりも指摘され、浸透工作との関連が懸念されてきた。
【図解】中華圏最大級のマフィア・竹聯幇による「沖縄独立工作」
台湾に拠点を置く中華圏最大級のマフィア・竹聯幇(ちくれんほう)の長老で中華マフィアのドン、張安楽(ヂャンアンラー、78)は、沖縄県内に拠点を置く指定暴力団・旭琉会(きょくりゅうかい)との接点を持っている。台湾メディアの報道では、数年に1回程度の割合で、竹聯幇(≒中華統一促進党)と旭琉会が互いを台湾と沖縄に招待し合っていることが確認できる。中国事情に詳しい紀実作家の安田峰俊氏が、張氏に接触し、真相に迫った。(文中敬称略)【全3回の第2回】
「任侠同士の付き合い」と煙に巻く
中国、台湾、沖縄。中華マフィアと指定暴力団。これらを繋ぐ奇妙な線をひもとく前に、背景の説明が必要だろう。
沖縄は明治時代の初頭まで「琉球王国」という別の国家が存在し、戦後は1972年までアメリカの統治下にあった。こうした歴史的経緯や、解決が見えない米軍基地問題などから、日本本土に対して複雑な感情を覚えている住民も多い。
一方、近年の中国が軍拡を推し進めるなかで、沖縄は"最前線"の場所に変わりつつある。ゆえに沖縄の社会がはらむ脆弱性は、中国側にとっては「つけ入るスキ」だ。
事実、2023年7月に習近平が「琉球の歴史」に関心を表明して以降、中国は工作を活発化させた。昨年11月の高市早苗総理による台湾有事関連発言を契機に、中国の動きはより強まっている。事例をいくつか挙げておこう。
・日本の沖縄領有に疑義を唱える中国国内の学術研究の支援と、その"成果"を反映した国際社会へのアピール行動。
・中国大使や福建省党委員会書記ら党幹部層による沖縄訪問の実施と玉城デニー知事との面会。
・日中友好団体の沖縄出身幹部による、知事に対する中国側の主張のレクチャーや訪中アテンド。
・沖縄地元紙に対して、中国の立場を主張する中国駐福岡総領事や日中友好団体幹部の頻繁な寄稿。
結果、県上層部が台湾と接触する際は事前に中国大使館に"お伺い"を立てることが不文律化するなど、県が中国側に寄り添う姿勢を示すことも増えている。
他方、"オモテ"の動きの裏で中国側が進めるのが、琉球独立を主張する団体のメンバーを中国に招聘したり、ネットで「琉球人は中華民族」と主張するデマ動画をバラまいたりする、搦手(からめて)からのアプローチだ。
今年4月には、中国吉林省の党支部と関係が深い中国人抗議団体のメンバーが来日して沖縄の平和運動団体と"連帯"。長距離ミサイル配備の反対を理由に、うるま市の陸自分屯地への抗議運動さえおこなっている。
統促党を率いる張安楽の「ヤクザ交流」も、こうした変化球の一環ではないのか。しかし、張安楽に事実を質したところ、彼はこう煙に巻く。
「兄弟(=任侠)同士の通常の付き合い。だが、親しかった富永会長が亡くなり、近年はむしろ旭琉会との縁はやや薄れた。マスコミの連中に『中国がヤクザを使って工作している』と騒がれるのは、心外もよいところだ」
対して、沖縄側の認識も当事者に尋ねた。張安楽と交流が多い旭琉会の二次団体「南洲一家」総裁の上江洲(うえず)丈二(78)は、取材にこう話す。
「極道の者としての、男と男のつながりだ。政治はまったく関係がない」
実態はどのようなものか? 統促党の元関係者で、かつて旭琉会との交流に同席した人物はこう証言する。
「数日間の日程に同行したが、『台湾で商売しよう』『警察にマークされないよう合法的な商売を』といったビジネスの話が中心。政治的な話題は一切出なかった。行き先も観光地やショッピングセンター、半分以上は観光だ(笑)。ただ……」
この人物はさらに語る。
「張氏の政治的な考えは、これとは別の場で反映されているんじゃないか」
旭琉会側の認識はともかく、張安楽側は「男同士の付き合い」以外の意図を持った行動もしているということだ。
指定暴力団と秘密結社との掛け持ち
ここで関連するのが「洪門(ホンメン)」という中国の伝統組織である。
洪門は清朝時代に起源を持つ秘密結社で、中国・台湾・香港のほか東南アジアや北米の中華系社会にも無数の分派が存在。中国人の間では高い知名度を持つ。
統一的な中心を持たないアメーバ状の組織だが、中国共産党と友好的な分派のほうが多く、中台統一や香港の民主化弾圧を支持する表明を出す分派もしばしば見かける。
台湾にも無数にある洪門系組織は、マフィアと完全に同一ではないもののメンバーが重複しがちだ。張安楽は洪門でも影響力を持つリーダーで、この洪門の一部に沖縄のヤクザが加わっている。
前述した旭琉会二次団体の南洲一家では、2023年に総長の上城恵三が洪門の傘下とされる「華松山」の山主(シャンヂュウ、代表)に就任。さらに、総裁の上江洲丈二が同最高名誉顧問、若頭の下地真作も入山……。
つまり、一家を挙げて日本の指定暴力団と中華系秘密結社を掛け持ちしているのだ。
彼らは洪門への入山と、沖縄浸透工作の噂をどう考えているのか。取材に応じた上城が話す。
「自分たちも日本人だ。政治的な件にはタッチしないと先方に伝えている。台湾には仕事でよく行くが、現地では敬意を持って接してもらっている」
上城が秘密結社の山主に就任した経緯を尋ねると、中国や台湾の洪門メンバーから直接勧誘されたわけではなく、旭琉会を張安楽に引き合わせた華松山の先代山主(故人、日本人)から名跡を譲られたためだという。加えて、南洲一家の面々は中国語を話せず、中華圏との濃厚な親族関係も持たない模様である。
背景事情について、華松山の先代山主と親しかった台湾人の陳志明(仮名)はこう話す。
「中国人の秘密結社に、日本人は通常は入れない。実は日本のヤクザを引き入れているのは伝統的な洪門そのものではなく、近年になり張総裁が個人的に整えた別の洪門組織。政治的なお考えで作られたと理解しています」
張安楽の息のかかった洪門の統括団体は、統促党の名前を冠しており、李松林という台湾の老人が代表を務めている。日本で李松林の影響下にある組織は、南洲一家の華松山以外に、本土の暴力団関係者とされる人物が山主に就任した別の山(団体)も存在する。
近年、日本の暴力団は国内の法規制の強化を受け、海外とつながりを深めることで生存を図っている。中華系の秘密結社との提携は、アジア圏での活動が有利になり、なによりヤクザとしての箔が付くというメリットもあるようだ。
張安楽の洪門は、こうした望みを持つ海外のアウトローを、洪門のブランドのもとで統促党の周辺に囲い込む組織である可能性が高いとみられる。
(第3回に続く)
【プロフィール】
安田峰俊(やすだ・みねとし)/1982年、滋賀県生まれ。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)で第5回城山三郎賞、第50回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『戦狼中国の対日工作』(文春新書)など著書多数。近著に『民族がわかれば中国がわかる』(中公新書ラクレ)がある。
※週刊ポスト2026年5月8・15日号
